表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ある男の子のお話

あるところにやんちゃな男の子がいました。


男の子はいつもわるさやいたずらをして、そのたびにお母さんにおこられていました。


あるときは、おともだちとけんかしてなかせておこられ、あるときは、おうちのかべにらくがきをしたのが見つかりおこられ、あるときは、となりのいえのまどをわっておこられ、男の子はまいにち、おこられていました。


男の子のお母さんはたいへんなやんでいました。


あたまがよくなくてもいい、うんどうができなくてもいい、ただやさしい男の子になってほしいとねがっていました。



そのため、男の子がおともだちを泣かせたりすると、お母さんはいつもいじょうにつよくおこりました。


男の子はいつもなんでお母さんはあんなにおこるのだろう、ぼくのこときらいなのかなとおもっていました。



お母さんのねがいは、男の子はおさなすぎて、わからなかったのです。


男の子はせいちょうするとともに、さらにやんちゃはましていきました。


男の子が悪さをしたとき、お母さんがしかっても、男の子はまるできく耳をもたなくなってしまいました。


それどころか男の子はお母さんに反発するようになったのです。


うるさい、関係ない、ほっといて、これが男の子の口グセとなりました。


男の子がわるさをし、それにお母さんがしかり、またそれに男の子が反発するのが毎日続くようになりました。


ある日、男の子は夜になっても、家に帰ってきませんでした。


お母さんは大変心配しました。


事故にあっていないかしら。なにかの事件に巻き込まれてないかしら。


お母さんの不安は積もるばかりです。



ぷるるる、ぷるるる



夜も遅くなり、警察に相談しようか迷ってるとき、不意に電話がなりました。


まさかと思い、お母さんは急いで電話をとりました。



「すみません、木国店の者なんですが、お宅の子を預かっていますので来ていただけませんか」



電話は男の子の近所にある文房具屋さんからでした。


事件や事故に巻き込まれていないようなので、お母さんは少し安心しました。



「わかりました。それで、どうしてうちの子がそちらにいるのですか?」



「それがですね…ちょっと困ったことになりまして…」



お母さんはその後を聞いた瞬間、頭が真っ白になりました。


電話をきった後、すぐにその文房具屋さんに向かいました。


文房具屋さんに着くと、お店の人と男の子が向かいあって座っていました。


男の子はお店の消しゴムを盗んでしまったのです。


「お家の番号をなかなか教えてもらなくて困っていたんですよ。今回は初めて、ってことだから警察には連絡しないであげますけど、二度とこんなことをしないようにお家でもしっかりご指導お願いしますよ」



お店の人は苦笑いしながら、最後の方は真面目に言いました。


お母さんは男の子の代わりに何度も頭を下げて謝りました。


男の子はというとそっぽを向いて知らぬ顔です。


お母さんは最後にもう一度お店に深く頭を下げて、男の子と家に帰りました。


お母さんはその日男の子を思いっきりしかりました。



「あなた、自分が何をやったか分かってる?」



男の子は黙っています。



「昔から悪さばかりしていたけど、こんなに人の道に外れたことをしたのは初めてよね。なんでこんな子になったの?お母さん、心配でどうかなりそうだわ」



男の子は一瞬ピクッとしました。


それでもお母さんは続けます。



「お母さんがどれだけ心配したか分かる?こんな夜遅くまで帰ってこないから何かにあったんじゃって…」



「うるさい!!」



男の子はお母さんの言葉を遮って声をあげました。



「さっきから黙って聞いていれば何だよ、何が心配だよ!どうせこんな息子じゃなければ良かったって思ってんだろ!こんな息子必要ないって思ってんだろ!オレはあんたが望むような子にはなれなかったよ。悪かったな。変わってしまって。オレもこんなうるせえババアの息子になんてなりたくなかったよ!」



そう怒鳴って、男の子は自分の部屋にこもってしまいました。


お母さんは何も言うことができませんでした。


その日から男の子のことを叱ることはなくなりました。



男の子は毎日の生活が楽しくなりました。


もう男の子を叱る人はいなくなったからです。


男の子はあまりお母さんと話さなくなりました。


男の子は毎日夜遅くまで遊び、家に帰ることも少なくなりました。


お母さんは男の子のことが心配でしたが何もする事ができませんでした。


男の子がお母さんと話さなくなってから、数年たちました。


いつものように男の子は学校で友達とおしゃべりをしていました。


突然、教室に担任の先生が入ってきて、男の子を呼びました。



「お母さんが倒れた!今病院に運ばれたらしいから、お前も早く病院に行きなさい!」



先生の言ったことを男の子はしばらく理解できませんでした。


男の子は先生の言葉を信じることができなかったのです。


男の子はその場で呆然と立ち尽くしてしまいました。



「おい!早く支度して、お母さんのところへ行ってやれ!」



先生は男の子を急かします。


男の子は急いで、学校をとび出しました。


お母さん、今は無事なんだろうか、何で倒れたのだろうか、もし間に合わなかったらどうしよう、そんなことが男の子の頭にうずまきました。


病院まで、全力で走りました。


息切れしながらお母さんがいる病室に入りました。


「母さん!」


男の子は病室に入ると同時に叫びました。


「あら、学校はどうしたの?まだ授業あるはずでしょ?」


お母さんは病室のベッドから起き上がり、男の子ににっこり笑顔を見せました。



「母さん…倒れたって…聞いたから……先生に早く病院行けって…言われて…」



男の子は息を切らしながら、言いました。


「お母さん強いんだから、心配しなくても大丈夫よ!それよりあなたは学校の勉強の心配しなさい。」



お母さんはおどけたように言いました。


その後、続けて言いました。



「それから、お母さんちょっと検査のために入院しなきゃいけなくなったから家のことよろしくね。ちゃんと家に帰りなさいよ」



「検査って!?母さん大丈夫なのかよ?どれくらい入院すんだよ?」



男の子は焦って聞きました。


お母さんが入院するなんてことは今までなかったのです。


「軽い検査入院よ。やっぱり、突然倒れたから、ちゃんと調べておきたいんだって。安心しなさい。すぐに退院できるわ」


お母さんは諭すように言いました。


しかし男の子は納得できません。



「家のこと任せるって…オレと親父だけでどうすんだよ?」


「いつも家のこと任されてる母親の気持ちが分かるでしょ?それともお母さんのこと心配してるの?」



「ち、違うわ!オレと親父だけじゃ家どうなっても知らないからな!」



男の子は怒ったように言いました。


しかし本当は安心もしました。


倒れたのが嘘のようにお母さんが元気だったからです。


お母さんが笑ったところ見たのいつ以来だろう?男の子はふと、懐かしく感じました。



「そろそろ帰らないと、家事終わらないわよ。私のことはいいから、家に帰りなさい」



「へいへい、帰るよ。帰りゃいいんだろ?一生そこで寝てればいいさ」



「あんたが大人になるまでは心配でゆっくり寝れないわよ」


お母さんはずっとニコニコ笑っていました。



男の子はほっとして家に帰りました。



久しぶりにお母さんとこんなに話した気がする…男の子は帰り道の途中そう思いました。


最近では家に帰るのは遅く、お母さんと顔を合わすことはあまりなくなっていたので、すごく懐かしく感じました。


その日から、男の子は毎日お母さんのいる病院に行くようになりました。


男の子はお母さんに色んなことを話しました。


家事の分担を決めたこと、自分は料理、掃除担当になったこと、意外と料理が作れること、この前お父さんが料理を作ったときは鍋を焦がしてしまったこと、毎日話すことは尽きません。


お母さんは男の子の話をいつも笑顔で聞いていました。


しかし、日にちにお母さんは痩せていきました。


男の子は不安になりました。


お母さんはいつ退院するのだろう、重い病気にかかったんじゃないか、男の子はそんな考えが頭をよぎりました。


お母さんが入院してから数日経ったある日、いつものようにお父さんとの夕飯中に男の子は思いきって聞いてみました。



「親父、母さんのことなんだけどさ、いつになったら退院すんだよ?検査入院ってこんなにかかるものなのかよ?」



お父さんは黙って夕飯を食べ続けました。



「親父!聞いてんのかよ?無視してんじゃねえよ!」



「あのな、母さんちょっとややこしいことになってるんだ」


父親は箸をおいて下を向いたまま答えました。



「母さんな、ちょっと重い病気にかかっちゃったみたいなんだ。」



男の子は聞くんじゃなかったと後悔しました。


男の子が恐れてたことが現実となってしまいました。



「それで…母さんはどうなるんだよ…?」



男の子は消え入りそうな声で聞きました。



「病気治すために入院してるんだろ。母さんは絶対治る。お前がそんな顔してどうする?一番つらいのは母さんなんだぞ」


そう言っているお父さんも、何かに耐えているかのようでした。



次の日も男の子はお母さんのいる病院に行きました。


その日もお母さんは笑顔を絶やしませんでした。


男の子はいつものように振る舞おうとしますが、うまくいきません。


ついに男の子は黙ってしまいました。



「どうしたのよ、何かあったの?」



お母さんは不思議そうに訪ねました。


男の子はただ首を横に振ります。



「何でもないよ」



「嘘言わないの。学校でなんかあったんでしょ?言ってみなさい。お母さん聞いてあげるから」



男の子はしばらく何も言わず、ただうつむいていました。


そして、今にも泣きそうな顔で言いました。



「なんで黙ってたんだよ…」



「え…」



「母さん病気なんだろ!それなのに人心配しやがって!自分はどうなんだよ!不安じゃねえのかよ!」



男の子は今にも泣き出しそうです。


歯を食いしばり、何かにたえてるようでした。


ポンッと男の子の頭に何かがおかれました。


お母さんの手でした。



「お母さんね、全然心配じゃないの。入院してるって言っても、体は元気だし、お医者さんもちゃんと安静にすれば元気になるって仰ったし、何よりね…」



お母さんは男の子の頭をくしゃくしゃしました。



「あなたが毎日来てくれるもの。何を心配する必要があるのよ」



男の子は恥ずかしくて、お母さんの手を払いました。



「別にただの入院だったらこんなに来ねえよ。ただ早く治って家のことやってもらわねえと困るし」


男の子は立ち上がってくるっと後ろを向きました。



「今日は帰るわ。夕飯の用意しなきゃなんねえし」


そう言って、男の子は病室を出ました。


お母さんはその姿をくすくす笑いながら見ていました。





次の日の朝のことでした。



ぷるるる、ぷるるる



いきなり電話がなり何かなと思いながら男の子は電話をとりました。


お母さんの入院先の病院からでした。


男の子はしばらく電話口から何を言ってるのか理解することができませんでした。















「お母様がお亡くなりになりました」



男の子は信じることができませんでした。


しばらく呆然と立ち尽くしてるだけでした。お父さんは状況を察し、すぐに男の子と病院に向かいました。



お母さんは眠っているようでした。


ただ静かに眼をとじていました。


それはお母さんであってお母さんでないようでした。


男の子は何も思いませんでした。


ただ虚ろな眼でお母さんを見ることしかできませんでした。


その後、お通夜があり、お葬式があり、お父さんはそれらのために忙しく動いていましたが、男の子はずっと自分の部屋に閉じこもっていました。


知らない人達に泣かれるのを見るのが堪えられなかったのです。


お葬式も終わり、お父さんが帰ってきました。


お父さんは家に帰るとすぐ男の子を呼びました。


「お前に見せなきゃいけないものがある」



そう言ってお父さんは、あるものを男の子の目の前に置きました。










一つの手紙でした。


男の子ははっとしてお父さんの顔を見ました。



「母さんがな、お前に書いたものなんだ。病室の棚に入っていたらしい。病院の方から息子さんにって預けられた」



男の子はその手紙をそっと取りました。


お父さんは黙って男の子の部屋から出ていきました。


男の子はその手紙を恐る恐る開き、読み始めました。


お母さんの字でした。



「亮へ。先に旅立つことを許してください。亮が大人に成長していく姿を見ていたかったけど、どうも叶いそうにないかな。これから、お父さんのこと支えられるのは亮しかいないのだから、しっかりしてね。お母さんね、実を言うと恐かったの。でもね、亮が毎日お母さんのとこに来て、色々話してくれることがすごく嬉しくて、こんなことが毎日続くなら、退院できなくてもいいかなって。本当に久しぶりよね。亮がこんなにお母さんに色々話してくれるの。亮の小さい頃を思い出したな。知ってる?小さい頃、家族で川に遊びに行ったとき、一人で川の上の方まで行っちゃったときのこと。あのときはお父さんと探しまわって、それでも見つからずにいて、もし何かあったらどうしようって不安でいっぱいになったときにずぶ濡れになりながら楽しそうに帰って来たじゃない?なんでそんなとこまで行ったのって叱ったら、泣きながらお母さんに綺麗な石をくれたよね。嬉しかったな。けどあの時は石をもらった嬉しさよりも、お父さんとお母さんを心配させた怒りの方が強くて、亮に嫌な思いさせちゃったよね。亮が大きくなってお母さんの言うこと聞かなくなっちゃった時はなんでこんな子になっちゃったんだろうって悩んでいたわ。けどね、亮は何も変わってなかった。変わったのは亮とちゃんと向き合えなくなったお母さんだった。だって、お母さんが倒れたとき、急いでかけつけてくれたでしょ。最近全く話さなくなったのに、お母さんを心配して、元気づけようとしてくれた亮は本当に昔と変わらない優しい子に育ってくれたなって思いました。もうあなたに心配することは何もないわ。亮なら優しい大人になって、優しいお父さんになれるはずだから。お母さんはいつも見守っています。最後になるけど、お母さんの子として生まれてきてくれてありがとう。」



彼は堪えきれませんでした。


お母さんの手紙を抱きしめ、その場で崩れ落ちました。


小さい嗚咽が次第に大きくなっていきました。



お母さん、お母さん、お母さん



心の中で何度も叫びます。


小さい子が迷子になったようにお母さんを求めました。


彼は溢れだすものをとめることができませんでした。



彼はその日、ずっと小さい子供のように泣き続けました。


そしてそれ以来、彼は涙を見せることをしなくなりました。










「ねえ、お父さん。いつものお話して」



女の子は布団に入るなりお父さんにねだりました。


女の子は毎日、寝る前にお父さんのお話を聞くのが好きでした。



「え~、昨日もしてあげただろ?たまには別のお話にしないか?」



「いいの、あのお話が好きなの」



「あのお話のどこが好きなの?」



お父さんは優しくききました。



「え~とね、男の子がお母さんのこと大好きなんだな~ってとこ。美穂もお母さん大好きだから」「そっか、美穂もお母さん大好きか」



「でも、お父さんも大好きだよ。お父さんいつも美穂と遊んでくれるもん」



女の子はにっこり笑いながら、言いました。


お父さんはそんな女の子の姿が愛おしくなり、女の子の髪を優しくなでました。



「じゃあお話するか。あるところにやんちゃな男の子がいました。男の子はいつもわるさやいたずらをして、そのたびにお母さんにおこられていました。」

初投稿です。


物を書くのって難しいですね。


最初の展開が早すぎるのに、後半は変なところで、なかなか進まないし、主人公のキャラもぶれてるし、まだまだ満足できない部分が多いです。


これからも、また別ジャンルで投稿すると思うので、色々意見を貰えたら幸いです。(笑)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ