あの想い《こえ》は今も
遅くなってすいません・・・(汗
一話目とは全く違う時代になります。
というか時代背景とか何も考えてねえしっ(°□°;
静かな優しさに感謝の唄を
迷わぬように 立ち止まらぬようにと 私にくれた黄昏の鈴
それは幾度も私を導いてくれた
だからこそ 強く 深く心から願った
世界を鎮める眠りの抱擁よ 永久に響け
泡沫に消える夢が夜に還り 始まりを告げる鐘が鳴るまで
どうか 静かな眠りを貴方に―――
◇ ◇ ◇ ◇
「セイ。これは?」
「ん?・・・ああ。それは俺の友人が書いたものだよ」
ふうん、と少女は返事をしながらそれを読み始める。
新年をあと数日に控えたある日、今まで手をつけずにいた部屋から出てきた一枚の紙切れ。それは、亡き友人が書いた詩だ。
「・・・黄昏の鈴?」
「あいつに作った腕輪のことだよ」
赤瑪瑙と青金石を組み合わせて作ったものだ。その色合いを彼女は夕焼け空――黄昏のようだと言って笑っていた。
「これを書いた人って綺麗な人だったのね」
「・・・何故そう思うんだ?」
「だって・・・人の幸せを願う人だもの。私にはそんなこと出来ない・・・」
悲しげに歪んだ顔はまるで痛みを堪えるようにじっと耐えている。セイは一つ息を吐くと、椅子から立ち上がりポンポンと頭を軽く叩いた。
「あいつが他人の幸せを願うのは、自分にない未来を持っているからだ」
「え・・・」
「生まれつきの病でな。医者からは成人する年まで生きられないだろうと宣告されていたそうだ。あいつはな、それを受け止め理解したうえで笑っている不可思議な奴だったよ」
―――見て!私が作ったクッキーよ。初めてだけど上手く出来てるでしょ!
―――ほら、今夜は星がきれいよ。あれは何という名前かしら?
―――歌を歌って。最期くらいわがまま言っても良いよね・・・。
静かな語りは少女にそのときの情景を思い起こさせ、彼女がどれほど美しい人か教えてくれた。
「あいつは最期のときまでちゃんと生きてた。けれど自分が持てない、見ることの叶わない未来というものに焦がれずにはいられなかったんだ。やがて起き上がることすらままならなくなって、だが彼女は毎日新しい発見をしたと言って笑っていた。そして、最期のときも笑っていたよ」
―――ねえ。もし私が生まれ変われたなら、そのときはまた友達になってくれる?
―――ありがとう。この約束は絶対に忘れないわ。
語り終えてから少女の反応を見ると、少し哀しげに眼を細めていた。
きっと彼女の心を知ってしまったからだろう。
「さて暗い話になったな。・・・それはそうと、部屋の片付けは終わったのか?」
「ああ!」
叫ぶようにして自分の部屋へと駆け込んでいった少女の後姿を見ながら、セイは久しぶりに友人との思い出を噛みしめていた。
自分で作った歌を歌うことで死への恐怖を紛らわせていた友人にした最後の贈り物。それにセイが作った歌が刻まれていたことは誰も知らない。ただ死を待つだけでは、それは『生きている』とは言えないと彼女は語っていた。
類稀なる天使の歌声を持っていた短命の少女。その歌声は彼女の近しい人々の心に今も響いていることだろう。
◇ ◇ ◇ ◇
ありがとう その想いは今も俺の心の片隅の大切な箱の中に仕舞われている
おやすみ お前の眠りを妨げられぬよう俺はその場所を護ろう
そして都忘れの花が咲き誇るとき 二人で交わした約束が果たされるだろう―――。
赤瑪瑙→カーネリアン
青金石→ラピスラズリ
都忘れ 花言葉→また逢う日まで
となっております。
付け焼刃なんで突っ込みはご容赦を・・・(・・;)))