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復讐は、冷やして食すのが一番美味い  作者: 結翔 〇
第2章 混乱 ― 過去と違う現在 ―

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[25] イアン村へ――変質 ②

「わかりました。見張っている者に伝えます」

 フィリップは護衛騎士を二人呼んだ。

「副長のヴィルヘルム・ホームズとヘルマ・サボーです」

「ホームズ? ヴィルヘルム様はフィリップ様と同じ家門ですか?」

 私の問いにヴィルヘルムが丁寧に一礼してから答えた。

「はい。フィリップ様の従兄に当たります。私の家は傍系になります」

 年上だが、敬語を使っているのは傍系だからか……。

 だが、傍系でも顔が全く違う。

 目が大きくぱっちりとしているヴィルヘルムと切れ長の目のフィリップ。

 小鼻が大きいヴィルヘルムと高く通った鼻筋のフィリップ。

 本当に親戚なのかしら。

 私がじっと顔を見つめていたせいか、ヴィルヘルムが赤面して俯いた。

 しかたがないので、私はヘルマに声をかけた。

「先ほど、温泉で案内してくださった方ですね」

「はい。ヘルマ・サボーと申します」

 ヘルマは赤毛のショートヘアが良く似合っていた。身長は私やマリアドネより高い。フィリップやヴィルヘルムとあまり差が無いように見える。

 簡単な挨拶を済ませた後、フィリップに命じられ、副長の二人は他の護衛騎士に指示を伝えにその場を去った。

 私とアンナとフィリップの3人になるとアンナの表情が曇っているのが分かった。

「アンナさん、どうなさったの?」

「……と、取り逃がしはなかったのでしょうか……イアン村まで20kmしか離れていません」

 飲み込んだ言葉が残っているように、アンナの唇が震えていた。

「そうね……応接室の異形の屍は、ルディ・デュラス伯爵でしょう。廊下に出てきたのは、使用人のようでした。伯爵も含めると6体です。他はどうしたのでしょうね」

 私も気になっていた。

「ですが、今は確認する手段がありません。闇雲に屋敷を探っても、成果は薄い。私たちは負傷者を抱えてますし、変質の疑いもあります」

 フィリップは状況を整理し、淡々と言い切った。

「まずは体力を温存し、明日、伯爵領にある村で聞きこむほうがいいでしょう」

 私もアンナも頷いた。

「ピオニー様」

 マリアドネが使用人の部屋の前で手を挙げていた。

 私たちが駆け寄ると他の護衛が扉を開けた。

 首を咬まれた女性の使用人がベッドに横たわり、動かなくなっていた。

「先ほどまで泣いていたのですが……」

 護衛の一人が唇を噛んだ。

 女は毛布にくるまっていて首から上しか出ていなかった。

 額には大粒の汗が残り、咬まれた首の血は赤から黒へと変色している。

 目は閉じられ、熱を帯びていた肌は青白かった。

「ど、どうしましょう。み、脈を診ましょうか?」

 アンナが小声で尋ねる。

「いいえ、もう少し、様子を見てからにしましょう」

 私が言い終わるとすぐに、女の目がカッと開いた。

 目は赤く染まり、閉じていた唇から犬歯が一気に突き出る。

 そして、女の鼻が小さく動いた。

 次の瞬間、獲物の気配を嗅ぎ取ったかのように、顔を持ち上げ、私たちを捉えた。

 変わってしまった……。

 私は剣を抜き、女が咆哮する前に首を刎ねた。

 すると、切られた女の首がすぐさま(うごめ)きだした。

「何だ! あれは!」

 護衛の声が震えた。

 蠢いた首から女の頭が再生するまであっという間だった。

「これが……異形の屍の正体か」

 フィリップが呻くように呟いた。

 再生した女の目は、あの時のクィーン・ウシュと同じように白かった。

 女は、金属を切り出す音のような鋭いかん高い声を上げた。

 その音に耐えきれず、周囲の者は即座に耳を塞いだ。

 私はすぐさま剣を振り、その声を絶った。

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