【短編版】ボン・カリーは異世界でカレーライスを食べたくなる
昨夜……深夜1時にカレーが無性に食べたくなって、書き上げた作品です。
私はゴールデンカレーが好きです。
追記
『ボン・カリーは異世界でカレーを食べたくなる』n8457ldの短編を書き換え、内容も少々改変してゴールデンお兄様の話を付け加えたのを上げました。
もうちょっといろいろ付け加えたので長くなっております!
良ければこちらも見てください!
何があったか覚えていないけれども、最後に飲んだ夏の夜、週末のビールが死ぬほどおいしかったのは覚えている。
目が覚めたら赤ん坊ってまさにラノベ展開!
しかも目の前で見せられる魔法の数々に、異世界ひゃっほい!
なんて思った赤ん坊の私は、飲みかけミルクを吹き出しそうだった。
「これが妹?なんか猿みたい?」
そんなことを言ったのは一番年の近い兄、バーモンド・カリー。我が家の三男。
ちゅぱちゅぱ、ミルクうめー!の気持ちで哺乳瓶からミルクを飲む私は、リンゴとハチミツがトレードマークのあのパッケージが脳裏に浮かぶ。
「バーモンドが生まれたときもこんな感じだったよ?」
そう返したのは二番目に年の近い兄、ジャワ・カリー。我が家の次男。
ちゅぱちゅぱミルクを飲み続けた。でもやっぱり思い浮かんでくるのは長方形の箱。
ええ、もちろん思い浮かべましたよ……南国の木を……。
「そうそう、だんだん目とかぱっちりして来るんだよ」
そう笑いながら言ったのはゴールデン・カリー。我が家の跡取りであり、長男。
哺乳瓶から口を離して、ぷはっ!うめっ!ってなりつつも、浮かんだよ。うん、金の箱に『カレーライス!』みたいなあの箱が……。
「あぶ、あぶ!」
言葉にならない声を上げるのは末っ子にして長女の私。
ボン・カリーである。
オレンジと黄色と赤のあのレトルトしか浮かんでこない。
なんでよりによって、こんなにカレー食べたくなるお家に生まれたのか、本気で泣いた。ギャン泣きした。
でも与えられるのはお乳だった。
――――――――
魔法と中世の価値観が混ざり合った異世界に転生した私。
金色の髪に、オレンジ色の目。
ふわふわのウェーブのかかった金髪と、ニンジン色の目だな。
黒目黒髪だった自分を覚えている私は、やっと慣れてきた今の自分の容姿だ。
鏡を見ながらうん、美少女!
とは思うが、この世界の人間的に言うと普通。
この美少女で普通とか、美形の概念バグりそう!って思うじゃない?
でもね、マジで上には上がいる。
直視できないレベルの美形たちが……。
なので私は俗にいう、偏差値50の顔面なのだ。
そんなカリー伯爵家の長女、ことボン・カリーはただいま12歳。
絶賛、婚約者探しの最中だ……。
早いな~、と現代人の記憶を持つ私は思う訳ですが、この辺りから探しておかないと売れ残っちゃうらしい。
世知辛いな、異世界。
その候補を紹介された私は眩暈がしそうだった。
まず婚約者候補一人目。
メークイン・ジャガ伯爵令息。長男。
年齢は私より1歳年上の13歳。
金髪ストレートに緑の瞳の少年。
無口で、剣が得意。特に剣術の鍛錬は欠かすことない真面目な性格。でも紳士的な人だ。ちなみに父上は騎士団長。
あ~、よくある展開!
つまり煮崩れしにくい系ね。
続いて婚約者候補二人目。
キタ・アカリ公爵令息。次男。
こちらは1歳年下の11歳。
ふわふわの金髪に緑の瞳の少年。
お話大好きで人懐こい、笑顔がかわいい人だ。ちなみに父上は宰相閣下で、兄上がいるから、伯爵家を継ぐとかなんとか……。スペアとして優秀であろうとする好奇心旺盛な子。
つまりホクホク系ね。
さらに続いて婚約者候補三人目。
ノーザン・ルビー公爵令息。長男。
こちらは同じ歳の12歳。
紫色の髪に琥珀色の瞳の少年。
なんとなくナルシスト。自慢話が多い。
ただ、この中で唯一『天才』と呼ばれる。魔法使い?この世界では魔法士っていうらしいけれども、魔法士としては12歳で魔法騎士団と呼ばれる国内最高機関に所属する天才。まあ、まだ学生なので特別措置らしいけれども。
紫じゃん。カレーには合わん。あ、でも煮崩れしにくい。
最後になりますが、婚約者候補四人目。
ヤツ・ガシラ侯爵令息。長男。
こちらは少し年上の16歳。
ダークブラウンの髪に銀色の瞳の青年。
これアウト。女癖悪い。子供もいるとか噂が……。ちなみにお見合いと称してガシラ侯爵邸に招かれたけれども、その時、笑顔が胡散臭いな~、と思ったらメイドのお姉さんと『あっはん』『うっふん』していた。
つか、八つ頭って里芋でしょ?コブ付きまでそのままじゃん。
流石にヤツ・ガシラ侯爵令息はその場で断る方向にしたかったので、見た瞬間、悲鳴を上げて、泣きながら見たモノをそのまま実況しておいた。
青ざめるガシラ侯爵夫妻。まさか、息子が婚約者候補の来ているところでホニャララ致すとは思っていなかったらしく、夫人は気を失われた。あとで聞いた話だが、ヤツ・ガシラ侯爵令息は女癖が悪すぎて、婚約者選びが難航して、苦し紛れにだいぶ年下で、気弱そうな令嬢に粉を掛けたと……。
私、気弱そうな令嬢だそうです。
なんか、カレーに合う品種を選べば上手く行くのでは?なんて思っている、私。
でも一つ言わせて……男爵いもはなぜ居ない!!
カレーは男爵いもでしょう!
と、叫びたいが、それらしい男爵いもはいないようだ……。
まぁ、これは私――ボン・カリーの婚約物語だ。
――――――――
ボン・カリー伯爵令嬢。
現在18歳
まあ、カレーに合うジャガイモを探して婚約したがはずが、今、とてもじゃないけれどもカレーに合わない彼の膝の上に乗せられている。
「ボン?どうしたんだい?」
甘~~~~い声でそんなことを言ってくるこの人。どうしてこうなったんだっけ?と思い出してもよく分からない。
もうすぐ学園を卒業する私は、この人と結婚する。
どうでもいい話をしよう。
まず、婚約者候補その1であった、メークイン・ジャガ伯爵令息。女騎士と有名なホワイト・シチュー辺境伯爵令嬢と婚姻された。毎日、毎日、互いに剣で語り合う姿は少女たちから黄色い悲鳴が上がる。もしかしたらメークインさまよりも、ホワイトさまの方が人気かもしれない……。少女たちに。
もはや、組み合わせが美味すぎる。
続いて、婚約者候補その2であった、キタ・アカリ公爵令息。お家騒動があり、彼は実家を見限ってサラ・ダポテート伯爵令嬢の婚約者となった。学園卒業後は婿入りするらしい。アツアツなお二人だけれども、キタさまはお父上の件で大変だったらしい。婚約者からも捨てられたところに、サラさまが逆プロポーズ。サラさまの素晴らしいのは、婚約をさっさとまとめて、キタさまを自分のお家に保護なさいました。潰されされかけたキタさまはサラさまの愛でまとまったようです。
あ、うん、これまた美味しい気配しかない。
最後に、婚約者候補その4であった、ヤツ・ガシラ侯爵令息だが、予想外に更生された。意外だ、意外過ぎる。彼を構成させた女神はニコ・ロガシー子爵令嬢。ズバズバとはっきりとした物言いで、乱れまくった彼をビシバシ更生させた。何せ、その子爵令嬢は宰相様が失脚となった不正を暴いた御仁ですからね、お強い。あのこぶ付き芋をコロコロころがして丸い御仁に変えてしまうのですから。
余談ですがガシラ侯爵夫妻は、良い嫁を頂いたと、涙を浮かべているらしい。
そして、残るはノーザン・ルビー侯爵令息。
なぜ、ぱっと見ナルシストの彼が、ここまでほくほくの甘い系になったのか……。
ついでに言えば、ノーザンは100人いたら100人が振り返る美形だ。
次期魔法騎士団の団長候補だ!なんだ!と言われる彼が、何故か婚約者で、もうすぐ結婚する相手なのだ。
ただ、ノーザン・ルビーは揚げると美味い系だったのかもしれない……。
【お品書き】
1.ボン・カレーとノーザン・ルビーのほくほくポテトフライ
2.メークインを包み込む暖かホワイトシチュー
3.キタアカリのマッシュがなめらか、ポテトサラダ
4.八つ頭の濃厚煮っ転がし
なお、書き上げた後に、更に腹が減りました。
盛大な腹の虫と格闘しつつ、寝ましたwww