【連載版開始しました!】外れスキル【無限再生】が覚醒して世界最強になった ~最強の力を手にした俺は、〈裏切者)・〈仲間の仇〉・〈復讐者〉、敵対するその全てを蹂躙する~
連載版開始しました!
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新規ダンジョン【黒きアビス】の最深部。
そこには現在、注意深く周囲を警戒しながら探索する5人の冒険者パーティーがいた。
名を【黎明の守護者】
僕――シンが所属している、最高のパーティーだ。
「シン。そろそろボス部屋だが、休息はいるか?」
「いえ、大丈夫です、アルトさん!」
先頭を歩く、整った顔立ちに少し長めの金髪が特徴的な青年――パーティーリーダーであるアルトさんからの問いに、僕は力強くそう返した。
この中で最も実力の劣る僕は、荷物持ちとして探索に参加している。
魔物との戦いを免除されている身分で、弱音など零すわけにはいかない。
「そうか? それならいいが、本当に疲れた時はすぐに言えよ。お前は大切な仲間なんだから」
「はい!」
僕の意気込みを理解してくれたのか、アルトさんは嫌な顔一つ見せることなく、優しく僕を気遣ってくれる。
そんなアルトさんに感謝しつつも、このまま足手まといで居続けるわけにはいかないなと思った。
「……早く戦力になれるよう、強くなりたいな」
そう呟きながら、僕は自分が【黎明の守護者】に入るきっかけとなったあの出来事を思い出していた。
あれは、ほんの一年前のこと。
僕が暮らしていた故郷の村に、ある強力な魔物が襲いかかってきた。
その魔物はBランクに指定される竜種で、田舎の村が保有する戦力では抵抗することすらできなかった。
結果として、村人は僕を除いて全滅。
家族も、友人も、恩人も、その全てを一瞬で失った。
――だけど、それと同時に得たものもあった。
それが【黎明の守護者】の皆だ。
僕が気絶から目を覚ました時、そこには竜の死体が転がっており、その前には武器を構えるアルトさんたちがいた。
そう、僕にとって仇である魔物を、アルトさんたちが倒してくれたのだ。
その後、唯一の生き残りである僕を見つけたアルトさんは言った。
『俺たちの仲間にならないか』――と。
寄る辺を失った僕には、そう告げるアルトさんが輝いて見え――気が付いた時にはその手を取っていた。
その判断が間違いではなかったと、今では自信を持って断言できる。
だからこそ、より強く思うのだ。
アルトさんたちに恩を返したい。
早く戦力になれるよう、強くなりたいな――と。
その呟きが聞こえたのだろうか。
アルトさん以外の3人が、タイミングを合わせたように僕へと近づいてきた。
「なんだよシン、またそんなこと言ってんのか……まっ、その考え方自体は嫌いじゃねえけどな! 男たるもの、一番大切なのは意思の強さだ! どんだけ実力が劣っていようと、戦う意志さえありゃ問題ねえよ!」
「あらあら、これだから脳筋は……シン、頭の中で色々と考え込むのは構いませんが、それを表に出してはいきません。どんな時でも気高く、優雅に、美しく。それが最も重要なことです」
「2人とも、何を言っているんですか? 何より必要なものは知性と誇りです。シンさん、いついかなる時でも、思考することだけはやめてはいけませんよ」
筋骨隆々の肉体に、茶色の短髪が似合う男性――戦士ガレン。
魅力的なプロポーションに、透き通るような輝く桃色の長髪と、すれ違った者全ての目を引くほどの美貌を持った少女――聖女シエラ。
黄緑色の髪に、モノクルをつけた知性的な男性――賢者セドリック。
パーティーに入ってから何回目か分からない、三者三葉の主張を聞いた僕はくすりと笑った。
アルトさんだけじゃない。【黎明の守護者】にいる全員が、僕にとって掛け替えのない存在であることを再認識する。
「はい、頑張ります!」
だからこそ僕はいつものように、全力でそう頷いた。
その後、再び探索を始めたアルトさんたちの背中を眺めながら、僕はふと、いつになればこの人たちに追いつけるのだろうかと考え始めた。
その流れのまま、僕は自分のステータスを表示する。
――――――――――――――
シン 15歳 レベル:30
称号:なし
HP:300/300 MP:85/85
攻撃力:80
防御力:70
知 力:45
敏捷性:60
幸 運:45
SP:0
ユニークスキル:【無限再生】
通常スキル:なし
――――――――――――――
【無限再生】
・ユニークスキル
・対象者が傷を負った際、自動で再生する。
――――――――――――――
ステータスとスキル。それは神から与えられた、人類が魔物と戦うための力。
現在、僕のレベルは30となっており、これは冒険者歴1年の平均である20よりかなり高い。
これも全てはアルトさんたちのおかげで、安全に格上の魔物と戦って経験値を稼げるからだ。
続けて、僕はスキル欄に視線を落とす。
そこにははっきりと、ユニークスキル【無限再生】と書かれていた。
――ユニークスキル。
それはスキルの中でも特別な、この世で1人しか扱えないものを指す。
その特徴として、通常のスキルに比べて非常に強力な効果を有しているものが多い。
しかし、僕が持つユニークスキル【無限再生】は傷を自動で癒してくれるという、ただそれだけのスキルだった。
便利ではあるものの、その効果は低級の回復魔法にすら及ばない。
そのため昔から、周囲からは外れスキルだと言われていた。
実を言うと、初めてアルトさんからパーティーに誘われた時、僕はこのユニークスキルがあるからだと考えていた。
本当の効果は大したことがないと伝える時、見限られるんじゃないかと不安になり、胸が破裂しそうだったことは今でも克明に思い出せる。
けど、アルトさんは違った。僕の【無限再生】が外れスキルだと知ってからも、変わらず僕を優しく受け入れてくれたのだ。
だからこそ僕は、改めて思う。
一刻も早く強くなり、この人たちの力になりたいと。
(……まっ、それが何年後になるかは分からないんだけどね)
現在の僕のレベルは30。
それに対しアルトさんたち――実は今日同行していないだけでもう一人メンバーがいるのだが、彼を合わせた5人の平均レベルは300超え。
僕がそこに到達するには少なくとも10年はかかる。
その間、アルトさんたちも成長を続けることを考慮すれば、実際に追いつけるのはさらに先となるだろう。
(それでもやるんだ、僕は!)
受けた恩を返すため。
僕は改めて、心の中でそう誓うのだった。
◇◆◇
それから数十分後。
安全地帯と思わしき大広間を抜けた先には、ボス部屋が待ち受けていた。
中に足を踏み入れた僕たちの前に、ダンジョンボスが出現する。
「ガルルルゥゥゥゥゥ」
そこにいたのは、黒色の毛並みが特徴的な獣型の魔物だった。
その魔物は唸り声を上げながらこちらを睨みつけてくる。
僕は魔物のステータスを確認した。
――――――――――――――
【ブラック・ファング】
・レベル:30
・ダンジョンボス:【黒きアビス】
――――――――――――――
すると偶然にも、魔物のレベルは僕と同じだった。
「さて。今回は新規ダンジョンの調査依頼を受けてきたわけだから、攻略報酬を確かめるためにボスも倒す必要があるんだが……」
アルトさんはそう言いながら、ちらりと僕に視線を向ける。
「せっかくだ。このレベルならシン、お前が1人で倒してみろ」
「はっ、はい!」
僕はその提案に頷いた後、腰元から短剣を抜いてブラック・ファングと向かい合った。
魔物を倒した際に得られる経験値は、自分より格上であるほど多く、格下であるほど少なくなる。
そのためこういった場合、アルトさんはいつも僕に戦闘を任せてくれていた。
皆が万が一の場合に備えてくれている中で、僕は安全にレベルアップできるのだ。
今回も、その例に洩れることはなく――
「――はあっ!」
「ギャウッ!?」
――戦闘開始から約5分後。
僕の振るった短剣がブラック・ファングの胸元を見事に深く切り裂き、それがトドメとなった。
するとその直後、幾つかのシステム音が鳴り響く。
『ダンジョンボスを討伐しました』
『経験値獲得 レベルが1アップしました』
『ダンジョン攻略報酬 SPを10獲得しました』
システム音を聞いた僕は、強く拳を握りしめた。
「やった、レベルアップだ!」
確かな満足感と共に、僕は自分のステータスを確認する。
――――――――――――――
シン 15歳 レベル:31
称号:なし
HP:263/310 MP:89/89
攻撃力:81
防御力:71
知 力:46
敏捷性:61
幸 運:46
SP:15
ユニークスキル:【無限再生】
通常スキル:なし
――――――――――――――
先ほどと比べたら、各パラメータが少しずつ上昇しているのが分かる。
ちなみにだが、レベルが1上がるごとにHPとMPは1~10の中でランダムの値が、攻撃力などの5つのパラメータはそれぞれ1上がることになっている。
そしてそれとは別枠でSPを5獲得できることになっており、HPとMPを除く各パラメータに対して、自由に割り振ることができるのだ。
しかし、どうやら今回は違う様子。
レベルアップによるSP獲得の他に、ダンジョン攻略報酬でも10獲得できたからだ。
そして、その恩恵を受けたのは僕だけじゃなかった。
「ほう、ここの攻略報酬はSPが10か。レベル30のボスにしては望外だな」
後ろではアルトさんを含めた全員が、自分のステータスを見ながら感慨深そうな表情を浮かべていた。
魔物と戦った本人にしか与えられない経験値とは違い、ダンジョン攻略報酬はその場にいるパーティー全員に与えられる。
だからこそ、アルトさんたちも同じ報酬を受け取ることができたのだ。
そして今、彼がレベル30のボスにしては望外と言った件だが、これも少し考えれば察しが付くだろう。
SPが10といえば、単純計算で1レベルアップしたに等しい。
HPとMPに使用できないという欠点はあるものの、その全てを好きなパラメータに振り分けられると考えれば、1レベルアップ以上の価値があると考える人もいるかもしれない。
さて。この話を聞くと、魔物を倒して経験値を稼ぐより、こういった報酬をもらえるダンジョンを何回も攻略した方が効率的に成長できるんじゃないかと思う人もいるだろう。
しかし残念ながら、それは不可能となっている。
というのも――
「しかし、そうなると残念でならないな。同じダンジョンでは、一度しか攻略報酬をもらえないなんて」
――今、アルトさんが言った通りだ。
ダンジョン攻略報酬は、同じダンジョンにつき1回しかもらえない。
どういう原理かまでは判明していないが、高名の学者たちによると、攻略者の魂が情報としてダンジョンに記録されているのではないか――などといった推測がされている。
いずれにせよ、はっきりしていることは一つ。
今回のボスのように、レベル30の魔物を永遠に倒し続けるだけで最強になるというのは、ただの夢物語でしかないのだ。
(結局、一歩一歩前に進んでいくしかないってことだよね)
「じゃあ、そろそろ戻るぞ」
「はい!」
そんな結論を出した後、僕はアルトさんの後を追うのだった。
――――僕たちの前に想定外の光景が飛び込んできたのは、それからわずか1分後のことだった。
先頭に立つアルトさんが、怪訝そうに眉をひそめる。
「なんだ? 出口が閉ざされている……?」
ボス部屋を出て、短い通路を挟んだ先に待つ大広間。
安全地帯と思わしい空間だが、なぜか来る途中に通ってきたはずの出入り口が厳重な扉で閉ざされていた。
「いったい、どういうことだ?」
大広間の奥まで移動した後、アルトさんは小首を傾げながら扉に触れる。
その直後だった。
僕たちの前に、それが現れたのは。
「グルゥゥゥウァアァァァァァッ!!!」
咆哮。
そう表現するのも生温い圧倒的な叫びが、突如として大広間全体に響き渡った。
「っ、敵襲か!?」
「きゃぁっ、何ですかこれは!?」
「――! 皆さん、後ろです!」
ガレンさんとシエラさんが困惑する中、真っ先にその発信源を捉えたセドリックさんが声を上げる。
それに応じるように僕たちは振り返り――そして、言葉を失った。
大広間の中央。
先ほどまで何もなかったはずのその場所に、一体の魔物が鎮座していた。
高さは約4メートルに及ぶだろうか。
全身が漆黒の靄に包まれており、姿形こそ人型であるものの、禍々しい靄のせいでとてもじゃないが人間と同種の生命体とは思えない。
漂う雰囲気だけを見れば、むしろ不死者に近いだろうか。
右手には一振りの短剣を持っており――否、魔物のサイズが大きいだけで錯覚しそうになるが、僕たちでいうところの大剣を装備していた。
その大剣もまた漆黒の靄を纏っており、醸し出す魔力はとても言葉では言い表せない程に破滅的だ。
僕は覚悟を決めて、魔物のステータスを確認した。
――――――――――――――
【ネクロ・デモン】
・レベル:1000
・エクストラボス:【黒きアビス】
――――――――――――――
レベル欄に書かれていた数値を見て、僕は思わず目を見開いた。
「レベル1000だって……!?」
僕はもちろん、レベル300のアルトさんたちをも大きく上回る存在。
冒険者の中でも限られた存在しか到達できないその領域に、目の前の魔物――エクストラボス、ネクロ・デモンは至っていた。
同じ結果を、他の4人も確認したのだろう。
この場にいる全員が、突如として訪れた絶望的な状況に冷や汗を流していた。
まずはじめに、戦士のガレンさんが声を張り上げた。
「おい、どうするんだアルト! レベル1000のエクストラボスが出るなんて、さすがに想定外だぞ!?」
普段であれば、持ち前の防御力と意思の強さでどんな強敵からもメンバーを守ってくれるガレンさんですら、恐れおののく程の事態。
判断を委ねられたアルトさんは、その表情を大きく歪ませた。
「オレたちは冒険者だ。できることなら、どんな強敵相手でも打ち倒したいところだが――」
その時、ネクロ・デモンが一歩だけ前に踏み出した。
耳を覆いたくなるほどの爆音が響き、大広間全体が激しく振動する。
同時にネクロ・デモンを纏う漆黒の靄が大きく揺れ――その余波が僕たちの元にまで届いた。
「っっっ!?」
たったそれだけで、僕は思わずその場に膝をついた。
あまりにも濃密度な魔力。僕と敵の間にある、生物としての圧倒的格差を思い知らされるかのようだ。
そして僕ほどではないが、同じ現象が他の皆にも襲い掛かっていたようで、全員が顔を青くしていた。
そんな中、アルトさんは「くっ」と悔しそうな声を漏らす。
「……倒すのは無理だ、レベルが違いすぎる。しかし逃げようにも、退却用の出口は頑固な扉で閉ざされ開く気配がない。恐らく、ここは初めから挑戦者を閉じ込め始末するためのトラップ・ルームだったんだろう……」
そこまでを分析し、逡巡するように目を閉じた後――
「……ふぅ、仕方ないか」
――僕にはアルトさんが、不自然にその口角を上げたように見えた。
(ん? 今のはいったい……?)
それは果たして気のせいだったのだろうか。
その答えにたどり着くよりも早く、アルトさんは真剣な表情で僕を見た。
「シン! 『脱出の転移結晶』を使え!」
「――――――!」
その指示に対し真っ先に反応したのは、僕ではなくガレンさんたち3人だった。
「おいアルト、それを使うってことはまさか……」
「そういうことですね?」
「まあ、確かにそろそろ潮時でしたか……」
僕には、ガレンさんたちが何を言っているのかが分からなかった。
それでもやるべきことだけははっきりしている。
「分かりました! 『脱出の転移結晶』を使います!」
そう答えた後、僕は荷物袋の中から一つの魔水晶を取り出した。
マジックアイテム『脱出の転移結晶』。
その名の通り、ダンジョンから地上に脱出するためのアイテムだ。
緊急事態が生じた場合、僕がこのアイテムを発動するよう、事前にアルトさんから言われていた。
その申し出に従い、僕は転移結晶に魔力を注ぎ始めた。
「アルトさん! 発動まで、1分程度かかります」
僕が声を張り上げると、アルトさんは小さく頷いた。
「分かった! その程度の時間なら、何とか稼いでみせる! やるぞ皆!」
「おう!」「ええ」「はい」
――それから1分間、僕の目の前で激闘が繰り広げられた。
「グルォォォオォォォォォ!!!」
鼓膜が破れそうになるほどの雄叫びと共に、力強く大剣を振るうネクロ・デモン。
それに対しアルトさんたちはスキル・魔力を出し惜しみせず使うことで、わずかとはいえ拮抗状態を生み出していた。
命を懸けて戦う4人の姿を見て、僕の心は高揚していた。
(やっぱり、皆はすごい……!)
圧倒的格上に対し、怯えることなく戦う姿。
いずれ自分もこうなりたいと、改めて強く思うほど眩しい光景だった。
そして1分後。
発動準備が整ったタイミングで、僕は声を張り上げた。
「準備できました! こちらに来てください!」
「っ、分かった! 全員、タイミングを合わせて退け――」
アルトさんの持つ長剣に、眩い光が集う。
そして彼は力強く長剣を振り下ろし、その光を解き放った。
「――セイクリッド・ソード!」
「グルァァァアァァァァァ!」
アルトさんの最大奥義を浴びたネクロ・デモンの巨体がわずかに後退する。
大したダメージにはなっていないようだが、最後に時間を稼ぐには十分だった。
「今だ!」
それを見届けた後、4人は素早く僕のもとにかけてくる。
すると、最後に到着したアルトさんがこちらに手を向けながら言った。
「シン、荷物をこっちに渡せ!」
「えっ? は、はい!」
どうしてこのタイミングで? と疑問を抱きつつ、パーティー全員のアイテムを詰めた荷物袋をアルトさんに手渡した。
いずれにせよ、これで準備は整ったはず。
「シン、頼む!」
「はい! 転移結晶――発動!」
ダメ押しに最後の魔力を注いだ瞬間、転移結晶が眩い輝きを放つ。
続けて巨大な魔法陣が出現し、そこから展開された透明の結界が転移対象を包み込んだ。
――――ただ1人、僕を除いて。
「………………え?」
意味が分からず、一瞬で思考が白に脱色する。
何が起きた?
アルトさんの指示通り、転移結晶を発動した。
魔法陣は出現し、結界も無事に展開された。
そこまではよかった。
問題は、今もまだ僕が外側に取り残されているということ。
これでは、僕だけダンジョンの外に転移することができない。
原因は不明。
ただ、このままだとまずいということだけは分かる。
「皆さん、大変です! 僕だけ結界の外に残されて――」
アルトさんたちに状況を伝え、どうするべきか判断を仰ごうとした、その時。
僕の目に、信じられない光景が飛び込んできた。
「くくっ、くはは……」
どういうわけか、アルトさんは笑いを堪えるように自分の口元を押さえていた。
いや、違う。
ようやく気付いた。
いま笑っているのはアルトさんだけじゃない。
それどころか――
「「「「アーハッハッハッハッハッハ!!!」」」」
――4人全員が、外側に取り残された僕を見て高らかに笑い声を上げていた。
押し寄せる情報量は、既に僕の理解できる上限を超えていた。
何もわからず、ただ呆然とその場で膝をつく僕に対し、アルトさんは気付く。
「なんだ、間抜けな面を晒して。まだ気付いていないのか? お前はオレたちに騙されたんだよ」
「騙され、た?」
「ああ、そうだ。お前だけ結界の外に乗り残されたのが不具合とでも思ったか? けど残念、これは元から結界の外側に使用者がいないと発動しない――そういうアイテムだったんだよ」
そこまで説明され、心より先に頭が理解した。
転移結晶にはデメリットがあり、アルトさんは元からそれを知っていた。
その上で、僕だけにそれを隠していた。
つまり――この裏切りは、この場でいきなり思いついたものじゃない。
以前から想定されていた、計画的なものだったんだ。
「いつから……ですか?」
「あん?」
「いつから、僕を騙してたんですか?」
「気になるのか? いいだろう、転移まではもう少しかかるだろうし教えてやる。まあ、オレがこの時を楽しみにしてなかったといえば嘘になるしな」
そんな前置きのあと、アルトさんは告げた。
僕にとってはあまりにも想定外で――そして、屈辱的な言葉を。
「オレたちがいつから、お前を騙していたかだったよな? 答えは簡単だ。初めから――つまり、お前の村を魔物に襲わせたところからだ」
「…………は?」
脳が、理解を拒んだ。
それほどまでに信じがたい言葉だった。
アルトさんが、僕の故郷を魔物に襲わせた?
つまり――僕の大切な家族や友人たちを殺したのは!
「なんで、そんなことをしたんですか!?」
怒りのまま、僕はアルトさんを強く糾弾した。
だが、アルトさんは戸惑う素振りすら見せず、へらへらと笑って口を開く。
「そう焦るな、ちゃんと順を追って教えてやる。あの時、オレたち【黎明の守護者】はBランク魔物の【ハングリー・ドレイク】を追っていた。コイツが厄介な相手でな、空腹であればあるほど力を増す特性のせいで倒すのに苦戦してたんだ」
一呼吸置いた後、アルトさんは続ける。
「そんな時、ある村を見つけた。そう、お前の村だ。そこでオレたちは天才的なアイディアを閃いた。空腹なほど強くなるんだったら、まずその腹を満たしてやればいいと」
「まさか、それで……」
「そのまさかだ。オレたちはハングリー・ドレイクをお前の村に誘導し、村人を食わせることでその腹を満たさせた。その後はお前の知っての通り――お前以外の村人全員が死んだあと、弱ったその魔物をオレたちが見事に討伐したってわけだ」
「そん、な……」
つまり僕は……初めから間違っていたんだ。
僕の大切な家族を殺した仇を恨むどころか、恩人だと勘違いし続けていた。
アルトさんたちはそれを知っていながら、ずっと隠していた。
それどころか、僕をパーティーに入れて――
「そうです! それならなぜ、僕をパーティーに勧誘したんですか!? アルトさんたちからすれば、目撃者の可能性がある僕はその場で始末した方が――」
「ああ、それなら簡単だ。お前がユニークスキルを持っていたからだよ」
「っ、【無限再生】のことですか? ですがそれなら、外れスキルだって説明したはずじゃ……」
たとえユニークスキルであれ、外れスキル持ちを仲間にするメリットなど存在しないはず。
そう思っての問いだったのだが、アルトさんは手を左右に振った。
「ああ、違う違う。そうじゃなくてだな、この国のお貴族様には何を思ってか、ユニークスキル持ちを高く買い取ってくれる奴がいるんだよ。まったく、金持ちの考えることは分からねえ……が、オレたちからすれば儲けの種には違いない。条件としてレベル100を超えた人物じゃないといけないってことで、オレたちが一からお前を育ててやったわけだ」
「……初めから、僕のことは仲間と思ってなかったんですね」
「ははっ、当然だろ。なあ、皆?」
アルトさんの言葉に、他の3人も頷く。
「そりゃそうだ。才能のない奴を指導する面倒くささを知ってるか? ノロマなテメェを殺してやりてぇと思ったことなんか一度や二度じゃ済まねえよ」
「無能がパーティーに1人いるだけで、周囲から笑われてしまう屈辱は言葉で表しようもありません。大金のためとはいえ……この一年、恥ずかしくて堪りませんでしたわ」
「何も知らないまま無垢に笑う貴方は、とても惨めでしたよ」
グレンさん、シエラさん、セドリックさん。
これまで大切な仲間だと思っていた皆から向けられる本心の言葉。
最後に、再びアルトさんが口を開く。
「もっともここでお前を切り捨てる以上、もう報酬はもらえなくなったわけだが……せめて最後に役立ってくれてよかったよ、シン。お前のおかげでオレと仲間の命は助かる」
――ああ、そうだったんだ。
皆を仲間だと思っていたのは、初めから僕だけだったんだ。
僕は。
僕は――――
心の底から、何かが湧き上がるような感覚がした。
だが、その感覚の正体を自覚する直前に、それは起きた。
「ルァァァアァァァァァ!」
「っ!?」
突如として、僕を覆い隠さんとばかりに巨大な影が落ちてくる。
その影の正体はネクロ・デモンだった。
話し合っている間にダメージも回復したのか、いつの間にか僕の背後まで接近していたネクロ・デモンが、漆黒の大剣を高く振りかざす。
「くっ――」
咄嗟に回避を試みるが、結果は無情だった。
直撃こそ避けることができたものの、大剣の切っ先が僕の右肩に軽く触れ――ただそれだけで、僕の右腕は柔い人形のように斬り飛ばされた。
「う、うわぁぁぁぁぁああああああああああ!」
切断面から、焼けるような痛みが襲い掛かってくる。
生まれてから感じた中で間違いなく最上級であろうその痛みは、一瞬で僕の頭から思考する余裕をかき消す。
僕は苦痛に悶えながら、その場で惨めに転がることしかできなかった。
そんな僕を見て、結界の中にいる皆は侮蔑の視線を向けてくる。
「たかだか片腕が飛ばされた程度の痛みで、気を狂わせるほど悶え苦しむとは……なんとも情けないな」
普段から僕に、意思の強さの重要性を語ってくれていた戦士ガレンがそう零す。
「蛆虫のように地を這いながら、苦痛を耐え忍ぶその表情……醜いにも程があります。一時とはいえ同じパーティーにいた過去を呪いたくなるほどに」
美貌に自信を持ち、優雅さを大切にしていた聖女シエラがそう侮蔑する。
「何も理解できないまま、惨めさを曝け出して死に絶えるとは……さすがに同情してしまいますね」
誰よりも知性と誇りを優先し、それを実践し続けた賢者セドリックがそう嘆く。
そんな彼らの言葉を受け――死の淵で、僕はようやく理解した。
腹の奥から絶え間なく湧き上がってくる、この感情の名前を。
「…………してやる」
「……ん? 何か言ったか?」
これは憎しみ。
――そして殺意だ。
「殺してやる! 絶対に……お前たちをッ!!!」
今の僕に出せる、最大限の激情。
それを受けたアルトさんは――否、アルトはわずかにきょとんとした表情を浮かべた後、すぐに高笑いした。
「あはは! 今際の際に何を言うかと思えば、まさかの殺害予告とは! 惨めにも程があるぞ、シン。意気込んでいるところ悪いが――お前はここで死ぬんだよ」
ズシン、ズシンと。
重々しい大音量を鳴らしながら、ネクロ・デモンが僕に近づいてくる。
その奥では、アルトたちを包む結界が輝きを強めていた。
とうとう、転移が発動する。
「じゃあな、シン。まあそう気を落とすな。お前が死ぬのは、ただ運が悪かっただけだ」
最後にアルトがそう告げると同時に、結界はひと際大きく輝く。
そしてその光が収まった時、そこには既にアルトたちの姿はなかった。
転移が成功したのだろう。
残されたのは僕と、エクストラボスのネクロ・デモンのみ。
この状況から、僕が生き延びられる方法なんてあるはずがなかった。
それでも僕は、最後まで憎しみを燃やし続ける。
「グルァァァアァァァァァァァ!!!」
咆哮。
そして豪振。
ネクロ・デモンは両腕で大剣を握ると、後ろから前に送る形でその剛腕を振り下ろした。
馬鹿げた威力により振るわれた大剣は地面をも軽々と砕きながら推進し、這いつくばる僕の体を全力で叩きつけた。
「がはっっっ!」
渾身の一撃を浴び、僕の体は粉々になる一歩手前の状態のまま、砲弾のような速度と勢いで弾き飛ばされた。
大広間はおろか、間に伸びる通路すら軽々と飛び越え、ボス部屋まで一直線に吹き飛んでいく。
その最中、僕は見た。
かすかに残されていたHPバーが、完全に0を迎えるのを。
(ああ……ここで僕は死ぬのか?)
ボス部屋の地面に何度も叩きつけられて静止した僕は、朦朧とする頭のまま考え続ける。
HPが0になり、体は限界を迎え――それでもまだ、憎しみだけは尽きることがなかった。
(そんなこと、絶対に認めない)
死に際で、改めて僕は誓う。
(アイツらに復讐する、その時まで……僕は絶対に!)
だが、現実は無情で。
そんな意気込みもむなしく、とうとう僕は意識を失う。
――その刹那、システム音が聞こえた気がした。
『対象者の死亡を確認しました』
『全ての条件が達成されました』
『ユニークスキル【無限再生】が進化します』
『魂の再生成が行われます』
(魂の、再生成……?)
この時の僕は、知る由もなかった。
死と同時に発生した、外れスキル【無限再生】の覚醒。
この出来事が僕を、世界最強の存在に導くことになるなんて。
◇◆◇
――それから、どれだけの時間が経過しただろうか。
ポタリ、ポタリと。
水が滴るような音が、鼓膜を小さく震わせる。
(音……? 僕は、死んだはずじゃ……)
状況が理解できず困惑する中、僕はゆっくりと目を開けた。
「ガルルルゥゥゥ!」
「…………え?」
その直後、唾液を滴らせながら獰猛な唸り声を上げるブラック・ファングが視界いっぱいに飛び込んできた。
「う、うわぁぁぁあああああ!」
僕は慌てて立ち上がると、転びそうになりながら必死にボス部屋の外に出た。
ダンジョンボスは基本的に、ボス部屋の外にまで付いてくることはない。
無事に通路までたどり着いた僕は「ホッ」と一息つきながら、右手で胸を撫でおろした。
「…………あれ?」
そこでようやく気付く。
失ったはずの右腕が、元通りになっていることに。
「どうして!? 確かにあの時、ネクロ・デモンの攻撃で失ったはずじゃ……!」
まさか夢でも見ていたのか?
いいや、そんな訳がない。
あの時に感じた痛みは、今でもはっきりと覚えている。
「だけどそれなら、いったい何がどうなってるんだ……?」
必死に頭を回転させ、記憶を遡る。
なぜ僕は今も生きているのか、そして右腕が元通りになっているのか。
何か、そのヒントになる出来事があったはず……
そこで僕は思い出した。
死に絶える直前、あるシステム音が聞こえたことを。
そう、確か――
『対象者の死亡を確認しました』
『全ての条件が達成されました』
『ユニークスキル【無限再生】が進化します』
『魂の再生成が行われます』
――こういったことを、システム音は言っていたはずだ。
状況が状況だったためその意味まで考える余裕はなかったが、改めて思い返してみると、かなり気になるワードを連発していた。
「ユニークスキル【無限再生】が進化します……そう言ってたよな?」
ユニークスキルの中には、特定の条件を満たすことで真の効果が現れるものもあると聞いたことがある。
そこに何かヒントがあるかもしれない。
そう考えた僕は、いったん自分のステータスを確認した。
するとそこには、衝撃的な内容が書かれていた。
――――――――――――――
【無限再生】
・ユニークスキル
・対象者が傷を負った際、自動で再生する。
・死後、魂の再生成を行うことで復活する。
復活後、60分間は行動することができず、このスキルを再発動することもできない。
――――――――――――――
「なっ……!」
その説明を見た僕は、大きく目を見開いた。
「死後、魂の再生成を行うことによる復活……つまり、死からの再生――それが【無限再生】の真の能力だったのか!?」
これまでただの外れスキルだと思い込んでいたのが、恥ずかしくなるほどの規格外な能力だ。
とはいえ、そう思い込んでしまうのも仕方なかっただろう。
「状況から察するに、覚醒の条件は僕の死亡……そりゃ、これまで気付けなかったわけだよ」
それに最後の説明をしっかりと読んでみたところ、無限という言葉から想像するほど優秀なわけでもない。
復活後、無防備な時間にもう一度殺されでもしたら、その時は今後こそ死に絶えてしまうのだろう。
「今回の場合、ネクロ・デモンからトドメを受けた時に、たまたまトラップ・ルームの外に吹き飛ばされたおかげで追撃がなくて助かった……ってところかな」
そこまでを分析し、僕の体はぶるりと震えた。
僕が助かったのは紙一重でしかなく、その奇跡がなければ間違いなく死んでいたことだろう。
「そうだ! ネクロ・デモンは今どこに……」
ハッと顔を上げた僕は、通路の先にあるトラップ・ルームに視線を向ける。
しかしそこにはもう、ネクロ・デモンの姿は残されていなかった。
ただし、僕たちの脱出を阻んだ出入り口は今も厳重な扉で閉ざされている。
そこからある程度の予測を立てることができた。
「アルトが推測したように、ここは攻略者を閉じ込め始末するためのトラップ・ルームなんだろう。アルトたちが転移でいなくなり、僕が死んだタイミングで役目を失ったネクロ・デモンは消滅……しかしその直後に僕が復活したことで、もう一度出入口が閉ざされた――勘も入ってるけど、大筋は間違えていないはずだ」
だが、仮にこの予測が正しかった場合……僕にとっては絶望的な材料にしかならない。
なぜなら仕組みが分かっただけでは、ここから抜け出すことはできないからだ。
「罠が残っている以上、ここから外に出ようとすればもう一度ネクロ・デモンが出現するはず。だけど僕には、ヤツと戦えるだけの力なんてない……」
ネクロ・デモンのレベルが1000なのに対し、僕のレベルはたった31。
その差は歴然であり、奇跡や偶然でひっくり返るようなものではない。
またトラップ・ルームの外まで吹き飛ばされるなんて奇跡も起こらないだろうし、再び戦えば今度こそ僕は死に絶えるだろう。
万事休す。
まさしく、そんな表現がピッタリな状況だった。
「何か、他に手はないのか……?」
せっかく蘇ることができたのに、ここで諦めるなんて絶対にゴメンだ。
それに――
「ここから出ることができなければ、アイツらに復讐することもできない」
――今もなお、際限なく湧き上がる復讐心が、僕から諦観を奪い去っていく。
何としてでも現状を打破するための方法を思いつかなければ。
しかし何度考え直したところで、今の僕がネクロ・デモンに勝てるとはとても思えない。
できることがあるとすれば、この場でレベルアップするくらいだが……
僕は振り返り、今なおボス部屋からこちらを睨み続けているブラック・ファングを見た。
――――――――――――――
【ブラック・ファング】
・レベル:30
・ダンジョンボス:【黒きアビス】
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「……さすがにこれは、無茶があるよね」
閃いたのは、再出現するボスを何度も倒すことでレベルアップするという方法。
だが、肝心のブラック・ファングのレベルは30。
これでは何度討伐を繰り返したところで、得られる経験値は限られている。
たどり着けたとして、せいぜいが40~50レベルといったところだろう。
それでも、僕にはもう他の選択肢が残されていなかった。
無謀は承知で――そしてそれ以上に、この悲惨な現実から目を逸らすため、僕は短剣を握りしめボス部屋に戻った。
その途中で、余っていた15SPを全て攻撃力に割り振る。
「グルァァァアアアアア!」
「――はあっ!」
ブラック・ファングの初撃を躱した僕は、そのまま反撃を仕掛けた。
溜まった鬱憤を晴らすように、絶え間なく連撃を浴びせていく。
その結果、戦闘からわずか1分後。
僕はブラック・ファングの討伐に成功した。
――そして僕は、信じられないような現象に遭遇することとなった。
『ダンジョンボスを討伐しました』
『ダンジョン攻略報酬 SPを10獲得しました』
「…………え?」
一瞬、何を言っているのか理解することができなかった。
「待て、待ってくれ……まさか今、ダンジョン攻略報酬って言ったのか?」
聞き間違いを疑いつつ、僕は自分のステータスを確認する。
すると、
――――――――――――――
シン 15歳 レベル:31
称号:なし
HP:301/310 MP:89/89
攻撃力:96
防御力:71
知 力:46
敏捷性:61
幸 運:46
SP:10
ユニークスキル:【無限再生】
通常スキル:なし
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SP欄には、確かに10という数字が刻まれていた。
「――どういうことだ!?」
1つのダンジョンにつき、1人が得られる報酬は一度だけ。
これはダンジョンにおいて絶対のルールであり、例外が確認されたことはない。
にもかかわらず――僕は今、二度目の攻略報酬を手に入れることができた。
これは、この世界の歴史を覆すレベルの出来事だ。
「だけど何で、そんなことが……」
意味が分からなかった。
だってそうだ。
長年、ダンジョンを研究している高名な学者たちも言っていた。
ダンジョンには攻略者の魂が情報として記録されるため、再度報酬をもらうことはできないと――
「魂を、情報として記録……?」
僕は急いで【無限再生】の説明を確認する。
するとそこには確かに、『魂の再生成を行う』と書かれていた。
「まさか、そういうことなのか?」
【無限再生】。
それはただ死から復活し、体を再生させるだけの能力ではない。
魂ごと再生成することで、新しい存在として蘇らせること――それこそがこのスキルの本質だったんだ。
もしこの予想が正しければ、一気に希望が湧いてくる。
「経験値によるレベルアップには限度があるが……無限に攻略報酬をもらえるのであれば、そこに限界は存在しない」
ボスを倒せば倒した分だけ、僕は無限に成長することができる!
――無論、この方法には一つ、大きなデメリットも存在するが。
「……ふぅ」
僕はこの先に訪れるであろう苦痛を想像し、一度だけ深く息を吐いた。
ある意味では、ここで潔く死を選んだ方が何倍も楽かもしれない。
それでも僕は、絶え間なく湧き上がるこの復讐心を諦めることなんてできない。
決意を固めるまでの時間は1分もかからなかった。
「再び報酬をもらうためには、魂の再生成を行う必要がある。それを可能とする方法はただ1つ……僕自身が死ぬことだ」
短剣を両手で握りしめた僕は、恐怖心以上の復讐心でその震えを抑え込んだ。
そして、
「――――はあっ!」
とうとう僕は、深く深く、自分の心臓にその短剣を突き刺すのだった。
『魂の再生成が行われます』
――――かくして、地獄のような成長の日々が幕を開けた。
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