Fünf 日常のひとかけら─1
『 カーテンの隙間から差し込む日光、僕は目を覚ました。今日は確か……そう、土曜日だ。
「ん……ふあぁ。……うきょう?」
僕は横で綺麗な寝顔をしている夫、宮本宇京を起こそうと揺さぶる。あーもうほんとに顔が良い。
「ん-?……ふふ、おはよ。」
そう言って宇京は僕の頭を撫でてくれる。僕はあんまり甘え慣れてないけど、嬉しかったから宇京の胸に頭をぐりぐりした。でもようやく目が覚めてきたのか今更になって恥ずかしくなってきて、顔を止める。うう、自分でも分かるくらい顔が赤くなってるよぉ……。
「目も覚めたみたいだし、とりあえず着替えようか。」
そういって宇京は箪笥から僕の服を出して、横においてくれる。その足で扉の前まで行くと、部屋を出る前に振り返って
「じゃあ僕は部屋を出てるから、着替えたら呼んでね。」
と言った。うん、微笑んで言って来るからキュンキュンした。かっこいい……!
っと、早く着替えよう。……ううん、もう慣れてはいるけどやっぱり着替えづらいなぁ。まぁ仕方ないか。うっ、着替えづらいせいでちょっとイライラしてきた。まだ着替え終わってないけど、宇京を呼んで手伝ってもらおう。
「宇京ー!ちょっと助けてー!」
僕がそう言うと、廊下をトタトタと歩く音が聞こえてきた。そして扉が開かれる。
「どうしたの?彩k……へっ?」
そう言って宇京は顔を赤くし、手で覆ってしまう。
「あ、あのさ、その……し、下着、見えてるから……!」
うわぁ初心で可愛い。実際僕たち夫婦なんだから、下着どころか……いや、これを言うのはやめておこう。とにかくそういうことだから、僕は恥ずかしくもなんとも思わないけどなぁ……。
「ん?別に良いじゃんそのくらい。それよりこれ手伝って……。」
「う、うん。あの、手伝いたいのは山々なんだけど、この格好は僕の心臓に悪いっていうか……。」
僕はいまだに耳が赤くなっている宇京にちょっと不機嫌な顔をする。だってそんなの言ってる場合じゃないじゃん!僕は今着替えられないっていう状況に陥ってるんですけど!
どうやらさっきの顔が刺さったのか、宇京はすこし呻きつつも手伝ってくれる。はぁ、自分の足で歩けるようになりたいなぁ……。そうしたら楽だし、宇京にも迷惑かけないで済むのに。
「よし、朝ごはん食べようか。」
僕は車椅子に座り、宇京に押してもらってリビングに行く。
僕は足の膝から下が動かせない。昔は一人で歩けたし、走ったりもできた。でも数年前の冬、丁度終わりの頃に、交通事故にあって動かせなくなった。正直言うと、その時のことは覚えていない。でも宇京が言うんだから、きっとそうだったんだと思う。実際人間は、大きなショックがあったときにそのことを忘れるらしいし、僕のもそういうことなんだろう。
「今日はホットサンドを作ってみたんだ。」
おお~、美味しそう。
「いつもありがと。でも、たまには僕のことも頼ってよね?」
一応僕が嫁なんだけどなぁ……。前にこう言ったときは確か、彩姫が怪我してるところ見たくないからって言われたんだっけ?僕一応家庭科の成績良かったんだけどなぁ。
「彩姫はまず一人で歩けるように頑張ってよ。歩けたら僕も考えるから……。」
「……過保護。」
まぁそこも含めて好きなんだけどね。




