Drei 邂逅
重い音を立てて扉が開く。その先には、彼らが初めに居た場所と同じく豪華絢爛な部屋。金色に光るその場所の中央、丁度彼の正面には、先ほど兎々から伝えられた通り例のデブが居た。
「よく来たね。私が、今日から君の主人となるベーゼ・メンシュだ。これからよろしく。して、君の名前は何だい?」
さて、どうするべきやろな……。今の所はそこまで酷くないんけど、何より此奴人身売買しとっからなぁ……。
『アイツの足元から大体一定のリズムで音がする。』
足元、か。あ、足が上下しとる。っちゅーことは、イライラしとるんやな。この部屋に以来な奴がいる、とか、予想と違う人間が届いた、とかかなぁ。まぁ偽名言っとくんが一番ええな。俺の番号のZehnに、苗字の「黒川」の黒…… schwarzeで……、
「……ツェーン・シュヴァルツ。」
「ほお、ツェーン君か。では、ツェーン君を部屋に案内してあげてくれ。私は少し用事を済ませてくるよ。」
ほーん、「用事」ねぇ?
「───────、──。」
さて、面倒ごとは嫌いやし、なるべく喋らんようにせぇへんとな。
彼は歩きながら、出来るだけ城の中を見る。後々ここを出るとなれば、ある程度は道を分かっておかなけらばならないからだ。それだけでなく、気付かれないように出なければいけないため監視カメラなども注意しなければいけない。
大体はわかったけど、流石に広いし覚えきれへんな。いや、多分Sechsとか水騎あたりが見とるはずだし、大丈夫か?
「ここがお前の部屋だ。」
「……。」
まぁここはすんなり入っときますか。こんなとこでなんかあっちゃ面倒やからな、変なことはしないどこ。
少し音を立てて扉が閉められる。
「ふぅ。……血の匂いか。兎々、どうだ?」
『Sechsに狐々が見たところ書いてもらって、今は僕の音で聞き取れたところを書いてるよ。どうやらいろいろと仕掛けがあるみたいだね。』
兎々の言う「狐々」とは、黒いパーカーの彼、体を動かしている彼のことだ。彼は狐、つまり化けることが得意なのである。その気になればほかの人格のフリをすることも、完全に声を変えることも可能だ。
「仕掛け?まさか壁が動くとか言い出さへんよな?」
『それがそのまさかなんだよね。音の反響からはあり得ない場所を通って行ったよ。通る時だけ道が出来たような音だったから、良く忍者屋敷とかにある回転扉じゃないかな。まぁ、もしここがファンタジーの世界なら断定はできないけどね。』
「ファンタジーは流石に無いやろ。見たことある景色が一瞬見えた訳やから、魔法はないと思うで。あったら多分こんなに元の場所に似てへん。」
『で、でも、僕見ちゃったんです。さっき、ま、窓のそと、外で、明らかに浮い、浮いてる人を……。!
明らかに浮いとる奴?窓をスクリーン代わりにして写すとか、いや、それやとガチもんの幽霊みたいに透けるはずや。じゃあなんで……?
『そのあたりは一旦後にしよう。今はどうやってここを出るか、それが最優先じゃないかな?』
「そう、やな。うし、やるか!」




