Zwei 未来予知
『…………。』
女性は話しているようだが、全員何も聞こえていない。
『あ、藍華さーん?ど、どうされましたん?』
女性はびっくりしたような表情になるが、すぐに元に戻り声も聞こえるようになった。
『あ、あー。Vierの佐藤藍華と申します。年齢は大体十六歳くらいで、龍真さんと全く同じですわ。』
周りに花畑が見えるほど綺麗な笑みを浮かべてそういった藍華に、その場にいる全員が「ああ、やっぱりお嬢様だ」と思い直した。
藍華が紅茶を飲み始めると、隣に座っている目つきの悪い男性が話し出した。
『俺はFünfの佐藤龍真。年齢は藍華と同じだ。』
龍真はここに集まっている誰よりも背が高いようで、名前の通り龍のような威圧感がある。袖をまくった白いシャツに黒のスラックスを履いており、袖から見える腕はよく鍛え上げられている。
次に話し出したのはレモン色のロングブーツを履いた中性的な子だ。
『えっと、Sechsです。名前はまだないです。年齢は大体十歳くらいです。よろしくお願いします。』
ペコっとお辞儀をしてそう言った後、部屋の壁にあった水の膜のようなものの向こう側から怒声が聞こえてきた。その瞬間、仁井が部屋から消える。
『やっべ、今仁井が出たら終わるやんけ……!』
そう呟いて、黒いパーカーを着た男が半ば走るように水の膜に手から入っていく。すると、仁井が涙目で膜の前に出現した。そして外にいる彼は中にしか聞こえないように呟く。
「今日は多分、寝れへんな。」
それはつまり、いったん会議を中止するということ。藍華は車椅子を押し、龍真は仁井を抱きかかえて別室へと帰っていった。悠香は漸く目が覚めたようで、赤い帽子の彼女に話しかけている。今まで一言も発していなかった濃緑のヘッドホンの彼は、欠伸をして伸び上がった後キッチンに立ち料理を作り始めた。Sechsと黒いキャスケットを被った彼はその場に残り、外側の様子を見ていた。
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車が止まってる。ってことは着いたんか。さっきの怒声は歩かせるためやったんかな?ほんと危なかったわ……。
「おい、さっさと歩け。」
「……。」
勿論何も喋りませんね。こんな奴と話したくもあらへんわ。っとそれは置いとって、兎々はちゃんと聞いててくれとるかな?まぁあの有能な弟クンなら何も言わんくてもやってくれっか。
兎々とは、Sechsと共に景色を見ている黒いキャスケットの彼のことである。「聞く」というのは、彼の名前に兎と付いているだけあって耳が良いからである。彼の耳が音を拾えるのは兎と同じく約三キロメートル先までだが、彼が体を動かしていなくても聞こえるため、特に一日の殆どを体の操縦に費やす黒いパーカーの彼に重宝されているのである。さらに、兎々の耳は人間では聞こえない超音波や小さい音も聞くことが出来るため、視覚からの情報が完全に無くなろうともある程度の行動ができるのだ。
『この先に鍛えられた成人男性が五人、さっきのデブも居る。』
成程。ちゃんと見極めるまで何とも言えへんけど、俺の勘的にはここは最悪なとこやな。俺の後ろの奴が車降りるときにため息ついとったし、運転手は小刻みに震えとった。
ま、とりあえずは良い子のフリしましょうかね!トップとの謁見、乗り切ってやるわ!




