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アルバートは雇用契約書と言ったが、エミーリアにはどこをどう見ても婚姻届だった。


「あの、書類が違うのでは?」

「いえ、間違ってはおりません。あなたは名前を変える為にわたしと結婚しますから。そして、スプラルタ王国へ向かいます」

「えっ?」

「今日はよく驚いていらっしゃる。あなたのその表情は本当にお可愛らしい」

「あの、意地悪なお方、そんな冗談ではなく仕事のことを話していただけませんか?」



アルバートはエミーリアが婚約破棄された後、アルフレドの側近を辞めていた。スプラルタ王国にいる叔父夫婦の養子になることが決まった為と言い。

正確には随分前からアルバート達兄弟に、男児が生まれなかった叔父から養子縁組の打診があったのだが、そこは嘘も方便。スプラルタ王国が国力のある国なのも助かった。


「仕事の説明をする前に、事のあらましをお話ししましょう、エミーリア様」

アルバートが昔からエミーリアと話す時にだけ見せる砕けた表情。それに悪そうな笑みが加わると、何故かエミーリアは背中がゾクゾクした。



「わたしも溺愛を説明出来ない役立たずですと申し上げ、まずは殿下の側近を辞めてきました。あの文書を見る限り、溺愛が説明出来ない者はサポート役としては不十分ということですからね」

「まあ、アルバート様ったら」

「それに殿下の側近という立場はあなたの傍にいる為でした。肝心なあなたがいないのであれば、どうでもいいことです」

「えっ?」

「本当に可愛らしい。でも、それだけじゃありません、ずっとお慕いしていた理由は」

「あの」

「あれ、もう驚いてくれないのですか?」

「とんでもないことをお話しされているようで、もう理解が追いつきません」

「うーん、あなたは賢いはずなのに理解できないとは」



小さい頃から王城で暮らすエミーリアを、同じく小さい頃からアルフレドに仕える勉強の為に王城にやってきては見ていたアルバート。泣き言も言わず努力を続け、使用人達の立場を悪くしないよう気を遣う少女を知らず知らずのうちに目で追うようになっていた。


だから自分には大きな後ろ盾がない第二妃が、エミーリアを妬み悪意を向けていることにアルバートは早々に気付いたのだ。


お菓子を渡せば、いつもはガラス玉のような目が驚きで大きく見開かれる。

言葉を掛ければ、いつもはすましたような表情なのに少しだけ口角があがり嬉しそうにする。

わざと意地悪を言えば、小さく口を尖らせで恨めしそうな目を向けてくれる。


アルフレドと居る時のエミーリアではない表情がアルバートは好きだった。

心の中ではいつも、本当のエミーリアはこんなにも豊かな愛らしい表情を見せてくれるのにと思っていた。


だから、ある日どうしてエミーリアがこんな生活を強いられているのか疑問に思って調べたのだった、分かる限りのことを。

そして、知る。まだ十二歳だったアルバートには分からない部分も多々あったが、エミーリアは幸せではないということを。


その後数年でアルバートは全てを理解した。だから決めたのだ、どうせスペアの次男である自分ならば結婚せずにアルフレドの側近としてエミーリアを支え続けようと。

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