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<完結> 知らないことはお伝えできません  作者: 五十嵐 あお


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あなたが知らないあなたの母のこと Side story オスカー・イスカラング5

マクスウェルがスプラルタ王国に到着した翌日、歓迎晩餐会が催された。と言っても、通常の晩餐会とは異なり、まだ若いマクスウェルとその側近達へ配慮したものとなった。


招待された貴族は十代中頃から後半と次代を担う者とその両親。勿論婚約者であるイザベラもその中に含まれていた。


幼さが抜け始め男の子から男性へ変わろうとしているマクスウェルに対し、イザベラは十六歳とは思えないくらい大人の女性になっていた。二年前同様、イザベラへマクスウェルは負の感情を抱かずにはいられなかった。


十二歳の時はその感情を言葉に変えてぶつけたマクスウェル。しかし、二年の月日はどうやって相手の足元を見るのが効果的なのかという知恵を付けさせた。


だから一言、スプラルタ国王へ向けて言ったのだ。

「マロスレッド公爵令嬢よりも、あそこにいる者をわたしの婚約者に望みたい」


イザベラは資源への対価。その立場から引き摺り降ろされれば無価値となる。いつも無表情のイザベラでも流石にそれでは困ると取り乱すのではないかとマクスウェルは期待した。


衆人環視の中、イザベラはどういう行動をとるのだろう。マクスウェルに泣き縋るのか、取り乱して喚くのか。最終的には立場が上であるマクスウェルが婚約継続を慈悲として考えてやろうとでも言えばいい。但し、第一妃ではなく第二妃以降でと付け足して。


イザベラにはそれしか生きていく価値がないのだから。そうなる為だけに育てられたことをマクスウェルは祖父の側近だった者達から聞いている。鳥籠の中に入れられる未来しか持ち得ていなかった人形令嬢だと。


しかしマクスウェルの期待は裏切られた。イザベラは美しいカーテシーをしながら『殿下のお心のままに』と答えたのだ。スプラルタ王国の高位貴族達の前で、躊躇うことなく。


マクスウェルがしたかったのは婚約を白紙にすることではない。ただ、イザベラを貶めマクスウェルの気持ち次第でどうにでも出来るということを知らしめたかったのだ。結婚後、常にマクスウェルの顔色を窺い続け、萎縮するように。そうすることで、美しいイザベラを完全支配し優位に立ちたかったのだ。


しかし、イザベラは表情を変えることなくマクスウェルの意に従った。その行動はマクスウェルには驚きでしかなかっただろうが、一部始終を後に聞いたオスカーと侍女達はその場に居なくても手に取るように状況が窺えた。


イザベラは夫に従順になるよう躾けられていただけだ。崩御した以前の婚約者である前王に。皮肉にも、違う躾をしたかったマクスウェルは祖父の呪縛がどのようなものか知らずに挑んでしまっただけだった。


歓迎晩餐会の三日後、マクスウェルは新たな婚約をヘーゼルダイン侯爵家次女のローレルと結んだ。ローレルの目論見通りに事が進めば、侯爵家出身のローレルが公爵家出身のイザベラに悪意で満たされた生活を贈ることが出来たはずだったのに。

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― 新着の感想 ―
[一言] あー、辛い!! イザベラが可哀想すぎて辛い! 周囲の人はみんなその辛さに悶絶してたんだろうなぁ…。
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