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<完結> 知らないことはお伝えできません  作者: 五十嵐 あお


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あなたが知らないあなたの母のこと Side story オスカー・イスカラング4

新たな王は書簡の内容から、気に入られなければイザベラに未来がないことを悟った。しかし、前王とは異なり生憎『自分に都合の良い人形作り』の趣味はない。そこで取った手段が先送りだった。

尤もらしい言い方をするなら、未来に託す、だ。


「マロスレッド公爵令嬢、そなたと父との婚約は解消された。代わりに、余の息子と婚約してはどうだろうか。さすれば、今まで同様スプラルタ王国への資源の輸出量はそのままだ」


良く教育されていたイザベラは王の提案は即ち命令と、何の意見を言うことなく全てを粛々と受け入れた。何より己の役割を十分に理解している。イザベラは国王が欲する資源を輸入し続けられるようにする為の駒。それ以外になることはないのだ。



夫になる相手が変わるだけ。新たな婚約はたったそれだけのことだと調印式に臨んだその日、イザベラは新たな婚約者のマクスウェル第一王子から酷い言葉を浴びせられた。『こんな傲慢そうな女は嫌だ!』と。


イザベラはただ調印式に臨んだだけ。言葉も発しなければ、何をするわけでもない。ただ、調印される内容を静かに聞いていただけだった。十四歳にして己の背負う責務を理解し、大人びた表情で。


マクスウェルにはそれが傲慢に見えたのだ。否、違う。十二歳のマクスウェルが知るニコリともしない表情で凛とした姿勢を保つことに使う、大人っぽいと思える表現が『傲慢』だったのだ。


マクスウェルが騒いだところで、婚約は白紙撤回とはならない。国と国との取り決めなのだから。イザベラはどんな言葉を浴びせられようと、マクスウェルへ深々とお辞儀をし『これからよろしくお願いします』と言いその場を辞したのだった。



使節団の者達はイザベラが傲慢ではないことは理解している。十四歳のイザベラに十二歳のマクスウェル。このくらいの年齢の二歳差は大きい。しかも男と女では特にそれが現れる年頃だ。

突然美しいイザベラが大人びた表情で現れ婚約者だと言われた思春期のマクスウェル。調印式での暴言は仕方がないというのが、使節団の多くの者達が思ったことだった。

それに公爵令嬢と第一王子。イザベラは婚約者になったとはいえ、立場は遥かに王子の方が高い。ここは穏便にことを済ませたいと思う者達によりこの出来事は大事にはならなかった。


しかし中には何が起きたのか、公爵家の護衛騎士としてやってきていたオスカーや侍女に話す者がいた。


当然オスカーや侍女達は怒りで震えた。けれど、当の本人であるイザベラはいつものように凪いでいる。オスカーはその姿を見て理解したのだ。大きな波風が立てば立つほど、イザベラは凪ぐのだと。いつか思った十二歳でこうなるにはどんなことがあったのだろうかという疑問。答えはそれだけイザベラが怒りを乗り越えたということだろう。そして、その度に人間らしさを手放し人形に近づいたのだ。


オスカーが気付いたのはそこまで。調印式での様子に、マロスレッド公爵家とは相容れない勢力であるヘーゼルダイン侯爵家に連なる者達が何を考えたかなど見通せる筈がなかった。彼らが侯爵へ良い手土産が出来たと喜んでいたことなど。


受け取ったヘーゼルダイン侯爵はその手土産を喜び、更に良い物にする為加工し続けた。

そしてそれは成果を出す、婚約から二年経ちマクスウェルがスプラルタ王国にやって来た時に。

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