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<完結> 知らないことはお伝えできません  作者: 五十嵐 あお


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閑話 アルバートが知りたいマロスレッド公爵の真意

申し訳ございません。二話で終わらせるつもりが長くなり…三話になります。次こそ、マロスレッド公爵に話してもらう予定です。本当にごめんなさい。

アルバートがエミーリアを連れて向かう先をスプラルタ王国にしたとき、一番心配したのがマロスレッド公爵家だった。

しかし、その懸案事項を除けば、スプラルタ王国は好都合だった。


大国が故に他国から干渉を受けることもなければ、長距離移動の必要がなく向かえる国。しかも、アルバートを養子として迎え入れてくれる叔父夫婦がいるのだから、生活基盤を一から築く必要もない。


待ったなしの状況にアルバートは過去の事実から、最終的にスプラルタ王国を目指したのだった。

その事実とは、エミーリアが母方の親類縁者と一度も顔を合わせたことがないどころではなく、手紙の一通も受け取ったことがないというもの。

だからアルバートは、彼らがエミーリアに全く興味を持っていないと結論付けることにした。本当は、自分を納得させる為の詭弁だと、希望だと知りながら。


事実の裏に潜む思惑には白も黒もある。王城での日々はアルバートにそれを様々な例で教えてくれた。

興味が全くないが白ならば、気に掛けるが黒なのだろうか。大切だから敢えて近付かない。若しくは、何らかの理由で近付くことが出来なかったとも考えられる。


その答えを握るマロスレッド公爵家当主。

どんな答え合わせが待っていようと、アルバートがすることは一つだ。エミーリアを守る、ただそれだけ。


「ごめん」

「どうしたの、アル?」

「うん、ちょっと、お腹の中の子に」

「変なお父様ね、急に謝ったりして」

アルバートはエミーリアだけではなかったと反省し、お腹の中の子に謝ったのだった。ところがそんなアルバートに今度はエミーリアが謝った。


「ごめんなさい」

「エミーこそ、どうかした?急に謝って」

「マロスレッド公爵閣下が訪ねてくるのはわたしが原因。しかもお義父様達の話しぶりからは、理由は不明。こういう場合は大抵面倒なことが多いもの」


叔父夫婦はやはり甘かったとアルバートを思った。話の内容ではなく、その様子からエミーリアは様々なことを感じ取っている。エミーリアこそ王城育ち、機微に敏感でなければあそこでは生きられない。若くても経験だったら叔父夫婦には負けないだろう。


「アル、わたしは明日応接室に入った瞬間から数か月前のエミーリアに戻るわ。この伯爵家を守る為にも」

「では、エミーリア様、それに伴いわたしはあなたの従者にも下僕にも騎士にもなりましょう。ああ、でも、男なので侍女やメイドにはなれませんが」

「まあ、アルバート様、ご存知でしたか?あなたは、いつもわたくしの支えだったことを」

「意地悪な人ではなく?」

「…もう」

「エミーリア様、ですが約束して下さい。いつでもわたしはあなたの盾になります。だから、無理をする前に頼って下さい。そして、応接室を出たら、わたしの大切な可愛いエミーに戻って下さい」

「わたくしこそ、お願いします。どんな姿を見せたとしても、またあなたの妻として受け入れて下さい」


返事をする代わりに、アルバートはエミーリアの額に優しく口付けた。そして『あなたはわたしの愛するエミーです。それに、もう見ていない姿はないと思いますよ』と言い、包み込むように優しく抱きしめたのだった。二人で手に入れた幸せを逃がさないよう。


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「初めまして、マロスレッド公爵閣下。本日はご挨拶する機会を得られ大変光栄に存じます。叔父であるランスタル伯爵の元に養子として入ったアルバート・ランスタルと申します。こちらは母国から連れて参りました妻のエミーリアです」

「エミーリアと申します。お目にかかれて嬉しく存じます。公爵閣下におかれましては…」

「かしこまらなくていいよ。君達の邸なのに、わたしが言うのもおかしなことだがそこに腰掛けてくれ、エミーリア夫人は身重なのだろう」


叔父夫婦からの事前情報通り、公爵は全て知っている上でここにやって来たのだとアルバートは理解した。しかも、エミーリアの妊娠を先に言うということは『知っている』ということを隠すつもりはないということだ。

貴族らしい化かし合いをする気はないということだろう。到着を事前に告げる門番の報告では、公爵は家紋の入っていない馬車で、しかも少し先に停めてやって来たという。ここに来たことを他者に知られたくないのか、はたまたこちらに配慮したのか。

目の前にいる公爵からは全く何も感じ取れなかった。


エミーリアが推測したように公爵の訪問理由は不明。手紙に認めてこなかったのは、文字として残したくないか、書かなくても推し量れということだ。

緊張をおくびにも出さず、アルバートは公爵から発せられるだろう次の一言を待ったのだった。

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