夏祭りを楽しむものたち
千年程の昔、山奥のこの地に落ち武者とその家族らしい十数人の人が来て村を造った。
段々と人の数が増えてくると人は夏祭りを始める。
ピ〜ヒャラピ〜ヒャラトントンカッカッ
ピ〜ヒャラピ〜ヒャラトントンカッカッ
笛や太鼓の音に惹かれ元々この地に居着いていた我々物の怪や狢狸狐などの野生動物が集まり遠巻きに眺めていたら、それに気がついた村人たちが手招きしてくれ我々も夏祭りを村人と一緒に楽しんだ。
狢や狸や狐が尻尾をゆらしながら村人たち共に踊り、夜店の屋台の売り子の手伝いを行う。
提灯の合間合間で人魂が揺れ、宙に浮いた笛や太鼓がピ〜ヒャラピ〜ヒャラトントンカッカッと音を流す。
数百年の間村人と我々物の怪と狢や狸狐などの野生動物は共に夏祭りを開催し、祭りを楽しむ。
だが百年程前から村の若者たちが勉学や仕事で次々と村を離れ都会に行ってしまい、村に残るのは年寄りだけになってしまう。
それでも最初のうちは都会に出た若者たちが夏祭りを楽しみに帰省していたが、若者たちの子や孫の代になるとそれも無くなる。
過疎化が進み何時しか村は廃村になり、夏祭りを開催し楽しむのは我々物の怪と狢や狸や狐などの野生動物だけになってしまった。
人がいない夏祭りは寂しい、祭りに参加しない物の怪や野生動物も年々増える。
それが今、数十年ぶりに、我々物の怪と狢狸狐などの野生動物たちと共に多数の人が夏祭りを楽しんでいた。
去年、夏祭りを開催していた我々の下に趣味で山歩きを楽しんでいた男性が迷い込む。
山奥で道に迷い帰り道が分からなくなっていた男性は、廃村から聞こえてくるピ〜ヒャラピ〜ヒャラトントンカッカッという笛や太鼓の音に導かれて廃村にたどり着いたらしい。
我々は久し振りに祭りに参加してくれた人である男性をもてなし、翌朝彼を幹線道路まで送り届ける。
その事に感謝して彼は、ツイッターやユーチューブで廃村で行われている夏祭りの事を配信してくれた。
そのツイッターやユーチューブを見て、全国の祭り好きな人たちや村から出て行った若者たちの曾孫や玄孫などの子孫たちが集まって来てくれたのだ。
やっぱり祭りは、我々物の怪や狢狸狐などの野生動物だけで無く、人と共に笑い、語り合い、踊る方が数十倍数百倍楽しいな。
ピ〜ヒャラピ〜ヒャラトントンカッカッ
ピ〜ヒャラピ〜ヒャラトントンカッカッ