9.購入
お買い物ー!
翌日、九ノ池とルージェナは、
一緒に街中を歩いていた。
「国の使節として、行くことになるようですが、
商会ギルドか冒険者ギルドに
登録しておきましょう。
多分、何かと便利ですので」
とルージェナが説明をした。
「えっそれって、冒険者ランクとかあるやつ?
ランクで受けられる仕事が
違うとかSランクだと伝説級の
冒険者とか称されるやつでしょ!」
九之池が日本で仕入れていた知識を
ここぞとばかりに披露したが、
ルージェナの反応はいまいちであった。
「ランク?えっ?
そういう方法も便利そうですね。
仕事を受ける場合は、ギルドから
斡旋を受けて、そこの職員と話を
して決めているようですけど」
とルージェナが説明をした。
建物はそれなりに立派であった。
冒険者ギルドは、毎年、更新に銀貨5枚が
必要であった。
特に試験や聞き取り調査もなく、
拍子抜けした九ノ池は、一先ず、支度金を支払った。
その後、ギルドの決め事の説明を受けて、
カードを受け取った。
「なんか味気ないなぁ。現実はそんなもんかな」
と疲れたように呟くと、ルージェナが
「商会ギルドは、審査が厳しいのですけどね。
冒険者ギルドは基本、なんでもありですので、
緩いですよ。
カードに施されている魔術も単純なものですし」
と言った。
「ルーたんは、入会しなくてもいいの?」
他意はなく、九之池は、少し青白い顔で
のほほんと言った。
「えっ、私は無理ですというか、
名前を出しただけで、騒ぎになります」
と目を伏せて答えた。
しばしの沈黙の後、
事情を察した九之池は真っ青になって
「あっ、ごめんなさい」
と答えた。
「それより、九之池さんは、野営や野外活動などを
したことがあるのですか?」
「いや、アウトドアは嫌いだったので、
全く経験ないですよ。インドア派だったので」
と九ノ池は顔面蒼白になって答えた。
そして、ルージェナの両肩を掴み、
「すみません、足が限界です。
少し座ってもいいですか?」
九之池の足はぷるぷると震えていた。
「ちょっと、真っ青をですよ。
とりあえず、木陰で靴を脱ぎましょう」
ルージェナは肩を貸して、木陰に向かった。
九之池の足は、かなりむくんで、
足の指には大きなまめがいくつも出来ていた。
固い革と固い靴底が合わなかったのだろう。
召喚直後に着ていた衣類はすべて、大公に
献上されていて、九之池の服装は、
町人のそれと変わりない服装であった。
「うーん、靴は遠征用の物で
作りが頑丈で良いものぽいし、
サイズもあってそうだけど、
なんでこんなことになったんだろ?」
ルージェナは不思議そうに靴を眺めていた。
「いやいや、ルーたん。それはないっしょ。
ちょっとこの靴無理。
今日は結構、歩いているしね。
前のぼろい靴の方がましかな。
これじゃあ、今日は歩けないよう。
シリア邸から誰か呼んで来て貰おうよ」
と九之池。
「えっと、少しなら怪我の回復を
出来ますので、合う靴を探してみませんか?」
と言って、九之池の足に右手を触れて、
ルージェナが何かを唱えた。
九之池は痛みとむくみがひき、幾分、
楽になったため、歩く気になった。
「古着屋でいろいろと探してみようか。
とりあえず、それまでこの忌まわしい靴で
我慢するかな」
と言って、古着屋に向かった。
古着屋には、服だけでなく、服飾品、
日用雑貨といったさまざまな物が売られていた。
九之池は、靴の山をあさり、サイズは若干、
大きいが、非常にブーツに近い形状のものを
手に取った。
九之池が容易にこれを引き当てたのは、
多分、染みついた臭いかこの革が元々
持っている臭いのためだろう。
異臭ではないが、独特の臭いがした。
「九ノ池さん、それにするんですか?
臭いは別として、非常に珍しい作りですね。
初めてみます」
「ルーたんが知らないのかー。
なら、多分、昔の召喚者が多分、作ったのかな。
履き心地も悪くないし。
臭いは何とかならないものかな?」
とガラの悪そうな店員に恐る恐る尋ねた。
「ふん、誰かが使っていたもんだぞ、
臭いなんて気にしてたら、使えねよ」
とイキって答える店員。
九之池は無言で、この靴を店員に近づけた。
「ぐっ、ってかおまえ、これを買うのか?」
と店員は言ったが、九之池は無言でうなずき、
店員をひるませた。
「そこの香水を振りかければ、
多少はましになるだろうよ。
それも一緒に買ってけ。
なんだって、こんなもんが混ざってんだ」
と愚痴りながら、代金を受け取った。
臭いより、履き心地を優先!




