1.召喚成功
2章開始ー
ベルトゥル公国の5代目ワリド・ベルトゥル大公は、
召喚の儀の報告を心待ちにしていた。
大国に囲まれて、様々な圧迫を受けながらも
魔核を集め、自然の魔素を数十年に渡り、
注いだ集大成が目前に迫っていた。
「報告は、まだか?」
大公は、先ほどから、何度も側近へ尋ねた。
大公の間に姿が現れぬ以上、
返ってくる答えは同じであったが、
それでも同じことを尋ねていた。
ベルトゥル公国で用意した召喚の間で、
複数の魔導士が何かを呟いていた。
大国では、ルーティン化されている
儀式であるが、この国では初の試みであり、
伝聞や書物、招聘した魔導士の指導にて
行われていた。
どの国にとっても秘中の秘であり、
儀式のプロセスが正しいか公国には判らなかった。
「今回は失敗ですかね。
一旦、方策を検討しますか?」
一人の魔導士がリーダーらしき人物に問うた。
「最後にあれを試す。
召喚者が我々の若干、
意に沿った人物でなくてもよい」
と言って、人の魔力を集めた魔核の力を開放して、
召喚の肝となる魔核にその力を注ぎ込んだ。
何人かの魔導士がそれを止めようとしたが、
結果、遅く、全ての魔核が砂のように粉々になった。
そこにいたメンバーは、全員がフリーズし、
真っ青になっていた。
一瞬にして、公国の数十年の努力が
粉々になったためだ。
あんまりな結果に茫然自失となり、
ふらふらと砂の山に近づくリーダーらしき人物が
何かいてくれと祈りながら、その山をかき分けた。
その山から人の腕らしきものが
ゆっくりと出てきた。
その状況を見て、魔導士たちが一斉に近づき、
山をかき分けると、1人の男がいた。
「成功だ!成功だ、、、召喚者だ」
と狂ったように魔導士たちが喚いていた。
興奮が収まると、1人の魔導士が意識のない
召喚者の首に首輪のようなものを巻き付けた。
大公の間にて、召喚者と対面した大公は、
「こっこれは、黒髪に黒い瞳。
かの老公や獣を討伐した勇者と
同じ召喚者ではないか!でかした」
大公は、召喚者を見て、興奮し、話した。
「この者は、意識が戻っておるのか?」
続けて、大公が尋ねた。
1人の魔導士が何かを唱えると、その召喚者は、
「うっ、おあ、ごぶっ」
と意味のない言葉を吐き出しつつ、
意識を取り戻した。
召喚者は、混乱しているのかこの場から、
逃走しようと試みたが、リーダーらしき魔導士が
何かを唱えると、ぎょあっと
叫んだあと、昏倒した。
「よい、落ち着いたころに改めて会おうぞ。
この地に慣れるようサンドリーヌ卿が面倒をみよ。
封環の首輪は、サンドリーヌ卿に引き継いでおけ。
よいなシリア卿」
と大公は、魔導士のリーダーらしき男に伝えた。
「はっ、仰せのままに」
とシリア卿は慇懃に答えた。
「頼むから、余計な効果は
付与しないでくださいよ」
と真摯な表情でサンドリーヌ卿が伝えた。
シリア卿はにやりと笑い、軽く頷いた。
主人公はまだー




