5.森の獣外伝 メープル司祭の奮闘記。ああっ、早く帰りたい。新しい任務
メープルさん、大活躍!
メープルは、彼らが去ると、
まず、神官戦士たちを起こした。
そして、気絶している召喚者を担いでもらい、
ルナリオンの元へ戻った。
「その者が召喚者だな、メープル」
とルナリオンは尋ねた。
「はっ、間違いありません。
ただし、まっとうな方法での召喚とは異なります」
とメープルは手短に答えた。
「老公や稲生といった召喚者と同じかな。
この男が特別な力に恵まれているようには思えんな」
とルナリオンは呟いた。
「確かにアルベリク侯爵や導師も
そのようにお考えであったようです。
そのためかあっさりと引き下がってくれました」
とメープルはルナリオンの意見を肯定した。
「さてと、この坊やは、ひとまず、
ベッドに寝て貰うかな。
メープル、右腕の制御は、
どうだ?上手くいきそうか?」
とルナリオン話題を転じた。
メープルは先ほどの導師の件を説明し、
制御するにはまだまだ、訓練が必要なことを
説明した。
そしてその訓練をバルザースでなく、
キリアで行いたいことを伝えた。
「それは、駄目だろう。
その状態では旅路に
つくことはできまいし、
そのための人員を割く余裕もない。
その腕を自由に使いこなせれば、
1人での旅もできようぞ。それまで待て。
稲生は、元の世界への帰還は出来ぬよ。
かの老公ですら、見つけられなかったのだぞ」
と諭すようにルナリオンは話した。
しかし、稲生の側に纏わりつく悪女に
ついて悪し様に話、メープルは尚も食い下がった。
その話を聞き、ルナリオンはため息を
ついて、命じた。
「バルザース帝国アンカシオン教、
教区長として、メープル司祭に命じる。
ひとつ、右腕を自由に制御できるまで、
バルザース帝国にて、布教活動に従事すること。
ひとつ、保護した召喚者にこの世界の理を
教示し、生きる術を模索させること。以上」
「ううっ、はっ、謹んでお請けいたします」
涙目のメープル。
「メープル、冷静になれ。
保護した召喚者を助け、自立させることも
教義上、重要なことだし、今の君では、
稲生の足手纏いでしかない。
右腕が自由になれば、彼の力になろうぞ。
よいな」
とルナリオンは諭した。
メープルは自室に戻り、自分の意思と関係なく、
妙な動きをする右腕を恨みがましく見つめて、一言。
「どうしてこうなった」
後の世に「光銀の右腕を持つ大司教」
と謳われるメープルの最初の試練であった。
後の世に伝わる話は脚色されているもの!
メープルさんの物語も後世では、かなり違ったものになっているかも




