5.裸族の男
裸なのだー
「んんっーなぜ裸だ!この屑召喚者が。
もうやだ、こんなはずれの面倒みるの」
ドアを開けて、召喚者のいる部屋に入ると
開口一番、紺のフードを着た女性は叫んだ。
「あのすみませんが、召喚者とは僕のことですか?
何か着る服を貸して頂けませんか?
それと、入室前にノックして頂けると助かります」
素っ裸のままで、落ち着いて、そう話すと、
その女性は、真っ赤になって返してきた。
「この変態がぁ。貴様の性癖なのか
文化なのかわからぬが、その粗品をひとまず、隠せ。
今、ローブを取ってくる」
女性は、部屋を慌ただしく出ていった。
多分、ローブを取りに行ってくれたのだろう。
生存本能に呼応して、そそり立つものに
汗で湿ったシャツをかけて、彼女の戻りを待つ。
しばらくすると、紺のフードを着た女性は、
ローブを持って部屋に戻り、
召喚者の腰のあたりのシャツの膨らみを
一瞥して、それを召喚者に渡した。
「とりあえず、名前はなんという?
召喚審問では聞いていなかったので。
あと、身体の調子はどうだ?
あの怪我では、しばらく動けないと思っていたが、
随分と回復していないか?」
「まず、断っておきますが、素っ裸を女性に
見せるのは文化でも性癖でもないので。
部屋に入る前にノックをしたほうがいいですよ。
名前は、稲生 竜矢。
体の調子は歩けるくらいには、良さそうです。
お名前をお伺いしても?」
ローブを羽織りつつ竜矢は答えた。
「ふむふむ、回復力が若干、早いくらいか。まあ、いいや。
稲生のほうが呼びやすいな。
ここでは、稲生と呼ぶようにするかな。
私は、ヤンデルフォン・リン。
どのくらいの付き合いになるかわからないが、
リンと呼んでくれ。
色々と問題が起きているから、
しばらくこの地を離れる予定だ。
ここの守備隊主任が君の面倒をみるだろう。
聞きたいことは、彼から聞いてくれ。
それと先ほどは、屑呼ばわりしてすまん。
変態に関してはあやまらんけど」
言いたいことだけ、言い残すと、リンは、部屋を後にした。
残された稲生は、自分のいた社会で
照らし合わせて考えると、彼女は、これから先ほどの
戦いの報告に向かうのだろうと判断した。
先ほど考えていた項目の大半は、回答を
得ることができたが、5項に関しては、いずれ、
落ち着いてからにするかと思いつつ、眠りについた。
稲生さん、寝るときは裸かも