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26. 光銀のざわめき1(才籐)

寝苦しい夜

バリオス領に到着して、数日、才籐は

寝苦しい日々を過ごしていた。

布団やベッドが固いのはいつもの事であり、

それに関して才籐は既に慣れていた。

さりとて蒸し暑い訳でもなかった。

才籐は深夜に左脚が蠢くように感じて、

目を覚ました。ここ数日、偶にあることだった。

目覚めた才籐はほっと一息ついた。

夢の中でジャバルが左脚に頬を

擦り合わせていたためだった。


暗闇の中で才籐は上半身だけ起き上がり、

光銀に目を向けた。

星空から降り注ぐ微かな光が光銀を映し出していた。

気のせいか揺ら揺らと蠢いているように見えた。

「ふう、光の屈折のせいかな」

才籐はあまり気に留めずに再び、眠りに落ちた。


 同じ頃、メープルもまた目を覚ましていた。

右腕の光銀が何かに引っ張られるような違和感があり、

それによりメープルは目を覚ました。

目覚めて、メープルの意識がはっきりすると、

その違和感は消えてしまった。

光銀が自らの意思で動くことなど、

接続した最初の頃だけであった。

今のメープルは光銀の右腕をほぼ完璧に

使いこなしていた。

メープルの知らない機能が稼働したのかもしれなかった。

メープルには思い当たる節がもう一つあった。

「まさかね。光銀が共鳴したのかしら」


光銀の各部位が共鳴するのは頭部のみであった。

メープルは自分の想像にかぶりを振った。

光銀の頭部を接続することが意味すること、

それは頭部を挿げ替えることであった。

もはやそれは、欠損部を補うといった話ではなかった。

メープルは布団を頭から被り、再び、眠りについた。


「なあ、司祭。どうもざわめかないか?

なんかこう光銀を接続した時のように

勝手に蠢くっていうかなんか違和感があるんだよな」

メープルは軽く頷いた。それはメープルも感じていた。

魔術という呼称ではないが、魔力を用いて

回復術を使うメープルはより鮮明にそれを感じていた。

バリオス領の教区長ジャバルが光銀に関して

何かを隠しているとメープルは推測していた。

教区長まで上り詰めた男である。

変態ではあるが、容易に尻尾を

掴ませるようなへまはしないであろうことを

メープルは分かっていた。

そもそも旅の主目的は、もどきたちの探索であり、

ルナリオンの趣味である光銀はあくまでもおまけであった。


「バリオス領でのもどきの情報収集を

まず第一としましょう。

光銀のざわめきも気になりますが、

それは後回しとします」


「へいへい、そういたしましょう」

 あまり主体性を感じさせない才籐の答えであった。


「目的はそれでいいとして、司祭さんよ、

何かあてはあるのか?

闇雲に動いても徒労に終わるだろ」

イラーリオの言い分も最もであった。

聞き込みという地道な行動が実を結びやすかったが、

バリオス領全域となると、3人ではいくら時間が

あっても足りなかった。


「もどきに関しては、ジャバル司祭の協力を

得ることは可能でしょう。それと、ふーむ」

メープルが大きくため息をついたが、

意を決して話を続けた。


「あまり気が進みませんが、

私の実家に助力を頼みましょう。

このような辺境で時間を

潰している訳にはいきません。

そうしている間にもあの女狐めが

稲生様を誑かしているはずで」


いやいや、誑かしているのは、

あんたでしょうがと才籐は言いたかったが、

その結果で自分に降り掛かる不幸を考えると

到底、言えたものでなくだんまりを決め込んだ。

それはイラーリオも同様であった。


蚊がブーンブーンと飛んでるからなのか!

それとも本当に、、、

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