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16. 王都の自宅にて2(稲生)

待ったり不定期連載です。

「正直に話すならまだしも

まさか誤魔化そうとするとは思わなかったわ。

アルバンが言ってなかった?

彼の目を通して、あなたを見ていると?」


確かにアルバンはそう言っていたが、

まさか稲生は、本当だとは思いもよらなかった。


「リン、話を聞いてください。

情報や伝手を得るには必要なことだったのです」

稲生はこの異世界で無一文で放り出されるのも

恐ろしかったが、やはり子供二人が可愛かった。

稲生の必死の思いが伝わったのか、

リンは黙ってしまった。

恐らく心の整理をつけているのだろうと

甘い考えが稲生に過った瞬間、稲生は叫びを上げて、

九之池のように床を転げ回った。


稲生は、はじめて、矯正力という拘束魔術をうけた。

凄まじい苦痛を全身から感じた。


「少し私が甘かったのかな。

稲生、あんまり不貞が過ぎると

次は廃人になって彷徨うことになるかもね。

アルバン、稲生を治療してあげて」


床に転がり、いまだに呼吸が乱れている稲生を

アルバンが抱えて、部屋を退室した。


窓のからの陽を受けて眩しそうにするリンは、

左手で陽を遮りながら、面白くなさそうに呟いた。

「ついに見つけた。まずは1人目だね、メリアムさん」


苦しむ稲生を別室に運び、アルバンは介抱した。

「稲生様、大丈夫でしょうか?」


「いや、九之池さんが拘束魔術の戒めを

受けているのを見ていましたが、

これほどまでとは思いませんでしたよ」


「それはそうです。

ベルトゥル公国のシリア卿とは

リン様は、魔術師としての格が違いますので」

アルバンは、改めて認識の甘い稲生へ

リンの魔術師としての実力をくどくど

と説明した。


「稲生様、リン様は本気のようでしたが、

本当にお別れをするのでしょうか?

あのように真剣な表情は初めて

お見受けいたしましたが」

アルバンは探りを入れる様に稲生へ尋ねた。


身体中の痛みをいまだに感じながら、

稲生はそのことについて、思考した。

バルザース帝国の内情をより知るためとは言え、

不貞の行為は許さざることであった。

そして、まずそれをリンへ密告した者を睨みつけた。


アルバンは稲生の視線を感じ、

その意味することを十分に理解した。

けっ、自分の劣情に正直に動いた自分が悪い癖に

とんでもないやつだとアルバンは思ったが、口にしたのは

別のことであった。


「稲生様、そのような視線で睨まれましても。

私はお伝えしましたよね、リン様の付与魔術が

目に施されていることを」


付与魔術に長けた紺の魔術連盟。

付与魔術ではあの妖精もどきを倒すことはできないはず。

メリアムの精霊魔法でも決定打にかけるはず。

何か打倒できる有効な方法をリンは見つけたのだろうか。

そのために自分を危険から引き離そうとしているのか、

もしくは引き離した上でもどきを引き寄せる餌に

しようとしているのだろうか。

早晩、もどきの件でメリアムがリンに

接触することは容易に予想できた。

稲生はそれまで少しリンから距離を置いて

過ごすことにした。

しばらくすれば、リンの悋気もおさまるだろうと

都合の良いことを考えつつ、アルバンに下がるように伝えた。


稲生は、身体を休めるため、一休みすることにした。


稲生さん、自業自得です!


適当な理由をつけても駄目です。

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