16. 王朝の自宅にて(稲生)
久々に更新!
キリア王朝の王都にて、稲生はリンの体調を気遣い、
常に傍にいた。
二人の子供たちの世話をしながら、
穏やかな日々を過ごした。
九之池と共に向かった遺跡で得た物は、
どうやら骨董品としての価値しかないようで、
好事家をワイルド将軍に紹介して貰い、
大半を売り払ってしまった。
「稲生、意外と高く売り払えたね。うーん、謎だ」
ベッドから身体を起こして、
うーんうーんと唸るリンだった。
やせ細った身体は徐々に回復に向かっており、
血色も良くなってきていた。
「それはですね、トーク技術ですよ。
まあ、実際の所は、たまたま、
上手くいっただけでしょうね」
流石に前世界での営業経験が
活きたとは稲生は思わなかった。
「そう言えば、営業がどうこうと
昔、話してくれたな。
それより、稲生、赤子くらいの
羽根の生えた妖精にあったのだな。
それは確かなんだな」
稲生はまだ、この件でリンを刺激したくなかった。
あまり話したくなかったが、リンの視線がそれを許さなかった。
「ええ、そうですね。
九之池さんや才籐さんが話してくれたモノと
ほぼ一致していました」
「アデリナも一緒だったんだよね」
稲生は即座に答えた。
「何の関係も結んでいません」
「即座に答えるところが怪しい」
リンがじっーと見つめる。
稲生は別件でやましいことがあり、
その視線から逃れたかった。
「ぷっ、アデリナに限ってないでしょ。
あの性悪女とは違うから。
知りたいのはアデリナの実力でそのもどきに
傷を負わすことができたかどうかなの」
稲生は性悪女が誰を指しているか、
瞬時に判断できた。
そして、その話題に深く関わることを
避けたかったがために普段より饒舌に話した。
リンはふむふむと形の良い顎に手を当てて、
稲生の話を聞いていた。
後方で待機していたアルバンは、
稲生がリンの策に嵌ったことを確信していた。
この後に起こる惨劇のとばっちりを避けたいがために、
この場から去りたい、去りたいと思うが、
何故か身体が重く脚は床と同化したかのように
その場から、動かなかった。
「やはり、メリアムさん一人では倒せそうにないよね」
リンが饒舌な稲生の話にうまい具合に合いの手をいれる。
「そうです。おそらくメリアムさんの攻撃手段では、
傷を付けるのが精一杯というところでしょう」
「そうそう、メープルとは寝たの?」
「ええ」
絶妙なリンの切り替えしとタイミングに稲生は、
自然に答えてしまった。
あわてて、取り繕う稲生だったが、
焦りで上手く言葉が出てこなかった。
「いや、ええ、寝ていません」
「そう、子供は二人とも私が育てるわ。
骨董品を売り払ったお金は無論、頂くわ」
窓より射しこむ光は室内を明るく照らしていた。
しかし、稲生にはリンの顔が良く見えなかった。
稲生さん、、、悪行はいずれバレます!