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4. 対話(稲生)

旅再開!

稲生たちは、旅を再開した。

馬に騎乗して走り始めると、

並走するアデリナに稲生は話かけた。


「そう言えば、アデリナさんは、

メリアムさんと知り合いなのですか?」


「まあな、お互いに分野は違えど、

国の中枢に関わっている頃にな。

メリアムの場合は、そこから離れて久しいが、

その後もそれなりの付き合いはあった」


恐らくメリアムが老公の元で研究やら

開発に従事していた頃に接点をもったのだろう。

稲生の前世界でのイメージは、

エルフと黒エルフ、お互いに相容れない

いがみ合う関係であったが、

どうやらこの世界では違うようだった。

それともメリアムとアデリナが

特別なのだろうか、稲生には判断つかなかった。


「おいおい、稲生。

そのエルフに関する関係性をおまえが

どうしてそう思っているか分からない。

それについては、なんとも言えんが、

この世界では、少なくとも憎み合う関係ではないぞ。

しかも戦になるにはお互いの拠点が離れすぎている。

せいぜいあるとしても個人の間で

諍いが生じるくらいじゃないかな。

それも相容れぬ関係というより、

お互いの利害対立や主張の相違とかが原因だろうな」


「はっはあ、そうなんですね」

種族による諍いが無いのは良いことだと、

稲生も理解している反面、どうも釈然としなかった。

学生の頃に刷り込まれたファンタジーの定説を

否定されていることが原因であった。


稲生は、続けて妖精もどきについて

アデリナに尋ねた。


「さあな。詳しいことは知らぬ。

老公の元に集いし、技術集団のうちの

1人としか聞いておらぬ。

そもそもあのもどきがかつて、

キリアにちょっかいを出してきたときに

会敵したのが最初だしな。

その後、メリアムから話を聞いたんだよ。

元々は可憐な妖精だったそうだ。

リンが老公の元に引き取られて来た頃には、

既に老公の元から去っていたようだな」


稲生は幾つかもどきについて、

質問を重ねた。

しかし、アデリナは、知らぬとしか言わず、

最後に癇癪を起し、メリアムに聞けと怒鳴りつけた。


 すぐさま稲生は頭を下げて、非礼を詫びると、

最後に戦いのさなかに言っていた細剣について尋ねた。


「ふん、神々がこの地を去る時、

大地に縛られし弱き者たちを憐れんで

残していったとされる伝承の兵器に

優劣をつけるなど馬鹿らしいと思うだろう。

だが確かに聴いたんだよ、私は!

この細剣の声を思いを。

他の神像兵器より低く見られることが

口惜しいとな。

この細剣に私が助けられた恩は

最強の名がこの剣に贈られたとき、

初めて返せると思った。

幸いなことに人と違い、悠久の時が私にはある。

その時をかけて、その名を得る。笑うか?」


神像兵器という特別な武器のせいか、

中二病を酷く拗らせているのかと思いきや、

真剣な表情と言葉に稲生は圧倒されてしまい、

何も言えず、ただ首を左右に振るだけであった。

 キリア王朝の神像兵器で唯一、変わらぬ担い手。

その年月を思うと中二病などと言う言葉ではなく、

囚われているとしか稲生には表現のしようがなかった。

そんな稲生の胸中を知ってか知らずか、

アデリナは続けた。

「ふん、本人が納得していれば、

他人がとやかく口を挟むことはないであろうよ。

ましてや子供ではないのなら、なおさらだろう。

まっ、短き人生の人はそうもいかぬかもしれないがな」


稲生はそうですねとしか答えられず、

それを見たアデリナは、もう話は終わりだと

言わんばかりに馬を走らせる速度を上げた。

一台の馬車と馬は、時節吹く心地よい風を受けながら、

王都を目指して、走った。


稲生さん、何気に馬に乗るのが上達してます!

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