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3. 対峙2(稲生)

もどき強し!

「この男と話をしたいのだろう。

さっさとすませばいいだろう」


「ぷぷっ、必殺が不可能なら、そうだろうねぇ。

唯一、変わらずの柱石、変わらずの担い手、

用心深いよね。まあ、いいや。

それより、稲生君、喜んで!

君も選ばれたお。

なので、その素体を傷つけないようにしてね。

リンにもこの話を聞けば、泣いて喜ぶからさ」


無邪気に喜ぶもどきであるが、

稲生にはなんのことか皆目見当がつかず、

話の続きをまった。


「君のような弱っちい奴を予備に

ストックするのは、残念なことだけど

仕方なくね。

バルザースの予備が欠損品になっちゃったからさ。

アレはアレであの技術の結末を見たいけどね。

まー第一候補は、九之池ちゃんだけどね」


「一体、何のことか分からないですが、

あまり面白い話ではなさそうですね」

土の人形を前に稲生は、ぽつりと呟いた。


「まーあくまで予備だからさ。

でも君に何かあれば、君の息子や娘が

予備になるからさ。

リンもいい仕事してくれたね」


ニマニマしながら、話すもどきだったが、

その話を聞いた瞬間、稲生の表情が険しくなった。


「妻や子供たちに手を出すな」


幾つかの魔晶を稲生は土人形たちに放り投げた。

暴風が襲い、人形たちが跡形もなく破壊されていた。


「ぷぅーくくっ。

よくもうまあ、リン以外の女と

まぐわっている癖にどの口で

そんなこと言うかなぁ。

特にバルザースの司祭様とは

お楽しみのようだけど」


「貴様はここでコロス」


剣を握り、もどきに突っ込む稲生であった。

アルバンは、剣から、弓に切り替え、弦を絞っていた。


「リンは僕たちにとっても

姪っ子ちゃんのようなもんだしねぇ。

君を殺して、悲しませるのもねえ。

それに何よりも大事な予備だしさ。

ここは、退いて貰えると助かるけど」

アルバンより放たれた矢は、

もどきに命中したが、全く傷を

負わせていなかった。


アデリナから、ナイフが数本、放たれた。

命中するが、全く傷を負っていなかった。

無論、稲生にもその状況が目に入っていたが、

彼は止まらずにもどきに向かって突進した。


「ふううぅ、勇気と無謀を

はき違えないで欲しいな。少しお仕置きだー」


稲生はそのまま、手にしていた剣を

もどきに向かって投擲した。

そして、続けざまに腰に下げていた袋を

放り投げた。


「ちいいぃ」

先ほどの魔晶の力を見ているせいか、

もどきは急速に上昇した。

放たれた袋は、木にぶつかると、

魔石を地面にちりばめ、紫色の煙を吐き出し、

瞬時に辺り一面を支配した。


「うえぇえぇえぇ、気持ち悪い。

なんなんこの煙。ぬるぬるするよう。

もういいや、稲生君、その日が来るまで

その身体を大切に扱ってね。

じゃあねぇー」


煙が消える頃には、妖精もどきは消え去っていた。


「ふむ、流石はリンの用意したもの

と言うべきか。

ところであの煙は、何の効果があるんだ?

リンのことだ、不快になる効果だけでは

ないのだろう」

旅を再開するとアデリナが稲生に尋ねた。


「まあ、そうですけど、碌でもない効果ですから。

もし、私が殺されたら、あれが発動します。

あの煙が殺した者か傍にいた者に付着して、

その行方を追うことができるんですよ。

要は復讐のためですよ。

一か八かで思いっきり叩きつければ

発動するかもしれないと思いまして、

投げつけてみました。まあ、上手くいったようです。

これであの妖精のような者の行方は追えますから」


淡々と説明をする稲生。


「で、それをメリアムに伝えるのか?」


淡々と尋ねるアデリナ。


「それは妻と相談します」


「そうだな、それがいいだろう。

どこを彷徨っているかわからぬが、

メリアムでは、あれは倒せぬからな」


稲生は、頷き、妖精もどきが

消え行った先を無言で見つめていた。


稲生さん、知恵で立ち回る。勇気は無さそうです。

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