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4.お屋敷内覧

うっきうっきーの九之池さん

フォーダムは、幾つかの物件情報を

九之池に伝えた。


「んんん?何でか一つだけ微妙に

安いのがあるけど?」

九之池は、屋敷の大きさと価格の安さで、

その物件に喰いついた。

ルージェナの方は、幾つかの物件に

関しての資料に目を通していた。


「師匠、その物件はあまりお薦めできません。

いわくつきの物件です。

お屋敷の方々がそこでお亡くなりに

なっていますので、それに失礼を

承知で言わせて頂きますと、貴族になりたてで、

そこに住むのは無用の誤解を

受けるやもしれません」

フォーダムはあまり勧める気のない表情で

九之池に伝えた。


「うーんうーん、でも安いじゃん。

それに紹介すると言うことは、

一応、候補ってことでしょ」


「いえまあ、どこの仲介業者でも扱いに

困っていますので、一応、お客様に

お見せするように通達が組合から、

来ているのです」


「よしっ!ルージェナ、ここに行ってみよう。

安いし、この広さなら、素材の置き場に困らないし」


真剣に物件を比較していたルージェナは、

九之池の言葉に引き戻された。

「九之池さんがそう言うのでしたら、

行ってみましょう。

フォーダムさん、そこの内覧は可能ですか?」


「ええ、直ぐに馬車を回しますので、しばしお待ちを」


「九之池さん、そこはどういったお屋敷なんですか?」


「さあ、安いし、他より広い。

あとは行ってみてからでいいんじゃない?

百聞は一見に如かずさ。

余計な情報に惑わされずにありのままを見てみよう」


毎度のことであるが、中々、九之池の発想に慣れず、

頭を抱えるルージェナだった。


貴族の邸宅が並ぶ一等地を馬車が進んでいた。

フォーダムがこの地区について、説明をしていたが、

九之池は、ルージェナの沈んだ様子が気になり、

上の空だった。


馬車は、広大な敷地を有し、閑静な邸宅の

並んでいる中、手入れがされていないか、

鬱蒼とした雰囲気を醸し出す邸宅の前で停止した。


「師匠、ここになります。

少し前、ベルトゥル公に反逆を企てた大罪人たちが

住んでした屋敷です。

無論、ここに住まう反逆者たちは、ここで処罰されました」


馬車を降りたルージェナは、顔面蒼白であった。

ふらふらして、今にも倒れそうだった。

そんなルージェナの様子を気にしたふうもなく、

フォーダムは話を続けた。


「反乱の企てを阻止した方々の褒賞として、

ベルトゥル公より下賜されたお方が

不吉なものとして、転売すると、持ち主を転々として、

今に至ります。

貴族の方々は、いわくつきの屋敷に住んで、

痛くもない腹を探られるのを好みませんからね。

私も個人的には、お薦めしません」


九之池は、話を遮る訳でもなく、

ハラハラとルージェナを見ていた。

ルージェナの今の心情を思うと、

何とかしないと、思いつつもどうしていいか

分からなかった。


九之池は、必要のないプレッシャーを感じて、

発汗し、震え出していた。

そんな九之池の状況がルージェナの目に入ったのか、

話し掛けた。

「九之池さん、大丈夫です。内覧されるのなら、

あまりフォーダムさんを待たせては」

この人は、いつもそうだ。

どうしようもなく卑屈で卑怯だけど、

困った人を助けたいと思う気持ちはあるけど、

どうしていいかわからず、おどおどするだけだ。

色んな経験をしていけば、

いつかその思いが生じたとき、

行動に移せるようになるだろう。

今は、彼を困らせているだけだと

ルージェナは思い、笑いかけた。


「ごっごめんなさ、ルージェナ。

こんなとき、どうしていいかわからない」

ルージェナを見ないようにして、

それだけ言うと、トボトボと背中を丸めて、

フォーダムの後に続き、邸宅の内覧に向かった。


なんとも九之池さんだ!

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