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103.諸国の事情1

三章もあとわずか!

バルザース帝国帝都には、敗北に等しい損害を

被ったアルフレード皇子の軍が到着していた。

軍の様相は、敗軍が撤退してきたようであった。

国境線にて、レズェエフ王国軍より

城を取り戻して撃退したとはいえ、

軍の被った損害はレズェエフ王国軍を

上回っていた。

よく言って、痛み分けと見るのが

妥当なところであった。


その行軍の中に馬上から、陽光を鮮やかに

反射させている左脚が帝都の住民の目をひいた。

時節、妙な挙動をする点が住民の笑いを誘っていた。


注目を集めると男は、中々、言うことを

聞かない左脚を軽く叩くと、呟いた。

「ったく見世物じゃねーぞ、俺は!」


「才籐、しゃきとしなさい。

そのような不貞腐れた態度では、

アンカシオン教の象徴として困ります」

後方から、豊かな胸を馬上で揺らしながら、

叱責をその男に飛ばした。


「司祭、そうは言うけど、命を張って来たのに

流石に進むところ、笑いがあれば、

どうにも不貞腐れるだろう」

才籐の表情は優れなかった。


「この軍の様を見れば、住民は不安に思うでしょう。

一時的に人々に笑いが戻るなら、良しとしなさい」

メープルも才籐の言わんとすることは察していたが、

不安そうな表情の住民たちより、下品な笑いの方が幾分、

マシに思え、ついつい、才籐を窘める発言に

終始してしまった。



敗残兵のような軍の後に、戦場でアルフレード皇子を

保護し、なおかつ、戦力の温存に

成功したアルベリク侯爵は、堂々たる陣容で

帝都の地を踏んだ。


才籐の後方で住民の歓声が上がっていた。

本来、彼らが受ける喝采ではなかったが、

アグーチン導師の小才が上手くアルベリク侯爵を

立ち回らせていた。


「ちっ、こんなところで、しょうもない悪知恵を

働かせるより、あの戦場で才を振るえよな」

才籐が後方で爆発的に広がり、湧き上がる歓声を

聞きながら、舌打ちをした。


「才籐、学びなさい。あれも貴族社会を

上手く遊泳するための政略です。

強いだけでは、アルフレード皇子のようになります。

あまり言いたくはありませんが、

アンカシオン教団内でもそれは必要なことです」

メープルは、眉を顰めながら、後方に目を向けた。


「あーあー皇子がいればなぁ」

ため息をつく才籐であった。


今回の戦を終わらせた皇子の軍は、

荒廃した国境の街や村の治安維持と復旧のため、

いまだ国境に留まっていた。


湧き上がる歓声に堂々たる態度で

応じるアルベリク侯爵を尻目に才藤とメープルは

教団本部に向かった。


才籐とメープルは、ルナリオンを

中心としたバルザース帝国のアンカシオン教教団本部の

高位の者たちに今回の戦の報告を行った。

報告は主にメープルが行い、才籐はたまに相槌を

打つだけであった。


「ふむ、わかった」

そう言うとルナリオンは、瞳を閉じて、

一呼吸置くと、話を続けた。

「どうもここ数年、騒がしいな。

バルザース帝国内に留まらず、

魔物や魔獣の被害報告が頻繁に

なっているだけでなく、魔人の目撃情報すらある。

数十年来、安定していた各国の関係は、活発だ。

更に報告にあるような輩の蠢動も気になるな」

ルナリオンの発言に一同、聞き入っていたが、

ルナリオンの言葉が途切れると、メープルが続けた。

「このような時こそ、我々が祈り、助け、

人々の拠り所になるべきではないでしょうか?」


「その言や良し。ならば、司祭メープルに告げる。

バルザース帝国内の支部を回り、地方の状況を

その目でしかと見てくるがよい。

召喚者才籐は、メープルを補佐して

回って貰えるかな?」

ルナリオンの言葉に逆らえるわけもなく、

メープルと才籐は、恭しく頭を垂れて、

了解の旨を伝えた。


他の高位の者たちもルナリオンに同調もしくは、

対抗して、自分の派閥の者を推薦した。

そして、ほぼ、バルザース帝国全域に

司祭、副司祭クラスを帝都から派遣することになった。


才藤さん、お仕事ゲット!

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