23.死への序曲
口は災いのもと
「さて、稲生、10日ほど余裕が出来たが、
どのように過ごすつもりだ?」
リンは、執務室に稲生を呼び出して、
今後の予定を尋ねてきた。
「先ほど、リンは、非常に私が忙しくなると
あの神官のお誘いを断ったかと思いますが。
何かやることがあるのでは?」
稲生は、先ほどの会話を思い出して、
逆に尋ねた。
リンは、殊更、真剣な表情で答えた。
「なあ、稲生。獣に殺されないために
例え10日とは言え、無駄にはできぬだろう。
そのために私が断ってあげたのだ」
「はあ、そうですか。
ですが彼らも獣を討伐する集団です。
何かしらの考えもあるでしょう。
話す価値は大いにあるかと思います」
稲生は、具体案は出さずに
会食の件をまぜっかいしてみた。
「そっそれは違うぞ、稲生。
多分、得るものはないだろう。
稲生、彼から何か聞き出せるような
話術があるか?ないだろう。
恐らく、シン将軍やゲルト将軍も
同じ意見であろうよ。
それに稲生は、助兵衛だから、
あの神官の誘惑に負けて、
大変なことになりそうだしな」
稲生は思いのほか真剣に話を
リンがするため、黙って話を聞いた。
「召喚者、異世界からの知識や技術の運び手。
大国ならほぼどの国でも呼び名は違うが、
似たような召喚はしている。
そして、他国の召喚者にちょっかいを出すこともな」
リンの話によると、他国にも召喚者はいるらしい。
そして、自国へ他国の召喚者を取り込むための
誘惑や勧誘を行い、取り込めないなら、
殺害も辞さずということも往々にしてあるらしい。
そのため、あの巨乳神官も本当の神官かあやしく、
稲生を色仕掛けによって、篭絡しようと
しているかもと強調するリンの談。
ただし、どの国も長い召喚の歴史から、
逃亡や国替えの阻止のために、召喚直後、
制約や契約を強制的にかけていると、
リンは付け加えた。
「リン、その説明ですと、私にも
何かしらの制約がかけられているのでしょうか?」
リンは、言葉を濁すも話してくれた。
「かけられてはいるが、さほど強力なものではない。
すまぬ、国家機密のために委細は話せぬ。
ただ、これだけは本当だ、稲生の心をいじったり、
情報を漏らしたら、突然、死ぬ類のものではない。
例えば、あの巨乳の誘惑に
負けても死んだりはしない。
ほんの少しピリリッと痛みを感じるだけだ」
リンのあの神官への異常な牽制は
別としても今のところ、制約による
生活の不具合がないため、気にしないことにした。
「ところで、先ほどから、他の二人に関しては、
言及しませんが?なぜなのでしょうか?
リンは、巨乳が憎いのでしょうか?」
と稲生が余計な一言を!
「ほほぅ、稲生。どうやら、
死を身近に感じたいようだな」
能面の顔で笑うリンであった。
稲生さん、、、ピンチ!




