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90.陵墓に侵入(稲生)

お宝ー

翌朝、九之池一行が遺跡に到着すると、

入り口付近は、冒険者で溢れかえっていた。

 

「ざっと見渡しても数十組で百人近くはいそうですね」

周りを見渡して、ルージェナが九之池に伝えた。


「ふえっ、これってかなり出遅れた

感じじゃないですか?」

周りを見渡して、九之池も感想を述べた。


「これほどに冒険者が集まっているところからすると、

ここの遺跡は相当、高名な方の陵墓なんでしょうね」

入り口から移籍に入っていく冒険者たちを眺めながら、

稲生がアデリナに尋ねた。


「さあ、知らぬな。そんなことより、

そこにお宝があればそれでいい。

そもそもこの規模の遺跡がこの場所で

今まで見つかっていなかったことが驚きだけどな」

アデリナが稲生に答えた。

そして、値踏みするかのように

冒険者たちに視線を送っていた。

視線に気づいた冒険者は、不敵に笑い返す者、

下品な笑いをする者、顔を背ける者、様々であった。


「ふん、大したのはいないな」

ぽつりとつぶやくアデリナであった。


「稲生様、そろそろです」

とアルバンが稲生に伝えると、

稲生は軽く頷き、メンバーに伝えた。


暗闇の支配する遺跡にまず、松明を翳しながら、

アデリナが入った。そして、他のメンバーも続いた。

最後尾はヘーグマンであった。


足元は、ぬめりを帯びた毒々しいほどの

赤色のレンガが敷き詰められており、

足を取られるようなことはなく、

一直線に続いていた。

空気は生臭く、淀んでおり身体に

纏わりつくような感じが稲生たちを不快にさせた。

罠の発動した気配もなければ、魔物と言うより、

生き物の気配もなく、先発組が通過したような雰囲気も

感じられなかった。


一刻ほど、分岐点のない道を歩き、

一旦、休憩を取った。


「妙だな、静かすぎる。

少なくとも直前に入った冒険者の

何かしらの物音くらいは

感じてもいいはずだが」

アデリナが先に続く道に松明を翳しながら、

言った。


「稲生さん、稲生さん、これって、アレじゃないですか?

よく映画とかである遺跡自体が生きていて、

侵入者を溶かして栄養分するとかじゃないですか?」

九之池が前世界での知見を周りのメンバーに

誇示するかのように大声で話した。

このような場所で大声出す九之池の非常識な態度に

アデリナが眉を顰めた。


稲生はアデリナの態度に気づいたが、

九之池を無視する訳にもいかず、声のトーンを

落として返事をした。

「それもありえるような雰囲気ですね。

となると、さしずめここは、人で言うところの

口の部分になるんでしょうかね」


九之池は我が意を得たりと得意げに捲し立てた。

「そっそうですか!となるとこの生臭ささは、

口臭ってことですよね。随分と不潔な奴だよ。

それに床のぬめりは涎かな?不潔な奴だね」

と言って、九之池は得意げに床を蹴り上げた。


その声と態度にアデリナが眉を顰めるに収まらず、

柳眉を逆立てた。

無言で九之池の鼻っ柱を殴りつけた。

鼻から血が噴き出る九之池。

そして、唖然とした表情でアデリナを

見つめていた。

「おい、豚。お前が勝手に死ぬのはいいが、

周りを巻き込むなよ。

休憩とは言え、騒ぐな。

稲生、おまえも分かっているなら、

適当に話を合わせるのではなく、注意をしろ。

ルージェナ、おまえはこいつが

不注意・不用心な行動を

しないように見張っておけ、いいな」

低く冷たい声でアデリナが三人に言った。


冷たい視線を向けられた3人は、

底冷えするような感覚に囚われていた。

咄嗟にルージェナは、はいと返事をし、

稲生はすみませんと頭を下げたが、

九之池は不貞腐れたように

うな垂れているだけだった。


この様子を見ていたアルバンは、

どうか面倒事に巻き込まれませんようにと

祈るばかりだった。


早い者勝ち!

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