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87.戦いの結末3(才籐)

終戦なのかな

 女の後方の入り口から、

一本の細い光沢のある銀色の糸が

女の左目に向かってきた。

目に刺さる直前、女は糸を払い、飛び退いた。


「死ねっ」

一瞬の隙を見せた女に向かってイラーリオは、

叫ぶと、剣を振り下ろした。

優雅に避けると、女はイラーリオを殴り飛ばした。

壁に激突したイラーリオは、血を吐いて、

その場に倒れ込んだ。


「誰?出てきなさい」

女は、入り口の方に向かって、抑揚のない声で言った。


「奇妙な歌声は止んだようですが、

いたずらに兵士たちを混乱に陥れた罪を

償ってもらいます」


「おいおい、本当にこいつが

あの歌声の主なのか?

司祭、あり得なくない?

一応、アルフレード皇子の軍師だぞ。

間違っていましたでは済まないぞ」

息を弾ませ、左脚を引き摺るような仕草で

部屋に入った才籐が言った。

才籐が立ち止まると、左脚は人のものとは

思えぬような奇妙な動きをしていた。


「間違いありません。

才籐、あなたの危険感知も最大限の警鐘を

鳴らしているでしょう」

とメープルが左手の盾を構えながら、才籐に告げた。


「まっまあ、確かに。

妖精もどきや人もどきと

同じくらいに警戒が必要かも」

剣を構えて、警戒する才籐であった。


「最高位に属する老公の遺品が二つも同時に!

まだ見た限り、成長中ですか。

右腕の方はかなり成長しているようですが、

左脚はまだまだですね」

陽光を受け、光輝く司祭の右腕と才籐の左脚を見て、

女は、歓喜極まっていた。


「あなた方をここで殺すのは容易いですが、

そうなれば、そうですねぇ。

光銀シリーズの完成が遠のきます。

ここは仕方ありません、退きます。

あなた方もそこに転がるポンコツを

回収することで矛を収めなさい」

子供をあやす様に話しかける女は、

革袋から一つの魔晶を取り出した。


「待ちなさい。逃がしませんよ。

アルフレード皇子の軍師でしょう。

帝都に戻り、色々と話をして貰います」

メープルの右腕が網状に広がり、

女を捕獲する準備に入った。


女の後方にある窓の外から、ぱたぱたと羽の音を

鳴らしながら、妖精にしては大きなモノが入ってきた。

「ねえ、ここは、退いてよ。

これを捕獲するなんて、無理だからさ。

この半人半魔の娘は、普段、温厚だけど、

キレると手が付けられなくなるから、勘弁してねぇ。

残されたその遺品は、最上位のうちの一つだし、

完成まで非常に長い年月が必要だからさ。

各部位、順調に育っているぽいし」


「ふん、邪魔しないの。

あなたも暫く動けないようにするよ。

依り代は探そうと思えば、

いくらでも見つかるから」

いらいらとした表情で答える女だった。


「うーん、召喚者にアンカシオン教の優秀な司祭。

中々、そんな適合者は見つからないよぉ。

ねっ、君も抑えて、抑えて」

と哀願するように妖精もどきが言うが、

ぱたぱたとホバーリングする様は、

おちょくっているようにしか見えなかった。


「いらいらするけど、正論ね。

回収できるものは出来たし。

ここは退きましょう。

あなたたち、それは大切に育てなさい。

それと、あなたは、次に横やりを

入れてきたら、ただじゃ済まさないからね。

いいわね」

女は、魔晶を放ると、壁に陣が現れ、

そこへ吸い込まれ、消えてしまった。


「じゃ、帰るねー。今回も色々と面白かったよ。

また、たのしませてねー」

と言って、窓の外に消えていった。


「まっ待ちなさい」

とメープルが慌てて、右腕を伸ばすが、

簡単にいなされてしまった。


「司祭、無理だ。

現時点の俺らではあいつに勝てない。

そこのおっさんを介抱して、

さっさと帝都に戻ろう」

才籐は、倒れているイラーリオに

ビルギットより購入した回復の魔晶を

充てた。


才藤さん、どうにか生き残る!

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