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81.最前線の状況3.1(才籐)

才藤さん、まさかの戦術論を展開するっ!

 


 

 その頃、アルベリク侯爵は、諸将を集めて、

今後の展開について最終的な確認も含め軍議を開いていた。

 あと1日も進軍すれば、アルフレード皇子の

籠る城に近づくためであった。 


「くしゅっ、ぐすっ。くしゅっ」

アルベリク侯爵は、二度ほど、

慎ましやかなくしゃみをした。


 それを見た才籐は、皇子辺りが近臣と

アルベリク侯爵のことをネタにして

笑っているのだろうと予想した。

そんな想像をしていたら、才籐の表情がついつい、

にんまりとしてしまった。

 才籐は末席に配されおり、アルベリク侯爵の席から

随分と離れていたが、彼は才籐の表情の変化を

目ざとく見つけていた。


「召喚者どの、人がくしゃみで苦しんでいるというのに

随分と楽しそうですな。

この重要な軍議の最中、にんまりするとは

どういった料簡で?」

と意地悪く才籐に話しかけた。


 元々両者は、召喚時から折り合いが非常に悪く、

アルベリク侯爵は隙あらば、

嘲笑、讒言しようとしていた。


 隣に座るメープルの表情は、余計な揉め事を

とあきれ顔だった。

 両者の関係を考えれば、隙を作れば、

刺されることくらい容易に想像できるはずだと

メープルの顔が雄弁に物語っていた。


 才籐もそのことは理解していたが、慣れないのか、

時節、こういったことを起こしてしまっていた。


「生まれ育った国では、二回、続けてくしゃみをすると

誰かが噂でその人物を笑っていると言われています」

と才籐がしょうもないことをアルベリク侯爵に

聞こえるように答えた。


 軍議に集まっている諸将は才籐の堂々たる物言いと

然もあらんと思い、吹き出して笑っていた。


 無論、アルベリク侯爵の目にもそれらが入っていた。

顔は赤くならずに真っ青であった。

「で?それがどうしたのだ?召喚者ヨ。

ここは軍議の席であろウよ。

そんなことを堂々と話すより、

もっと建設的なことを提案できないものかね?

それともここで召喚されたときのように

泣き叫んで地面に這いつくばるか?」


 流石に言い過ぎだろうと誰しもが思った。

メープルは能面のような表情で冷たい視線を

アルベリク侯爵に送るとおもむろに

立ち上がろうとしていた。


才籐は、メープルを制すると、

「では、これから我が軍のすべき行動について、

意見を述べます」

と言って、話を続けた。


「先ほどの話の流れですと、城に合流することを

上策としていましたが、それには反対です。

斥候からの情報では、容易に合流できそうな状況に

あるようですが、レズェエフ王国軍が

合流させたがっているのではないかと思います。

それより、城を中心として、皇子の軍と連携を取って、

レズェエフ王国軍を攻撃しながら、出血を

強いるのがいいかと思います。

彼らをいら立たせて、士気を減退させて、

撤退させるのはどうでしょうか?」

と才籐が主張した。


 しばしの沈黙が本陣を支配した。

そして、その沈黙をアグーチンが高笑いで破った。

「カッカカカァー。理想だな。

それを実現するには、高度な連携と意思統一が必要じゃ。

どの軍も皇子の軍のようだと

勘違いされては困るのう、召喚者殿。

兵略は最強の軍を基準にして立てず、

最弱の軍を基準に考えねばならぬ。

アルフレード皇子の軍には期待できぬ」


その意見に続き、アルベリク侯爵が宣言した。

「流石は導師、では、当初の予定通り城へ合流し、

城壁と我が精兵をもって、レズェエフ王国軍に

打撃を与えることにする、各将、準備を始めよ」


 才籐とメープルは顔を見合わせて、

何かをお互いに言おうとしたが、ここでは人目が

多いことを気にしてか、無言で陣を後にした。


もうすぐ戦場だー

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