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71.主導権(稲生)

飲み物ー!

「シリア卿、そう言えば、

九之池さんが構想を練っていた開発は、

どのくらい進んでいるのですか?」

そう言って、稲生は、出された飲み物を飲んだ。


「あの件ですか。その節は、九之池が

随分とお世話になったようで。

我が国は、随分と期待していたのですが、

残念なことにこのような情勢になりまして、

中断しています。

その代わり、九之池は、戦場で活躍しています」

と如才なく答えるシリア卿だった。


稲生は軽く笑い返し、

「そうですか、それは残念です。

私も随分と期待していましたので」

と言った。

そして、そのような当たり障りのない会話が5分程、

続けられると、傍で静かに座っていたアデリナが

飽きてきたのか、そわそわし始めていた。


「おい、稲生、そろそろ、その実の無い会話を止めないか。

いい加減、聞き飽きたし、本日、二度目だぞ。

背筋に悪寒が走るわ」

我慢しきれず、遂、本音を語るアデリナであった。


「はっははは、そうですか!アデリナさんのような美人を

飽きさせてしまうとは、私も九之池のことを

批判できませんな」

と笑って、答えるシリア卿であった。


「ふむ、よく己のことを弁えているな。

魔術師としては二流か。

だから、政に口を挟んでいるのか?」

シリア卿の発言を肯定し、そして更に余計なことを

付け加えるアデリナの発言だった。

稲生は、一瞬、眉間に皺を寄せるが何も言わずに

事の経緯を見守っていた。

アルバンは、立場を弁えて、沈黙を守っている。


心なしかシリア卿の笑いが乾いているように

感じるキリアの面々であった。


「これはこれは、手痛いですな。

しかし、どこにも属さずとも一流たる力を

持つ者もいるものです。

それが私とは言いませぬが、

ローブを授かりし者たちだけが魔術に長けているとは

思わぬほうがよろしいかと」


「まあそうだな、しかし、君は一流ではないな」

辛辣な物言いのアデリナであった。


言葉に詰まるシリア卿だった。

そして、それを見る九之池は何故か楽しそうだった。

シリア卿と九之池の視線が交錯する。

一瞬でシリア卿の怒りの沸点が頂点に達したが、

流石に客人の手前、何とか暴発を抑えていた。

テーブルの下の両足がガタガタと高速で震えていた。


稲生はここにきて、アデリナの持ち得る技術でだけでなく、

その性格故に中央から離れたところで任務に

就いているのだと悟った。

おそらく一定数、その実力以上に煙たがる面々が

いるのだろうと予測した。

「シリア卿、すみません。

どうもアデリナ将軍は、他人を煽って

楽しむ趣があるようです。

申し訳ございません」

と稲生がフォローを入れると、

シリア卿も上手くそれに乗じて、

「いえいえ、この程度のことは、お気になさらずに」

と答えた。


会話の内容は、主にベルトゥル公国と

レズェエフ王国との戦に話が移り、

レズェエフ王国軍を押し返したために

誇張した内容が多々、見受けられるように

九之池には感じられた。


九之池さん、接待できそうにないなー

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