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66.褒賞(九之池)

九之池さん、褒美ゲットなるか???

九之池たち、先発隊は、本軍と入れ替えで、

一旦、公都に撤退した。

レズェエフ王国軍は、国境線の砦に撤退し、

ベルトゥル公国軍を迎え撃つ体制を取っていた。

ベルトゥル公国軍も無理に攻めずに威嚇するに留めていた。


「ふううっ、やっと戻れた。

ふううっ、眠い眠い、疲れた」

道中もシリア邸に到着しても同じことを

繰り返し言う九之池だった。

帰路の道中、都度、相槌を

打っていたルージェナであったが、公都に着く辺りで、

呆れたのか疲れたのか諦めたのかスルーするようになっていた。


 敵を追い返したとはいえ、

数多くの死傷者を出した先発隊は、

非常に厳しい評価を大公より下されていた。


 爵位を持つ者の大半が討ち死にし、

その責を問い、残った者たちを厳しく罰すれば、

ベルトゥル公国軍が機能不全となってしまうため、

ベルトゥル大公は落としどころに悩んでいた。


大公の執務室には、シリア卿、サンドリーヌ卿が

呼ばれ、この件について、相談を受けていた。


「色々と戦略、戦術面で問題があったとはいえ、

さて、どうしたものかな」


「今回は、敵軍に関してあまりにも予想外なことで、

全責任を問うのは如何なものかと」

とサンドリーヌ卿が言うと、

「私も賛同いたします。

ただし、何の責任も問わないは、問題でございます。

そのため、彼等には、先鋒隊の死傷者への弔慰金を

拠出させることで降格に関しては不問としましょう」

とシリア卿が口を添えた。


「ふむ、そうだのう。そうしよう。

グルムール侯爵を始めとした諸将への負担金を

サンドリーヌ卿が試算せよ。それとだ!」

と厳しい表情を緩め、ベルトゥル大公が続けた。


「その戦の状況下で、堂々と布陣に反対し、

敵軍の夜襲を押し返し、生き残っていた兵士たちの

士気を高めたあの召喚者に関しては、どうするのだ?

爵位でも与えるか?

それともそうだな、サンドリーヌ卿には

確か年頃の娘がいたな、奴と娶せるかな。

どうだ!」

と最後の言葉に力を込めて、

ベルトゥル大公が言葉を切り、二人の進言を促した。


「ごっご冗談が過ぎます。

今の九之池殿の声望に我が家名では

つり合いが取れませぬ故、ここは爵位と褒賞を

送るのがよろしいかと」

一瞬で全身が汗まみれになり、

身体が小刻みに震えつつも顔には動揺が

現れないよう細心の注意を払って、答えた。

あの愚図のような男に愛娘が抱かれると思うと

悩乱しそうであった。


そんなサンドリーヌ卿を横目に

シリア卿が心底、愉快そうに答えた。

「それは良案でございます。私も賛同いたします」


サンドリーヌ卿は思わず、シリア卿を睨みつけた。

その視線には殺気が籠っており、場所が場所でなければ、

今にも飛び掛からん勢いであった。


「ふむ、そうか、やはりそうか。

多少、歳を取っているとはいえ、

どの報告も概ねあの男を褒め称えておるからな」

サンドリーヌ卿の心中に気づかず、

満足げに答える大公だった。


「しかし、ここは爵位と褒賞を与えるに留めるべきかと。

次回の活躍を持って、妻については

考えるべきかと愚考いたします」

とシリア卿が大公に一部、再考を促した。


まだまだ、大きく名を馳せたのは、1度のみであり、

時期尚早とシリア卿は考えていた。

そして、奴が活躍しつづけるとは全く考えていなかった。

どこかで馬脚を露すと思っていた。


「ふむ、よかろう。今回は爵位と褒賞に留める。

前回の魔獣の討伐も加味して、爵位は与えよ。

サンドリーヌ卿、よいな」

そう大公が言うと、安心したのか、

サンドリーヌ卿は普段からの彼では考えられないほど、

間抜けな声で答えた。


「へへっー」


大公は大笑いして、二人に退室を促した。


「先ほどは生きた心地がしなかったぞ、シリア卿」

と落ち着いたのか、通路を歩きながら、

シリア卿に話しかけた。


「確かにな。俺に娘がいたとしても

同じ反応をしたと思うぞ」

と大笑いしながら、答えるシリア卿。


「全く心臓に悪いことだ、寿命が縮んだぞ。

まあ、その件について、もう考えるのは止めよう」

とため息をつくサンドリーヌ卿だった。

お互いに顔を見合わせて、如何ともしがたい表情で

公宮を後にした。


そんなことは露知らず、シリア卿が

いないことをいいことに九之池はシリア邸で

熱い湯に浸かり、ベッドで久々に昼間から熟睡していた。


いや、結婚は、褒美じゃ、、、褒美なのかな?だれか教えてー

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