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63.知らぬところで(九之池)

眠い、、、

「これこれ、ルージェナ、そのように恐ろしい顔ですと、

貴族の方々は、恐怖で何も話せなくなります」

とルージェナの後方から、突然、現れたヘーグマンが

笑いながら、言った。


「罪人の次は、成り上がり者の犬か」

と吐き捨てる様にグルムール侯爵が言った。


ヘーグマンの両眼が鋭く、グルムール侯爵を睨みつけた。

「我が主、シリア・ド・シャントゥール伯爵のことを

成り上がり者とおっしゃるのでしたら、

あなたの開いた口が、更に広がることになるでしょう」


言い終えると、先ほどとは打って変わって、

涼やかな表情でグルムール侯爵を見やった。


「ぐっ、こっ言葉のあやだ。

いちいち、事を荒立てるな、ヘーグマン。

今の発言は不問とするゆえに殺気を収めろ」

ヘーグマンの殺気にあてらえたために

震えた声で虚勢をはるグルムール侯爵であった。


バルモフ伯爵は、二人の間に流れる不穏な気配を

何とかしようと、話題を提供した。

「ヘーグマン殿、現状を打開するのに

何か良い手立てはお持ちか?

我々の案は中々だと思うが、どうだろう?」

ドルチェグスト男爵が彼の意見に賛同の意を示した。


ヘーグマンは、意識の朦朧としている九之池を見やり、

そして、堂々と彼らの意見に反対した。

「彼を前面に押し立てても無駄ですよ。

今、ここにいる彼から如何ほどの殺気や圧力を感じますか?

おそらく何も感じないでしょう。

ここは防衛に徹して、公都や地方貴族からの援軍を

待つのが上策かと。

さほど時を待たずして、援軍は到着するでしょう。

そうなれば、挟撃することも可能になります」


周囲がざわついた。援軍の情報など誰も知らないし、

そもそもこの包囲を誰も突破していなかった。

そして、魔術による交信も阻害されており、

この惨状を伝える術は何もなかったはずだった。


「その発言、冗談では済まされないぞ」

グルムール侯爵が上擦った声で言うと、

周囲の面々も同調した。


ヘーグマンはめんどくさそうな表情を

すると、ため息をついた。


「きっ貴様、我らを侮るかっ」

とドルチェグスト男爵が剣の柄に手をかけた。

「抜けば、冗談ではすみませんが、抜きますかな」

飄々と言うヘーグマン。


シュッパッと風を切る音と共に残影を残し、

柄から手が一瞬で離れるドルチェグスト男爵だった。


ルージェナが一言、「はやっ」


九之池の件は、いつの間にかうやむやになり、

議論の中心は、今後の防衛に関してとなっていた。

ルージェナは諸将の変わり身の早さに

毒気を抜かれたのか、その後は何も言わず、

ぼんやりと彼らの話を聞いていた。


九之池はいつの間にか、寝てしまっていた。


ふと、バルモフ伯爵は二人の存在に気づき、

退室するように促した。


労いの言葉も何もなく、誰もその存在に気をかけず、

九之池はルージェナに支えられて、本陣を退室した。


ベルトゥル公国軍の防衛の最前線では、

散発的に魔獣や魔物が跋扈するだけであった。

それも死体を漁るためのようであり、

腹が満たされれば、自然に丘をくだっていった。

ベルトゥル公国軍は、その行為が不快であったが、

刺激を与えぬように警戒するに留め居ていた。


九之池は自分の持ち場に戻ると、寝かされた。

指揮すべき兵は10名ほどとなり、ルージェナが代理で

指揮をした。


無理ゲー回避!

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