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62.高まる評価(九之池)

ふらふらー

「くうううっーさいっこうの素体だね、あれは!

あの程度の痛みであれじゃあ、老公を降臨させたら、

一瞬であれの意識は消失しそうだね!」


 レズェエフ王国軍の陣で、九之池の様子を

観察していた妖精もどきが嬉しさのあまり、

人もどきの周りをパタパタと飛び回った。


「しかし、あれは酷過ぎる。

あれを依り代にするには、

老公への冒涜ではなかろうか。

あまりにもあれすぎる。

あれほどの力を持ちながら、

アレではどうしようもないではないか。

年齢的にも成長することもないだろう。

あの男の人生はつんでいるな」

と冷たく評する人もどきであった。


「ふふん、だから、彼の惨めな人生に華を

添えてあげようよ。とびっきりのね。

最高の散り際を演出してあげようよ。

もっともっと追い込んで老公が

復活するまで、楽しもうよ」

心底、嬉しそうな妖精もどきであった。


「そんな余裕はないはず。

ここで回収した憎悪と魂ですら、

ここに持ってきた魔核を満たすこと

かなわなかったのだぞ。

これではどうしようもあるまい。

どうする気だ。

そこかしこに乱を起こすのは効率がいいのだが、

国同士の戦より内乱の方が

溜まりやすいと判断しているが」

と妖精もどきとは、対照的に

にこりともせずに話す人もどき。


「内乱の萌芽は幾つかの国で芽吹いているよ。

でも戦の方が手っ取り早いの。

まーそろそろ、ベルトゥル公国も

馬鹿じゃないから、援軍が到着するよ。

後方と前方を囲まれると、めんどいし、

明日にでもここから撤収しよっ。

あとは、レズェエフに任せればいいよ。

欲の皮がつっぱっていれば、死者が増えるし、

大敗するけど、後は彼ら次第でしょ」

へらへらしながら、答え、何事かを念じて、

何者かに指示を出した。


 翌朝、目覚めると、グルムール侯爵は、

戦陣に立った訳でもないが、非常に疲れ果てていた。

夜襲は押し返したが、統括している軍は

相当な出血を強いられた。

そして、名だたる将軍の多くが討ち死にした。


そして、本陣には公都を出征した時から、

グルムール侯爵を含むバルモフ伯爵、

ドルチェグスト男爵の3名を

含む半数ほどしかいなかった。


「九之池か、あの男が狂い叫び始めると

同時に敵軍の撤退が始まったということだな」

朝の挨拶もなしにグルムール侯爵が

ドルチェグスト男爵に話しかけた。

「確か、そう聞いております。

何分、夜のこと故、はっきりとしたことは

分かりかねるようです」


 バルモフ伯爵は、二人の会話を聞き、

何かピンと来るものがあったのだろう。

喜色を浮かべた。

その表情に気づいたグルムール侯爵が

バルモフ伯爵に発言を促した。


「この状況を覆すに九之池を

利用すればいいではないでしょうか?

彼に先陣を任せて、突撃させましょう。

レズェエフのあの気味の悪い魔獣や魔物が

大混乱に陥れば、容易にこの地を脱出できるでしょう」


 この話を聞き、グルムール侯爵、ドルチェグスト男爵を

はじめとする各諸将は賛同し、九之池を本陣に

呼びつける使者を立てた。


 しばらくすると、ルージェナや麾下の部下に支えながら、

覚醒状態から元に戻っていた九之池が本陣を訪れた。


 いまだに意識が朦朧としていたが、

全身の至る所の痛みが辛うじて、

九之池の意思を繋ぎ止めているようだった。

その九之池の凄惨な状態に感じ入ることもなく、

グルムール侯爵が九之池に告げた。


「九之池、貴殿に命じる。

先陣をもって、レズェエフ王国軍を殲滅せよ。

我が軍は、これをもって、レズェエフ王国軍に対して、

全面攻勢に転ずる。いいな」


 意識の朦朧としている九之池には、

いまいち理解の及ばぬところであったために、

ルージェナが代わりに激怒した。


「ちょっ、昨日の今日の状況で無理です。

そもそもあなたたちには、九之池さんのこの状態が

見えてないのですか?

先陣どころか、そもそも戦場に立つことすら、無理です」

と怒声を諸将に浴びせた。


 グルムール侯爵はルージェナの怒りが

理解できずにただ単に不快に感じただけであった。


「罪人、貴様に発言を許した覚えはない。

よかろう、戦場に建てぬなら、柱に括り付けて、

馬に曳かせる。

戦場で雄叫びが上げられぬなら、

鞭で奴を打って、悲鳴をあげさせる。

いいな、貴様らがここで言うべきことは

泣き言でなく、『はい』の一言だ」

と言い放ち、左右の者たちに賛同を求めた。

居並ぶ諸将は、侯爵の物言いに怯んだが、

この場所を生きて、脱出したいがために賛同の意を

述べるだけであった。


 ルージェナは唇を噛みしめて、キッとグルムール侯爵を

睨みつけた。

蒼い瞳が燦然と輝き、長い橙色の髪が不規則に揺れていた。


上司の命令は絶対です。。。どこぞの会社のようだ!九之池さん、がんばれー

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