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60.情報交換(稲生)

稲生さん、情報求める

稲生は、商館に戻ると、アルバンを呼び、

バルザースの動向を尋ねた。


「バルザースは確実に出兵するでしょう。

毎度のことながら、レズェエフ王国の国境の砦を

目指すかと思います。いつもの構図ですよ」

と慇懃にアルバンは答えた。


「さて、誰が今回は率いるのでしょうね」

と稲生は呟いた。


「恐らくですが、第三皇子が本軍を率いるでしょう。

アルベリク侯爵とアドルフィト伯爵が両脇を固めるかと。

皇子は後詰に回ります。

彼に功績を立てられることを良いと

思わぬ宮廷の輩が暗躍しているようです」

とまたも慇懃にアルバンは答えた。


キリアの情勢が不穏なために

アデリナと共に一旦、帰国するか、

不可解な行動の多いレズェエフに向かい、

その動向を探るか、それとも気がすすまないが

当初の予定通りにベルトゥル公国へ向かい

九之池に会うか、稲生は、思案していた。


「アルバン、明日、商館の代表に

今後の計画について、確認をしておいてください。

私は、才籐さんのところに向かいますので」


表面上は畏まって、稲生の指示に

従うアルバンであったが、心の中では、

「けっ、このすけこま野郎が!

司祭に会いにいくんだろうが」

と悪態をついていた。

暗がりでの会話であったために稲生は、

アルバンの顔に浮かんだ微量の侮蔑の表情に

気づくことはなかった。


「才藤さん、脚は元に戻ったようで、何よりです」

と翌日、稲生は才籐の部屋を訪ねると、開口一番、そう言った。


才籐は、こめかみをぷるぷるさせて、稲生を睨みつけた。

「おまえ、昨日のあれ、ワザとしただろう!

ったく、脚が戻んなかったら、どうするつもりだったんだ。

ってかその前に潰れてたら、どうするつもりだったんだよ」


「まあ、一種のショック療法的なあれですよ。

でもまあ、あのお陰で随分と細部にわたり

その左脚を認識できるようになったんではないですか?」

にこやかな笑いと共に語る稲生だった。


言葉につまる才籐だった。


「魔道義手取扱説明書ですか、

この世界の文字で書かれていますが、

ところどころに日本語やら英語で走り書きがありますね。

注釈のつもりで老公が記載したのでしょうかね」

と稲生が魔道義手取扱説明書を手に取って、

ページをめくりながら、才籐に話した。


「けっ、アラビア語だったら、お手上げだったろうよ。

意外とその走り書きの部分は役に立つぞ。

司祭も本文より走り書きの方が役に立ったと

言っていたかな。俺もそんな気がする」

才籐が召喚された当初、最初に手掛けた仕事が

この世界の住人では解読できなかった日本語と

英語の意味をメープルに説明することだった。


「ドイツ語やロシア語でも読めませんでしたね。

その点は助かりましたね」

と稲生が何気なく応じた。


すると、才籐がにやにやとしながら、稲生に言った。

「ふっ、ドイツ語なら、俺は分かるぜ。

グーテンモルゲン~、グーデンダーク~。

英雄様には必要ない知識かな」


「まあ、この世界にいる限り、必要ないでしょうね。

それより、周辺諸国の言葉が理解できる方が有用でしょう」

と冷静に才籐へ突っ込んだ。


またも言葉に詰まる才籐だった。


「そんなことより、才籐さん。

念のため、確認しておきますが、

今回は流石に出征しませんよね」

と稲生が真剣な表情で尋ねた。


「流石に今回はないな。

ただ、現帝王が相当にお怒りらしく、

王位継承権を持つ皇子が率いるらしい。

恐らく第三皇子辺りになるだろとの噂だよ。

遠目で見たことあるけど、皇子ほどでないにしても

相当な実力があるぞ」


才籐のいう人物に関しては、

昨晩、稲生も商館の資料を一読していた。

個人としての武勇も中々な人物であるが、

本人を含めて、子飼いの部下も兵を率いる能力より、

武勇に偏った人物が多かった。

バルザース帝国領の至る所に遠征して、

盗賊、魔物、魔獣を討伐して、武名を高めていた。

融通の利かないところがあり、敵と見なしたら、

貴族であろうとも民であろうろとも

容赦なく斬り捨てることから、殺戮皇子と

市井で噂されていた。


才藤が珍しく声を潜めて、続けて稲生に話した。

「実際のところ、全軍を指揮するのは、

侯爵や伯爵クラスで将軍職に就いている奴だろうな。

あの第三皇子じゃ、砦の壁に向かって

全軍突撃させても不思議に思わないけど。

大軍を率いた経験はないはずなのに

どういう意図なんだろうな?

第二皇子の方は何度か率いたことがあるけど」


「それはバルザース帝国の王室内の

パワーバランスのせいでしょうね。

第二皇子の功績が大きくなり過ぎると

帝室が少々、騒がしくなるからでしょう。

その点、噂の第三皇子であれば、問題ないのでしょうね。

まあ、負けるとは全く思っていないことが問題かと」

と稲生が才籐に話した。


「おいおい、勝つことが前提なのかよ」

と才籐は呆れたような口調で言うと、

そろそろ、リハビリを始めるために動き始めた。

そんな才籐の様子を見て、稲生も商館に戻ることにした。


全く、困ったもんだ!稲生さんの無茶にも


すみません、更新、遅れるかもです。。。ううっ、正社員さん、しっかりしてー

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