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59.ナンパモード発動(稲生)

人脈作りなのだ!決してナンパじゃない

 左脚を接続された日から、才籐はその部分より

発する熱に侵されていた。

それも数日、経つと、どうやら落ち着いてきたようだった。


 二本の杖でサポートしながら、

左脚を動かすリハビリが開始された。

 才籐がリハビリを開始する時期と同じくして、

バルザース帝国は、レズェエフ王国への

侵攻の準備が開始された。


 必死な表情でリハビリをする横で、

才籐に会いに来たビルギットと稲生が

バルザースの動向について話をしていた。


 才籐は、二人の座る距離が意外と

近かったためどうも気になり、ちらちと横目で

二人を盗み見ていた。


「前回に続き、本格的な戦になるだろう。

ベルトゥル公国も動くだろうな。

各国にここまで大きな動きがあるのは、

久しぶりになるかな」

とビルギットが真剣な表情で稲生を見つめて話した。


「手打ちは無さそうですか」

と稲生が相槌を打った。


「そうだなぁ。

うちの店に来る発注数と内容からして、

前回とほぼ同様か、それ以上の勢いだからな」


「儲かるから、ビルギットさんとしては

喜ばしいことではないのですか?」

稲生がそう尋ねると、ビルギットがかぶりを

振って答えた。


「そうとも言えぬ。

一過性のことだし、そもそも安定した流通こそが

商流を活発化させるしな。

道中の安全が乱れるのが一番、売買を

鈍化させるだろうよ。

そもそも忙し過ぎるのもの嫌だしなあ」

最後の言葉が本音なのだろう、

心底、嫌そうに答えるビルギットだった。


 そんな二人を尻目に才籐は以前、

読んだ魔道義手取扱説明書入門編の

内容を元に左脚を繰り返し、動かす才籐だった。


「ところで、ビルギットさん、あなたのお店に

お邪魔してもいいでしょうか?

妻や子供たちにプレゼントしたいのですが、

ご相談を思いまして」

と稲生が若干、ビルギットとの距離を縮めて、伝えた。


「ふむ、妻子とわな。夜な夜なここの司祭と

お楽しみの男の言うセリフとは思えないな。

まっ、客なら、来訪を断ることはない」

と強烈な皮肉を稲生に放ると、にやりとした。


 稲生はその皮肉に全く動ぜずに

ビルギットの左手を取り、爽やかな笑顔で見やった。


「ふん、どうやら無類の女好きとの噂は

本当のようだったな。

色気で客を釣るつもりは一切ないわ」

と言うや嫌な左手を絡みつく稲生の右手から

激しく振りほどいた。


 そして、それと同時に才藤の左脚が稲生の鼠径部に

向かって勢いよく伸びた。

咄嗟に稲生は避けたが、一瞬で身体中に汗をかいてしまった。


 避けられた脚は、後方の壁を容易く打ち砕いていた。

室内に少し埃が舞い、ビルギットと稲生は軽く咳き込んだ。


 才籐は、真っ青になっていた。

稲生に一つ間違えば、壁を破壊するだけで

済まない惨事が起きたであろう。


「才藤さん、今回は、何も怪我がありませんでしたが、

今後は気をつけてくださいね」


「おいおい、稲生。それは全然、違うぞ」


とビルギットが心底、面白そうに笑って言った。


稲生は、眉間に皺をよせて、ビルギットを睨みつけた。

「言うべき時にきっちりと言わないと、

間違いを犯した人のためになりませんよ」


「いやいや、確かにこれはやり過ぎだろう。

嫉妬に駆られたとはいえな。

しかし、今、才籐が真っ青になっているのは

そんなことではないぞ」


 ビルギットの話を聞いた稲生の頭を

クエスチョンマークが支配していた。


「脚だよ、脚。

勿論、才籐も稲生に怪我がないことにほっとしたし、

反省もしているだろうが、

今、才籐の心を支配していることは、

脚が伸びたままで、戻らないことであろうな」

と才籐の脚を指差して、指摘した。


 先ほどが、ピクリともせずに伸びた脚が

だらりと床に転がっていた。

窓から差し込む陽光を反射しているが、

一向にその輝きがこの部屋から

失せることはなかった。


才籐は真剣な表情で何かを念じていた。


 稲生もその状況を理解したが、当然のことながら、

具体的な解決策は持っておらず、ビルギットに

解決策を求めた。


「才籐の顔が真っ青なのは、

この状況によるものだけでなく、

魔力が枯渇したからであろうよ。

一旦、このままにして、魔力を

回復させればなんとかなるだろう。

才籐、一先ず、ベッドでやすむことだ。

慣れないこと故、一気に魔力を

持っていかれただろう」

と才籐に声をビルギットがかけた。


 才籐は頷くと、ひょこひょこと

ベッドに向かって、動き始めた。

稲生は、動きにくいだろうと思い、

才籐の動きに合わせて、

ずりずりと左脚を移動させた。


潰れちまえっ!アルバンの心の叫び

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