49.査問会(九之池)
いきなりの呼び出し。最悪だー
ベルトゥル公国の本軍3万は、
何の策も弄さずにレズェエフ王国軍と会敵した。
流石に土地勘だけは勝ったのか、レズェエフ王国軍を
見下ろす小高い丘に軍を展開したベルトゥル公国であった。
しかし、それは兵の士気を挫く効果となってしまった。
九之池は正面に展開するレズェエフ王国の軍を
遠望して、ため息をついた。
いまいち、締まりのないベルトゥル公国軍に対して、
遠方からでも分かるくらいに5万以上の兵が
整然と動くレズェエフ王国軍であった。
「ちょっ、国内なんだから、どこかレズェエフ王国軍の
後方とか側面を突くような援軍が来ないの?
ここって囲まれたら、水も食料も尽きちゃうじゃんよ。
そんな話はよく小説で呼んだよ、馬鹿なの」
と一人、余程、兵糧攻めが恐ろしいのか、
戦車型の馬車の上で喚き散らしていた。
九之池の態度は別として、言っていることは
的を射ているため、これを聞いた一般兵から
噂と動揺が広がり、出所の九之池は、
本陣に召喚されていた。
本陣では査問会議が始まっていた。
集まっている将軍たちが口々に九之池を糾弾した。
それに対して、九之池はぶつぶつと聞き取れない声で
何かを答えていた。
「君、何を言っているのか
よく聞き取れないのだか?」
と一人の将軍が九之池の発言を指摘した。
九之池は焦った。
単なる不平不満をぶつぶつと言っていただけだった。
意識せずに出ていた言葉だったため、
本人も何を言っていたのか良く分かっていなかった。
「まあまあ、我々、本職の将の戦略に
難癖をつけるくらいですから、
召喚者様は、さぞかし、素晴らしい見解を
お持ちのはずですよ。
みなさん、ご教授して頂きましょう」
と別の将軍が嫌味を加味して、九之池へ言った。
参加している面々が口々に賛成の意を示し、
九之池の発言を待った。
こっこいつらはあほなのか、こんなことを
している場合じゃないはずだろう、
目の前に大軍が陣取っているのに、
馬鹿なのと心の言葉が知らぬうちに、
音となっていた。
一人の将軍が九之池の声を聞こう近づき、
この発言を聴きとってしまい、周囲に伝えると、
各将、顔を真っ赤にして、九之池を悪し様に罵った。
「いやいや、早く丘からおりた方が
絶対にいいですよ。
とにかく小説で読んだんですよ。
援軍は来るの?間に合うの?」
と何とか言葉にする九之池。
服は既に雨を浴びたように
自分の汗でびっしょりとなっていた。
「ふん、浅はかな。
こちらから、坂を下る勢いを利用して、
奴らを粉砕してやるわ」
と九之池の発言を将軍たちは一蹴した。
九之池さん、愚痴る!