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43.仲裁(稲生)

ヘタレ稲生さん。

そんな二人を見ていた稲生は流石に

やり過ぎだと思い、

二人を止めようと動き出そうも

止める程の実力もないために思案しながら、

ゆっくりと近づこうとすると、

後方から、爽やかな声が聞こえて来た。

「稲生さんですよね?

女性二人にあのような狂乱騒ぎを

させては駄目でしょう。

そうなる前に止めるのが、上策かと愚考しますが」


こっこいつ、事情も知らないで偉そうにと一瞬、

心を捻くれた気持ちが支配するが、直ぐに思い直して、

「ごもっともですが、私の実力では

如何ともしがたいのです。

あなたなら、どうしますか?」

と藁をも掴む思いで聞いてみた。


「これは、森の獣を倒した英雄とは、思えぬお言葉ですね」

こっこいつ、いちいち、勘に触ることをと一瞬、

心を捻くれた気持ちが支配するが、

それどころではないと思い直して、

「策をお持ちなら、ご教授いただければ幸いです」

と頭を下げた。


「策と言うほどのものでもありませんが、

美女二人が土塗れになるのも如何かと思いますので、

ご助力いたします」

と皇子が言うと、鍛練場に飛び降りて、

剣の柄を掴むと、殺気を込めて、引き抜いた。


アデリナもメープルも殺気を瞬時に察知し、

土塗れで転がっている場合ではないと、起き上がり、

殺気の主に相対するために態勢を整えた。


「皇子でしたか、冗談が過ぎますよ」

とメープルは皇子を目にすると、少し怒ったように言った。


「ふむ、この気合、殺気が皇子のものであったか。

これは良い経験になった。

まあ、まだ、底は見せていないだろうけどな」

とアデリナが楽しそうに言った。


稲生は初めて皇子を見た。

そして、その男の実力でなく、

ちくりちくりと嫌味を刺す性格に辟易した。


「改めて、稲生さん。

バルザース帝国で皇子と

呼ばれている一召喚者です」

くすりと笑いながら、皇子が稲生に挨拶をした。


「あっ、稲生と言います。

助けて頂きありがとうございます」

稲生も遅れて挨拶をした。


完全に皇子がイニシアチブをかっこうとなった。

「いえいえ、お礼は才籐さんに伝えてください。

彼が私に依頼しましたので。

それにしても彼はあなたに会うごとに成長する。

彼にとって、あなたは良き兄のような

存在なのでしょうね」

と言って、皇子は、嘆息した。


稲生はあずかり知らぬことだったので、

大袈裟過ぎますよと適当にお茶を濁した。


それにしてもと稲生は思う。

あの二人の狂乱を止めた気合、如才ない話術、

自然と中心にいる存在感、そしてあの人を

惹きつけてやまない容姿、今のところ、

欠点を見出せないこの人物を

この帝国の長は、警戒しないのだろうかと。


あららっ、稲生さん、情けなし

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