表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/276

17.会議が長い

長いよー眠くなるのだ

「おおっ、あれが将軍かー」

稲生は、始めて見る将軍の圧倒的な威圧感と

鎧や武具の重厚感に感動した。


リンと将軍が挨拶を交わすと、

直ぐにリンが会議室へ案内し、その後に続く。

慌ただしく、守備隊や事務員が動き、対応している。


会議室に入室すると、将軍や将軍に

同行している兵士がそこで、各々、鎧を脱ぎ始めた。

稲生は、一人で脱着できる鎧に驚いた。

昨日のノルドの説明によると重厚な鎧は

一人で脱着できないとのことであった。


一人の大柄な将軍が視線に気づいて、声をかけてきた。

「貴殿は、漢に興味があるのか?それともこの鎧かな?」


「はじめまして、稲生と言います。

はい、その手の鎧が一人で脱着が

出来ていることに驚いています」

稲生は、正直な感想を述べた。


その将軍は、大きな声で笑いながら、説明をしてくれた。

「ガハハハッ、その名は、お前が召喚者か!

妙なところに興味を持つな。

漢になまめかしい視線を送るよりましだな。

俺は、ゲルト・ワイルドだ。

まあ、将軍をやっている。

この鎧は特別だ。軽装用の鎧だからな。

まだ、作り始められたばかりだ。

提案者が死んじまって、今は、開発が止まっているがな」


もう一人の優男風の高官そうな人物が声をかけてきた。

「おい、ワイルドそのくらいにして、着席しろ。

会議を始めるぞ」


室内にいる全員が着席すると、その高官は、

まず稲生の方を向き、自己紹介をした。

「会議を始める。私は、シン・エイヤ。

現在、将軍職にある。

さて、ヤンデルフォン卿、

獣の状況より、現状の輜重の状況に

ついて説明を伺おうか?

兵が餓えて、暴徒化されても困るからな」


「えっ、輜重ですか。

ええっと、こちらの守備隊責任者の

ドリアムが鋭意準備中です。

ドリアム、説明せよ」

話を振られたリンは、この質問に関して

あまり準備していなかったのか、

どもりながら回答した。


「はっ、現在、食料は集めていますが、

十分ではございません。

この地域の中心都市のハルバーンに協力を

求める使者を送っているところでございます。

こちらへの軍の移動は少々、お待ちを」

ドリアムは、予想された質問であったため、

準備していた回答をした。


「ふん、まあ、仕方ないか。

時間があまりなかったからな。

簡易の兵舎なども無理だろうな。

では、こちらの兵員の構成の詳細を

説明して貰おうか、ヤンデルフォン卿?」

またしてもリンは、あたふたしつつ、

ドリアムにふった。


幾度がやり取りを交わし、エイヤ将軍は、

リンを冷たい目で睨み付け、

「ヤンデルフォン卿、貴公は、先行でこちらに

戻ったにも関わらず、

一体、何をしていたのか?」


リンは、好機と見て取ったのか、

練っていた策を披露する。

稲生は、最悪のタイミングでの

最悪のチョイスをしたリンにある意味、瞠目した。


先ほどとは、打って変わって、

自信に満ちたりているリンは流れるように

いかにこの策が優れており、いかに苦労して

生み出したかを説明をする。


エイヤは説明の途中で遮った。

「ヤンデルフォン卿、何か勘違いしていないか?

それは、貴公の仕事ではない。

そのようなことに時間を費やすとは、無駄にも等しい。

そもそも貴公は、ザルツ将軍と獣の戦闘で

何のサポートもしておらぬだろうが。

ザルツ将軍の遺体からは、何の魔術痕が出なかったぞ。

王都では、皇帝の眼前にて黙っていたが、

説明して貰うぞ。

ザルツの死の際に一体何をしていた!

ザルツの一撃で深手を受けた獣をなぜ、逃がした!

老公の弟子であったとはいえ、事の次第では許さぬ」

最後は、激発しており、その怒りを一身に受けて、

リンは顔面蒼白で、いまにも卓へうつ伏せに

なりそうなほど震えていた。


稲生は、あーこれは、会議の名を借りた上司の

つるし上げだと思い、昔を思い出し、

嫌な思いに囚われた。

「すみません、よろしいでしょうか?」

と稲生は発言の許可を求める。


エイヤは、一瞥し、一言、

「貴様には何も聞いていない」

すると、横合いから、ワイルドが

豪快に笑いながら、口を挟んできた。

「おいおい、エイヤ、怒っているのはわかるが、

これじゃつるし上げだぞぉ。

この男の話を聞いてみようではないか。

こんなに青白くなっちゃ、ヤンデルフォン卿の

夜のサポートがつまらんではないか」

下卑た笑いで納めると、稲生に発言を促す。


「まず、兵の受け入れ準備の不備をお詫び申し上げます。

しかし、この地に1000名を急に送るのならば、

この町で輜重を準備するのは無理で、

しかるべき準備を後続の軍へ依頼にするべきであったかと。

また、あの森に1000名を展開すれば、

無駄に兵士を損耗します。

強者を選別し、傭兵を雇うヤンデルフォン卿の策は、

有効かと」

稲生は、ぼそぼそと話、一旦、話を切る。


ワイルドは、「ほぅ」と一言。


エイヤは、鋭く稲生を睨み付けると、

「ほう、我々の怠慢を指摘するとはな。

それで、ヤンデルフォン卿の怠慢が

許されるとでも?

ふん、ゲルト卿の夜の相手の手配は必要ないから、

怠慢にならぬと言うなら、確かにそうだな」

と言った。


稲生はエイヤの皮肉を無視して、続けた。

「ザルツ将軍の戦いにおいては、

将軍自らが魔法の補助を断っています。

魔法に強化されることで日ごろの感覚との

違いを忌避したのではないかと。

それに獣、ザルツ将軍、一撃で決着がついています。

一撃の前に弓や魔法でのサポートは、無理です」


「ふん、続けよ」

とエイヤは一言、合いの手をいれた。


「その後の結末を見たものは、

よほどの剛の者か胆力あるもでなくば、動けません。

なによりザルツ将軍の死に様に誰しも

衝撃を受けていました。

獣は、傷を負ったとはいえ、

森での最初の戦いの経験から、

生半可な攻撃では傷すらつけることができません。

四肢は、健在であり、向かう者は死んでいたでしょう」

稲生は、一息ついて、以上と続け、発言を終えた。


エイヤの代わりにワイルドが答えた。

「稲生、1000人は我々も展開するつもりはない。

少数精鋭、稲生の言うこととほぼ同じだ。

ただ、ここまで3度の討伐に失敗している。

そのため、民への我々の本気度を示すためだ。

ところで、稲生、そこまでヤンデルフォン卿を

かばうとは、ヤンデルフォン卿を愛しているのか?

もし、そうならば、夜伽の件は、

不問とするが?どうだろう?」

ワイルドは、がははっと笑いながら、話した。


あの目は、本気だ。

答えによっては、リンは、夜伽をすることなるだろう。

貰った金の分は、仕事したよなあと思い、

どうすべきか周囲を見渡す。


少し落ち着いたのか、リンが、ジト目でこちらを見てくる。

ドリアムは、興味深々の体であり、

エイヤは興味なしといった感じであった。


稲生は観念し、上を若干、見上げて、答えた。


「エエ、アイシテイマスヨ」


全く、心のこもらない表現であったか、

ワイルドは、笑いながら、

「うむ、不問としよう。

ただし、稲生、夜、連れてけ。わかっているな」


リンがほっとした表情でこちらに軽く頭を下げた。


正午となり、一旦、会議は中断となった。

午後からまた、始めるようであった。


困った、緊張の極致で午後の不参加を伝え、忘れた。



心の籠らない、、告白!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ