29.戦闘開始(九之池)
とことこん、やったるでー!
九之池さん、気合十分!
「ぐぎきぃ、俺も貴様も碌な死に方をしない。
くっくぅぅ、そして、貴様はここで苦しんで死ぬ」
笑っているつもりなのだろうが、
全く表情が変わっていない男だった。
「九之池さん、あの人も召喚者です。
しかもはぐれ者です。
隷属の縛りによる苦痛が
常にあの人を襲っているはずです」
九之池はぞっとした。
あの苦しみと痛みに常に苛まれるなど
常人には耐えられるものではないと
経験から九之池は思った。
「死ね」
一言、男が呟くと、彼の周りの土から
腐った死体や骸骨が湧き出てきた。
「げっ、あれって、もしかして、嫌すぎる」
九之池の嫌悪感が一瞬で絶頂に達した。
見覚えのあるようなないような死体が
わらわらと九之池たちに近づいてくる。
「団長っ!やるのか?それとも撤退か?」
とグレッグが怒鳴りつける。
「囲まれてりゅよ。
あの男をとりあえず、倒します」
と九之池がぼそぼそと指示をだした。
「おう!野郎ども。チームで対応しろっ。
数はいるが大したことはなさそうだ。
やっちまえ」
とグレッグが絶叫して、戦斧を振り上げた。
「ていていていていー」
と棍棒を振り回し、なるべく腐った死体を避けて、
スケルトンを破壊する九之池だった。
数はいるが、動きが遅い為、
瞬く間に数を減らしていく腐った死体や
スケルトンだった。
憎しみの表情がかわらない男は、
「ふん、死体と骨を十分にまき散らせたな。
貴様らに本物の魔術を見せてやる」
死体や骨の散乱した地面から
上空にヘドロ色の柱が立ち上がった。
その柱は、九之池たちを透過して、
上空に上がっていった。
ポカーンという表情で九之池は、
そこから逃げ出した。
他の団員も同様だった。彼らに何も起きていなかった。
「失敗なのかな?失敗だよね」
九之池は自身の見解に自信があった。
如何に動けようとも話せようとも
隷属の縛りの苦痛で集中を欠いて、
魔術の発動を失敗したと判断した。
「うおおおおおぉー」
と九之池は吠えると、棍棒を振り回して、
その男に突撃した。
弱みを見せる敵には、とことん強くなれる九之池だった。
「ふん、馬鹿が。ㇱね」
男の隣には、形容しがたい生物が現れた。
頭が、二つだが、違う生き物の頭であった。
魔犬のような顔と小鬼のような顔であった。
尾は3つ、先端に剥きだした針のある尾、
先端が蛇のような尾、魔犬のような尾であった。
その姿は奇怪な魔獣であった。
四つ足は、鋭い爪が剥き出しになっており、
人など、容易に切り裂きそうであった。
うーん、弱っちい敵だ!