26.九之池傭兵団出撃(九之池)
リーダー九之池!
九之池をリーダーとした傭兵団総勢19名が
問題の廃村に向けて移動を始めた。
馬車2台と馬に騎乗するという構成だった。
「団長、そろそろ、野営の準備を
開始した方がいいのではないか」
とヘーグマンと同様に副団長を
勤めるグレッグが九之池に進言した。
「あっ、そうですか。
では、ここら辺で野営をしますか。
グレッグさん、みなさんに指示をお願いします」
と九之池が指示を出した。
九之池は、この傭兵団でいつの間にか
団長と呼ばれていた。
名前を呼ぶ者は誰もいなかった。
ルージェナは、参謀的な立ち位置で
グレッグ同様に他の団員との橋渡し役を担っていた。
ヘーグマンは、いつも通り飄々と過ごしていた。
野営が始まり、各所で食事が始まると、
ルージェナは各グループに顔を出していた。
若い男の幾人かは、楽しそうにルージェナと
会話を楽しんでした。
時節、笑い声が聞こえ、ルージェナのいる場所が
九之池には常に分かった。
九之池は面白くなさそうに笑い声を
聞きながら、食事を取った。
これだけの大所帯であるためか、
魔獣も魔物、野盗の類が近づいてくることが無かった。
比較的、安全な旅であったが、
九之池はどうも気分が重かった。
以前は常にルージェナが傍におり、
それが当たり前だったが、今は馬に騎乗し、
移動中も各団員との交流に努め、
あまり九之池の傍にいなかった。
問題の廃村に向かう前、情報を得た村に
九之池たちは到着した。
眼前に広がる村には、生き物の気配が感じられなかった。
建物のドアや窓が風に揺られ、時節、叩かれたような音を
響かせていた。
「おいおい、これはどういうことだ」
と一人の冒険者がつぶやいた。
半刻ほど村の探索をすることとなり、
グレッグが団員に指示を出した。
「チーム単位で探索を開始しろ。
団長とヘーグマン副団長、ルージェナ姉さんは
ここで団員の報告を待っていてください」
全員が九之池から開始の合図を待っていた。
軽くルージェナに肘で小突かれて、
九之池は気づき、団員に伝えた。
「えーえー、みなさん、よろしくお願いします。
怪我無きように行動をお願いします」
と九之池が言うと、各チーム、行動に移した。
団員が去ると、ルージェナが九之池に話しかけた。
「九之池さん、これは一体、村人を一切見かけないなんて」
「さあ、分かる訳ないじゃん。それを調べてるんでしょ」
と勝手にルージェナとの関係を
拗らせている九之池が素っ気なく答えた。
そんな九之池の返答にルージェナが
面白くなさそうに呟いた。
「そんな言い方しなくてもいいのに」
「はっ?じゃあ、どう答えれいいの?
なになに僕が悪いの?ねえ、どういうこと?」
どうも帝都からここまでの旅路での鬱積した不満を
ここぞとばかりにぶつける九之池だった。
流石にむっとしたルージェナが
売り言葉に買い言葉で答えてしまった。
「不満があれば、はっきりと
言えばいいじゃないですかっ!
一体、何が不満なんですか!ずっーといらいらして。
団長なんだから、もっと落ち着いて構えてくだい」
ルージェナの思わぬ反撃に九之池は
絶句してしまった。
そして無の境地を発動しかのごとく、虚空を見つめていた。
「九之池さん、すっすみません」
とそんな九之池を見て、慌ててあやまるルージェナだった。
「ふぉふぉふぉふぉ、九之池殿は
どうやら遠いところに行ってしまったようですね」
とヘーグマンが言うや嫌な殺気を帯びた気合を
九之池に向けて放った。
「ふげっふげっっー」
と咳き込むと、九之池は意識を回復した。
ヘーグマンの殺気に充てられたのか、
意識がはっきりせず、ふらつく九之池はその場にへたりこんだ。
「すみません、少しやすませて貰います」
と言って、その場に座り込む九之池だった。
あらら、適材適所じゃない人がいる