22.今後(才籐)
才藤さん、お休み中ー
ルナリオンの執務室で、ルナリオン、メープルと
ビルギットが才籐の今後について話していた。
「うーむ、さて、どうしたものかな?
帝国からの俸給も切られるだろうし」
とルナリオンがまず、話題を振った。
「そうだろうなぁ。
あの状態だと、生活することすら、困難であろうよ」
とビルギットが続けた。
「あのーその件ですが、どうでしょうか?
あの教会のガラクタ部屋にあった老公遺産の
左脚が余っていたかと思います。
それを才籐に接合してみては?
老公と同じ世界の出身ならば、
親和性も高いかと思います」
とメープルここ何日か考えていたことを話した。
「ふん、才籐には可能性が低いだろうよ。
奴は魔術の素養が無い上に魔力も低いからな。
奴は、メープルのように魔術に長けているわけではない」
とビルギットが一笑に付した。
「私も魔術には長けていませんが?
私はアンカシオン教の敬虔な司祭で
あることが老公の遺品との親和性を
高めていると伺っていますが?」
メープルの言葉にビルギットは
びっくりしたようにまず、メープルを見つめ、
そして、ルナリオンを見つめた。
ルナリオンは視線を逸らし、
目を合わせようとしなかった。
ビルギットはため息をついて、話始めた。
「メープルも魔術を使っている。回復魔術を」
「ですから、それはアンカシオン様を
始めとする召喚者様への祈りより生まれる奇跡です」
「違う」
と明瞭にビルギットは答えて、続けた。
「祈りとは、魔術師が魔術を
行使するときに噤む文言の別称だ。
何百年も回復魔術に特化して、
効率を上げる研究がされてきた文言だよ、それは。
そして、毎日、朝の祈りなどで、
此処の魔力が上がるように訓練しているではないか!」
「ぐっ、違います。
偉大なるアンカシオン様がこの世界に
残した奇跡の一つです。
ルナリオン様、この不心得者に
言ってやってください」
とメープルが鼻息荒く、ビルギットを糾弾した。
「すまんな、ビルギット。
彼女はまだ、知り得る立場にいないのだよ。
それより、可能なのか?
あれを才籐に接合することが?」
ルナリオンの発言で、話が振り出しに戻ったが、
メープルは、釈然としない様子だった。
「そうだな、もう一度、左脚を切り口が
死なないような鋭さで斬り、その上で接合すれば、
あるいは可能かもしれぬ。
そこは、皇子に頼むとする。
それと魔晶をいくつか準備する。
接合直後に司祭クラス何人かの祈りが
必要となるが人数は揃えられるか?」
「それなら、私とメープルが待機しよう。
それで足りないことはないな?」
とルナリオンが答えた。
「そうだな、十分だ。
随分と割のいい賭けになりそうだな」
と可笑しそうにビルギットが言った。
本人の知らぬところで、、、