19.才籐の状況
やばっ!才籐さん。
才籐が左脚を失った二日後の朝、
メープルは、ルナリオンの執務室で
才籐の現状に関して話をしていた。
「帝国の貴族どもの才籐の今後の処遇について、
既に色々と言ってきている」
ルナリオンはため息を一つついた。
「もうですか?
そもそもまだ、帝国に報告はしていないはずでは?」
とメープルは驚いたように言った。
「帝国の貴族どもは、耳が早い。
まあ、どの組織でも踊らされる者はいるから、仕方なし」
ルナリオンはため息をまたついた。
「それで、帝国は何と言ってきているのですか?」
裏切り者の件は、措いておいて、
メープルは帝国の言い分が気になり、話を急いだ。
「引き渡せと言ってきている。
アルベリク侯爵の使者が書状を携えて来たよ。
おそらく、才籐にいままでのような活躍は
期待できぬと判断して、アグーチンあたりに
引き渡すのだろうよ」
ルナリオンはため息をまたまたついた。
二人には、召喚者才籐を魔術の実験材料にでもするのだろう、
そんな予想が容易についた。
使えぬもには、無駄な金はかける必要はない。
国是とまでは言わないが、バルザース帝国の
一面ではあるだろう。
「才籐は、現在、まともに話が
できるような状態ではありません。
少しこの教会で静養する必要があります」
とメープルがルナリオンに説明した。
「ああ、分かっている。
爺どもは、私が抑えるさ。
今回の件は、アルベリク侯爵が召喚時の件で
恨んでいるからだろうさ。
しばらくは問題ない。
しかし、最も大きな問題は、彼がメープル、
君ほど強くないことだよ。
早々に復帰して、役立つことを示さねば、
分かっているな」
ルナリオンは大きなため息を一つついた。
右腕を失ったメープルは、才籐が今の虚脱している状態から、
回復できるかどうか判断がつかなかった。
彼女自身、稲生やリンの献身的なサポートが
なければ、身体も心もここまで復帰できたとは
思っていなかった。
独力のみで復帰することは難しいと
自己の経験から考えていた。
「その点に関しましては、才籐の心に
期待するしかありません。
出来る限りのサポートはいたしますが、
最後は才籐自身の心の持ちようですので」
「ああ、頼むよ。
では、爺どもと今後の対応に関して、話して来るよ」
とルナリオンは言うと、会議に向かった。
メープルは、どうしものか良案が思い浮かばず、
歩きながらうーんうーんと唸っていた。
メープルは、一先ず、稲生に手紙で知らせることと、
ビルギットに伝えることにした。
気分的に沈むわー。