12.リーダーの意思(九之池)
リーダー九之池!
魔獣討伐と言っても魔犬程度が大半であり、
九之池とルージェナの二人であっても左程、
難しい依頼では無かった。
連続して、依頼こなし、素材を集める九之池。
馬車を利用できるため、移動はかなり楽であり、
積み込める素材もかなりの数に上った。
「ルージェナ、大丈夫?」
村の宿泊先で九之池が心配そうに尋ねた。
多少は女性に気遣いが出来る様になった九之池であった。
「ええ、大丈夫です。魔犬、小鬼、魔鹿、魔豹
といった魔獣ですが、なぜこれほど氾濫しているんでしょうかね。
あまり聞いたことがありません。何かあのもどきでも
関与しているんでしょうか?」
と不安そうに述べた。
「確かに人もどきの住処がこんな感じだったね。
でもなんかここら辺の魔獣って、
なんかギラギラしてない?
人を殺したくて仕方ないっていうか、
凄い敵愾心だよね」
「あっそうですよね。敵意をむき出しにして、
狂ったように襲ってきますよね」
とルージェナが同意した。
「あれじゃ、村の人は怖くなるよね。
僕だって、最初はあんな感じじゃなくても怖かったし」
と九之池が慣れって恐ろしいなと思いながら、答えた。
生き物の命を取ることに慣れきってしまっていることに
九之池は恐れたが、最早、昔に戻ることも
出来ないことを悟っていた。
魔物を人を殺しても恐らく、前世界の自分が
感じる罪悪感はあまり感じないだろう。
心が荒んだのか、この世界の理に慣れたのか、
微妙なところであった。
「食事の準備が終わりました」
と食事の準備を終えた村のおばさんが話しかけてきた。
二人の前には、どうみても食べきれないほどの
量が盛られてあった。
「ありがとうございます。
これは、、、結構な量ですね。
困ったなぁ食べきれるかな。
ルージェナ、いけそう?」
「流石にちょっと無理があります。
すみません、折角、準備して頂いて」
と食べる前から伏線を張る二人だった。
「いえいえ、食べきれない分は、
簡単な保存処置をして、
旅の途中で頂いて下さい」
とにこにこしながら答えるおばさんだった。
「それよりも次に行くのは、
ここから東の村でしょう?大丈夫なのかい?」
「大丈夫とは?ギルドからは、
特に何も聞いていませんけど。
他と同じ魔獣の討伐って話だったような」
と九之池はむしゃむしゃと食べながら、
話すため、料理をぼろぼろとこぼしていた。
そんな九之池に若干、ひき気味だったが、
おばさんは親切に答えてくれた。
「あそこは随分と前から廃村なのよ。
だから、魔獣が住み着いたとしても
誰が公都に討伐の依頼を出したのかって、
気味の悪い噂がね、村に蔓延しているのよ」
「それは、困りますー。誰に依頼完了の
サインを貰えばいいのかわからないじゃないですか、
九之池さん、どうしますか?」
とルージェナが九之池に判断を仰いだ。
「くっ、廃村ネタはホラーと相場が
決まっているから。どうしよう、
行ってみたいきもするけど、
なんかやばそうな気もする、
ルージェナ、どうしようか?」
九之池はルージェナに判断のボールを投げ返した。
「えっ?私?ちょっ、困ります。
九之池さん、リーダーですから、
決めてください。でもホラーはちょっと、
避けたい気分です」
「うーんうーん、ちょっと探検して、
やばそうだったら、即撤収でどうかな?
幸いなことに道もありそうだし。
ということで、おばさん、様子を見てくるね」
と九之池がおばさんに伝えると、
「まっ、行くなら、気を付けて、逝ってきな」
と言って、家に帰っていった。
「九之池さん、本当に幽霊が出たら、
置いてかないでくださいよ。
私、あの手の話とか体験談が苦手なんですよ」
とルージェナが言うと、九之池がルージェナに
密着するように近づき、耳元で囁いた。
「行くと見せかけて、逆方向に全力で遠ざかる、いいね」
「どういうことですか?」
と不思議そうなルージェナ。
「いやいやいやいや、ないっしょ。
公都に依頼が出ていることを知っているなんて。
怪し過ぎだよね。しかも廃村の依頼だよ。
ギルドで依頼が出ているってことは、
まだ、ギルドでも村としてあるって認識だよね。
怪し過ぎる」
とルージェナの耳元で力説する九之池だった。
「ちょ、九之池さん、その音量ですと、
耳元でひそひそと話をする意味がないですよ。
取り敢えずの方針としては、全力で逃走ですね」
とルージェナが纏めると、
「そっそういうこと、面倒な事は
ギルドで処理して貰おうよ」
と九之池が言い終えて、そろりそろりとドアに近づき、
聞き耳を立てている者がいるかチェックしている素振りをした。
そんな九之池を見て、ルージェナは微笑みながら、
「九之池さん、それで本当に聞き耳を
たてているかどうかわかるんですか?」
と声をかけた。
「うーん、わからん。これは、雰囲気だよ、
雰囲気!それだけ、全然、分からないよ」
と言って、ドアを開けて、星明りを頼りに
暗闇の中を見た。
「なんも居ないな、ルージェナ、寝よ寝よ」
と言って、ベッドに横になった。
「おやすみなさい、九之池さん」
ルージェナもベッドに潜り込んだ。
九之池さん、優柔不断すぎる。一生、治らないかも