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10.失意(才籐)

ええっ才籐さん!ピンチかも

帝都に帰還したバルザース帝国軍は、

民衆から拍手喝采を受けることはなかった。

多くの有能な将軍の喪失と優秀な兵の死、

そして何より軍事力では格下であったと

信じていたレズェエフ王国軍と大会戦での痛み分け、

そのことが帝都の民衆を失望させた。


「おいおい、散々な目にあって戻ってきて、

あの視線かよ。たまんないな」

才籐は、傍にいるヴェンツに話かけた。

「しかたありません。レズェエフ王国軍が

籠城戦をしていたなら、まだしも堂々たる会戦で

この結果ですから」


「しかし、俺らの帰還より

早くそんな情報の詳細が伝わるもんかね?」

と才籐が疑問を呈した。


「そこもレズェエフの織り込み済みの

戦略だったのでしょうね。そう思わざるを得ません」

とヴェンツが苦虫を噛み潰したような表情で言った。


「まっ、敵さんが今回は十分な準備を

していたということか。

じゃ、俺は教会の宿舎に戻るわ。

色々とありがとな」

と片手を振って、ヴェンツの傍を離れた。


「早めにビルギットを訪ねなさい。いいですね!」

とヴェンツは才籐に声を投げかけた。


才籐はその夜、突然、暗闇の覆う部屋で絶叫した。


止まることない絶叫は教会中に響き渡り、

司祭や司教の知る所となった。


司祭の指示により、助祭や侍祭が暴れる才籐を押さえ、

舌を噛み切らないように口に木を咥えさせた。

そして、どこに異常があるか確認するために衣類を全て脱がした。


魔石の明りに照らされると、左脚がどす黒く変色し、

血管が脈動していることが分かった。


メープルは素っ裸の才籐を見ると、

一瞬、眉間に皺を寄せるが、直ぐに祈りを捧げ始めた。

若干、痛みが和らいだのか、才籐は落ち着きを取り戻した。

しかし、それ以上の回復は見込めなかった。


老齢の司祭が

「こやつ、この状況で元気だのう。

これは、切るしかあるまい。

このままでは、身体中を侵してしまう」

と言った。


その言葉を聞き、才籐は、必死に何かを

訴えようとして、声を上げた。

「ふがふがふがーふがっがが」

口に木を噛まされているために何も伝わらなかった。


「命にかかわるのでしたら、仕方ありません。

苦しみぬいて死ぬよりマシでしょうから」

とメープルも悲しそうな表情で賛同した。


才籐は必死に首を横に振り、涙と鼻水を

垂らしながら、何かを訴えたが、周りの面々は、

それを苦痛によるものと勘違いし、急ぎ準備に取り掛かった。


才籐は何かを嗅がされると、意識を失った。


朝、起きると処置は完了していた。

逸物は切られていなかったことに

ほっとする才籐だったが、腰から下に

かけられている布が右側のように隆起していなかった。

それは、左側に何もないことを物語っていた。

才籐は何も考えられず、ぼーとして、そのまま意識を

失ってしまった。


脚が-。無理っしょ

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