6.戦の終わりに(才籐)
才藤さんの活躍がっ!
これからだ!
「調子に乗っているのはあなたですよ。妖精さん」
と炎の壁の中から、現れた皇子。
そして、片手でもどきに斬りつけた。
血が噴き出るもどき。
「ぐぎぃーーーー」
今度は本当に苦痛の叫びだった。
才籐の投じた魔晶の効果がきれたのか、
再び上昇し始めたもどきは、
「ふん、左腕に屑の左脚か。
割に合わないけど、まあ、いいや。
じゃあねー」
と捨て台詞を吐いて、消えていった。
正直、もどきが撤収して、ほっとした才籐は、
「おいおい、大丈夫かよ。左腕は動くのかよ?」
と皇子の様子を見て、尋ねた。
「それより、才籐さん、助かりました。
ありがとうございます。
まあ、時間はかかるでしょうが大丈夫でしょうね。
流石はビルギット製の魔石です。
それより、才籐さん、あなたの左脚の方が心配ですが。
何か違和感がありませんか?」
「いや、全くだけど、毒とか呪いとかあんのかな?」
皇子に言われて若干、心配になる才籐だった。
「ええ、あれほどの魔術を
扱うものですから、念のために
検査を受けた方がいいでしょう」
と皇子が助言した。
才籐は不安に支配され、こくこくと頷き、
本陣に戻って、ヴェンツに相談するかなと考えた。
バルザース帝国軍、レズェエフ王国軍ともに
戦陣を退いた。
バルザース帝国軍本陣では、ヴェンツがまず、
会合の口火を切った。
「本国からの指示は戦線の拡大を望まず、
戦の矛を収めよとのことです。
口惜しいですが、ベルトゥル公国の仲裁を
受け入れる方向となります」
「ふむ、仕方ありませんね。
かなりの将クラスに死傷者が生じましたから」
と皇子が評すると、サヴォワが
「最後に笑うはベルトゥルですか。
したたかな奴らよ」
と続けた。
「あのような小国の蠢動など、恐れるに足らず。
我が国に害をなすなら、我が剣が一振りのもと、
叩き潰してくれるわ」
と勇ましい言葉を吐くアルベリク侯爵であった。
レズェエフ王国軍との戦機に遅れ、
剣を交えることのなかったアルベリク侯爵の
勇ましい発現に場が白けてしまい、
微妙な雰囲気が会合を支配した。
皇子が微妙な雰囲気をかき消すように
「ひとまずは、周囲の警戒を怠らず、
兵を休ませましょう。では、解散とします」
と言った。
あれれっ???
才藤さん、ぷすりとされただだけ?