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森の獣外伝 才籐さんの何気ない一日7 非日常

ううっ、才籐さんにんまりしている

 店を出た才籐の顔は、情けないくらいに

にんまりとしていた。

先ほどのビルギットのキスは、

才籐の何気ない日常を彩るに十分なことだった。

ふっ、この世界も悪くないなと思う才籐だった。


大通りで出征に必要となる雑貨、

サブの武器等を購入し、準備を進めた。

合戦の経験のない才籐にとって、

いまいち、実感が湧きにくいが、

着々と準備を進めていった。


明日からは、帝国の軍隊での準備となる。

今日までが才籐にとって、何気ない日々であった。

周りに目をやると、出征のためか、普段より

慌ただしく人々が動いているようだった。

そして、それは出征を目前に控えて、

商魂たくましい人々の熱気であった。


ふと才籐は、稲生の昔話を思い出していた。

獣の討伐の際に荷役を雇ったことを。

懐に余裕のある才籐は、自分も

荷役くらい雇おうかと考え、商業ギルドに

足を運んだ。


きょろきょろとギルド内を見回す才籐。

全く勝手が分からずにうろうろしていると、

20歳を過ぎたくらいの男が声をかけてきた。


「雇いませんか?どんなことでもします。

ギルドには属していませんので、

直接の契約で大丈夫です。

その分、お安く、一日、屑鉄貨92枚で

毎日お支払いをお願いします。

今日からでも大丈夫です。

もちろん、魔術印による契約もします」


「おっおう、でも屑鉄貨92枚は計算がめどうだな。

50枚にできない?」

才籐は相場が全く分からないために

取り敢えず、思い切って値引きしてみた。

青年は無言のまま、固まっている。

おそらく彼の斜め上をいく回答だったのだろう。


深呼吸一つ、ようやく声をだした。

「ちょっ、この金額でなぜ値切る?

逆でしょう、屑鉄貨100枚にして、

計算しやすくするのが、普通でしょう。

それでも安いでしょうよ」

と鼻息荒く話す青年。


「おっおう、銅貨1枚か。

なら計算がめどくさくても92枚でいいや」

と才籐が言うと、


「ちょっ、生活の相場が分からない

坊ちゃんじゃないでしょう」

と青年が主張すると、


「いーや、君の最初の金額にするわ。

さほど、計算がめんどく臭くもなしな。

その金額なら、魔術印の契約もあるし、いいぞ」

才籐が最終告知をした。


「おっかしいなあ。

ある人で成功してから、

何度も成功していたのに。

お兄さんがはじめてだよ、

92枚で契約するのはね。

出征の荷役でもすればいいの?

合戦への参加はしないよ。

適当なところで後方か逃亡させて

貰いますので」

余程、悔しかったのか、過去の実績を交えて、

最低限の条件を青年は提示した。


「いや、それ無理だろ。

途中で逃散とか、スパイ容疑で俺が困るわ」

と才籐が最後の項目を拒否した。


「ご心配なく。その点はぬかりなく

こちらで準備しますので」

にやりと笑う青年だった。


「後方の輜重隊の方で待機してもらう。

あまり考えたくないが、敗戦時は、

真っ先に逃亡してくれ。

これが譲歩できるぎりぎりのラインだな」

と才籐が言った。


「わかりました。ノーブルと申します。

よろしくお願いいたします」

雇い主に丁寧なあいさつをするノーブルだった。


「おっおう、才籐だ。明日から帝都の軍で説明を

聞くことになっている。明日から、付き合えるか?」

と才籐が言うと、


「問題ございません。ある程度の前金は頂きます」


「ちゃっかりと言うか、まあ、当たり前か」

と言って、才籐は銀貨を2枚ほど渡した。


ノーブルは受け取ると、頭を下げて、

明日、教会にお迎えに上がりますと言って、

商業ギルドを後にした。


才籐は、それから、街をぶらぶらと歩き、

教会に戻り、いつもと変わらぬ食事と食後を過ごし、

ベッドに潜った。

今日は才籐にとって、妙に寝つきの良い日となった。


 明日より軍隊勤務となる才籐にとって、

何気ない安穏な日々は、こうして終わりを

告げようとしていた。


どうなることやら、次回から3章開始!


お楽しみなのだー

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