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森の獣外伝 才籐さんの何気ない一日6 約束

混乱の才籐さん

朝から強い日が差している。

人々の熱気と強い日差しを浴びながら、

才籐は大通りを通過した。

大通りの熱気でも太陽の日差しでも

才籐の向かっている魔術屋の纏う暗い雰囲気が

変わることはない。

才籐は扉の前で暫く立っていた。

彼女に会って、何を話すべきか考えが

纏まらなかった。


ぎぃぃーと扉の軋む音と共に突然、開いた。


「そんなところに突っ立っているな。

営業妨害だぞ」

と美しいエルフが暗い表情で言った。

否、才籐には、眠そうな表情に見えた。


ビルギットは、才籐に話かけると、

ふぁああーと欠伸をして、眠そうな瞳を擦りながら、

「早く入れ。魔晶クラスのものが必要なんだろう」

と言った。


「あっああ、すまん」

と才籐は言うと、店内に入った。


ビルギットは椅子に座ると、開口一番、

「傷の具合はどうかな?

それと出征することになったのだな」

と尋ねた。


「傷は痛いけど、何とか大丈夫だよ。

所属は決まっていないけど、出征するよ。

だから、魔石でなく、魔晶クラスのものが欲しい。

金貨10枚分で頼む」

と真剣な表情で才籐が依頼した。


「どんな魔術が封印されているものが必要なんだ?

それを説明して貰わないとどうにもこうにも話が進まん」


「戦で生き延びるために有用なものを準備してくれ。

俺は戦に行くのは初めてだし、

何が必要になるか分からない。

長く生きているビルギットの経験と知識で

準備して欲しい。俺はまだ、死にたくない」

と才籐ははっきりと言った。


「短くない付き合いだし、善処しよう。

しかし、良質の魔晶には、既に発注がかかっておる。

出来る限りのことはするが、あまり期待してくれるなよ。

プライベートと仕事は別だからな」

とビルギットは厳しいことを言っている割には、

辛そうに説明をした。


「ああ、それは構わない。出来る限り頼む。

召喚されてから、今まで後ろ向きに

過ごしてつけだろうし。

俺もあまりおっさんの生き様を笑えないな」

と自嘲気味に才籐は言った。


「ふむ、才籐、一つ提案がある。聞くか?」

とビルギットが真剣な表情で言った。


「おっおう、いいけど、、、」

ビルギットの表情に圧倒される才籐だった。


「バルザース帝国発行のミスリル硬貨1枚で

隷属の縛りを解除できる。どうする?」


「はっ?金貨一万枚。準備、出来ないな。

そもそもミスリル硬貨なんて見たことないし」

と才籐が話にならないと首を振った。


「貸すぞ。金貨一万枚。

ただし、縛りを解除できたとしてもその人生は、

追手からの逃亡生活になるが、どうする?」

再度、ビルギットが才籐に尋ねた。


「召喚された時点で、詰んでるな、俺の人生。

このまま生きても帝国の縛り、

縛りを解除しても借金と追手の縛りかよ。

くだらない、くだらない人生だ」

と才籐は乾いた笑い声をあげた。


「ふん、生きていれば、目に見えない

何かしらの縛りはあるさ。

それが召喚者の場合、明確なだけであって、

そういった縛りと上手く折り合いを

つけて生きるのが人生だろう」

とビルギットが諭すように言った。


「ちっ、相変わらず弁が立つよな、ビルギットは!

今回は、断るけど、もっと実力がついたら、

そん時は頼むかもしれない」


「ふむ、わかった。

才籐、戦場では、生き汚くて良いから、

生き残れよ。いいな」

と言うと、才籐の唇に自分の唇を合わせた。


才籐は、突然のことに胸の鼓動が跳ね上がった。

唇が離れると、顔を上下に何度も振っていた。

そんな才籐を見て、ビルギットはため息交じりに

「ふーむ、逢瀬を何度も交わしているのに

純情なことだな」

と感想を漏らした。


くうううっ!やることやってるよ、この人!


神罰が下るぞー

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