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65.門前問答

珍しいことが!

王都の街を稲生と会うため、歩く九之池一行であったが、

九之池の様子がどうもおかしい。

額に玉のような汗をかき、服は汗でべとべとであった。

昨日一日、十分に稲生との面会をシュミレートして、

十分に落ち着いたつもりであったが、

実際に会うとなると、緊張してしまう九之池であった。

歩きながら、古きは就職面接、近きはベルトゥル大公との

拝謁での醜態を思い出していた。


一歩、足を踏み出す毎に汗が滴り、

身体が重くなる。

九之池は逃げ出したい気分だったが、

そんな九之池の汗でべとついた右手を

握っている人を裏切りたくない気持ちが勝って、

何とか面会場所に向かっていた。


そんな九之池を見て、才籐は、

「おっさん、面会って言っても非公式だから、

そんなに緊張すんなよ。

それに稲生は別にこの国の要職に

ついている訳じゃないし」

と後方から声をかけた。


「うっうん、才籐さん、りがとう」

と九之池がお礼を述べたが、

一向に様子が変わることがなかった。


「ありがとうね。『あ』が抜けてるけど、

まあ、俺の時のようにはならないから、心配すんな」

と才籐が言い、その後は黙ったままだった。


貴族の邸宅にしては、小さすぎるが、

一般の住民の家にしては、立派な建物に到着した。

そこの庭にはテーブルがあり、その周りで幾人かが、

談笑をしているのが九之池たちの目に映った。

九之池に殊更に奇異に映る服装の人物が二名、

他の3名はこの世界でよく見かける服装であった。

「ったくムカつく野郎だな。ジャージかよ」

と才籐がぼそりと言った。


稲生のやることなすことを不快に

感じているのだろうか、才籐は稲生に

関しては、否定的ことしか言わない。


「えっ、ジャージなの?しかし、あのデザインは、

僕のいた時から、ちょっと前に流行ったタイプですね」

予想外の服装に九之池は驚きを隠せなかった。

そして、そのことに注視したせいか、先ほどまで

感じていた憂鬱な感情が若干、やわらいだ。


「九之池さん、あのローブは、

あれが本物であれば、大変なことですよ」

とルージェナが興奮気味に九之池へ伝えた。


「えっ、どういうこと?いかにも魔導士ぽいけど、

野暮ったくて奇異な感じだよね。

ってかあれ、この天気で暑くないのかな」

と正直な感想を述べた。


九之池の魔術師の姿は、ゲームやファンタジー小説で

作り上げられていた。

そして、そのあまりにもイメージ通りのため、

逆に奇異に感じていた。

今まであった魔術師は、シリア卿やルージェナ、

ビルギットといった輩であまり、

魔術師ぽい服装ではなかった。


「くっ九之池さん!

あれは、紺の魔術師連盟で第5席までの方が

着用される正装ですっ。

言うなれば、この国の、いえ、この世界の魔術師の

トップエリートですよ。

魔術を学ぶ者、魔術を生業とする者で

知らぬものはいないでしょう」

と珍しく興奮気味にルージェナが答えた。


九之池には、いまいち、その凄さが

ピンとこないため、ついつい、

余計なことを口走ってしまった。

「うーん、そうなんだ。

でもあの感じからは何の凄みも感じないけどなあ。

魔術的な凄みではシリア卿の方がありそうだし、

強力な攻撃魔術なら、ルージェナほどの実力は

無さげにみえるけどね。

なんか地位ばかり高くて、プチって

やられそうな感じ。

というかあれは、やせ細った爺がローブを

纏っている感じだよね」

と言ってしまった。


「ひええぇーなんてことを!

シリア卿には失礼ですが、魔術という分野に

おいては比較にすらならないかと。

私に関しては、逆にプチッとやられるほうです」

と人様の邸宅の門の前で珍しく大声で

叫んでいるルージェナだった。


「おいおい、おっさん、大丈夫そうだな。

まあ、ローブを着た奴の中身に興味があれば、

覗き込んでみろよ」

と言って、才籐がくっくっと笑っていた。


「お前ら、静かにしろ、門前だぞ」

とエドゥアールが青筋を立てて、

低い声で九之池、ルージェナ、才籐を威圧した。


「まあまあ、此処は貴族の邸宅でも

ありませんので、そのように構えずに

気軽に過ごして頂けると助かります」

と朗らかな声と共に門が開いた。


エドァールは間の悪い瞬間を聞かれてしまい、

真っ赤な顔で「どうもご丁寧に」と答えた。


九之池たちの前には、ジャージ姿の

にこやかな表情の男が立っていた。


冷静にね!面接は、入室の前から始まっている!

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