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57.再会

再び会える確率!

翌日、九之池たちは、再び、洞窟へ向かった。

村人たちは、魔犬の討伐が成功したと

思っていたために再び彼らが向かうことに

まだ何かあるのかと不安を感じた。


「みなさん、大丈夫です!何もありませんよ。

昨日、抽出した魔石を置いてきてしまったので、

取りに戻るだけです」

と才籐が彼らの不安をかき消すように

声高らかに言った。


その声で村人たちは、落ち着いたのか、

自分たちの作業に戻った。


洞窟に向かいながら、九之池は

「ふううっ、流石、才籐さん。

上手く収めましたね。

僕には無理でしょうから、助かりますわ」

と言った。


「ん?んんっ?おっさんが最近、おかしいぞ。

どうしたんだ」

と才籐が自問自答した。


「まー本音を聞けましたし、

確かに前の世界じゃ才藤さんと

絶対にこうして話すことは

なかったでしょうけどね。

それになんというか、事実ですし、

まあ、吹っ切れましたわ。

それより、この世界での目的なんてないですから、

ちょっと気ままに旅をゲームのように

楽しんでみますよ」

とへらへらと笑いながら、九之池が言った。


「いやその、あの件はすみません。

俺だって、あのすかし野郎以外では

おっさんしか、過去を話せる人間は

いないからさ。

なんていうかさ、そういうことなんだおよ」

と才籐は語彙力が足りないために

上手く表現できないのか、

九之池に察してくれといような感じで話した。


「まあ、それよりあの男だと思いますが、

いるとおもいますか?」

と九之池が話題を転じた。


「いやいや、いないでしょ。

あれは逃げるための時間稼ぎでしょ。

いたら、頭、おかしいでしょ。

あんななんもないところに」


「そうですよね。いたらおかしいですよ。

じゃあ、収穫はおそらくあの魔術陣があれば、

ラッキーてことですかね。

ヘーグマンさんかルージェナはあの陣ってわかる?」

と九之池がルージェナとヘーグマンに話しかけた。


ヘーグマンは、頸を横に振って、

分からないとの意思表示をした。


「私もわからないと思います。

もし、幸運にも陣が残っていたら、

写生して、ビルギットさんにでも聞くか、

これから、会う予定の稲生さんに

聞いてみるがいいのでは?」

とルージェナがニコニコしながら、言った。


その言葉に才藤がピクリと反応した。

「奴はダメだーぁ。奴に頼るくらいなら、

俺がビルギットに依頼する」

と珍しく息巻いていた。


九之池は、一体、二人の間に

何があったのか興味があったが、

おいおい分かることだろうと思い、

この場で詮索はしなかった。

他愛のない会話をしながら、森を進むと、

昨日の洞窟の前に到着した。

特に変わった点もなく、九之池たちは、

松明を灯して、奥へすすんでいった。

特に障害もなく、最深部に到着した。


「えっ」


「えっ」


お互いに発した言葉がこだまのように聞こえた。


「いやーまさかいるとは、

ちょっと予想外でしたね」

と九之池が他のメンバーを見渡して、言った。


「何ということだ、裏の裏をいかれるとは、

貴様たち何者だ。

おそらく、召喚者が同行しているな。

そいつの特殊なスキルに違いない。

俺様が欺かれるなんて、あってはならないはず。

しかし、この現実にどのように

対処すべきであろうか、昨日の土塊では

どうにもならないし。本格的に撤退すべきか。

ここの魔術陣は、廃棄すべきか、、、、、」

終わることなく、ぶつぶつと呟いていた。

しかし、その紡がれる言葉には、一切、

自分が捕縛されたり、負けたりする予想はなかった。


「あのーすみません、そろそろ、いいでしょうか?」

と九之池が恐る恐る声をかけた。


「ん?今、思索中なのだが、邪魔な奴だな。

方針が決まるまで、待て」

と鋭く答えると、また、ぶつぶつと呟き始めた。

九之池は困ってしまった。

魔犬との関係もわからず、改めて考えると

特に敵対しているわけでもない。

ここにいる事情が集落に被害を

与えるものでなければ、

このまま関りなく、戻る気分になっていた。


「才藤さん、なんかもう会話も成り立たないですし、

問題なさそうなら、集落に事情を話して、

王都に戻りませんか?」


「そっそうだな。なんかめんどくさい奴ぽいし」

と才籐が賛同した。


「ふっ、決まりました。

幾通りものシミュレーションの結果、

殺害して召喚するものの餌にします。

では、死になさい」

と言うと、何かを唱え始めた。


ルージェナとヘーグマンは

シミュレーションという言葉を

理解できずにいたが、殺意には

素早く反応し、応戦を始めた。


「シミュレーション?シミュレーション?

こいつも同じ世界からの召喚者なのか?」

と九之池と才籐が応戦するよりも

その言葉に囚われてしまった。


そんな九之池にルージェナが叫んだ。

「九之池さん、今、それよりも戦いです。

後で、その謎の言葉については考えましょう」

その叫びに九之池と才籐も遅まきながら、

武器を構えて、攻撃する体制を整えた。


九之池たちの前には、一匹の魔人が立っていた。

恐らく、目の前の人間のようなものに

召喚されたのだろう。


「以前の気のせいか、森に出た奴に似てない?」

と九之池が言うと、ヘーグマンがそれに答えた。


「以前、現れた魔人ほどの脅威は感じませんな。

魔人のみでしたら、このメンバーで

なんとかなりますが、後方に控えている者が

如何ほどものか次第でしょう」


九之池には、魔人の脅威が同じように

感じられたが、ヘーグマンが言うなら、

そうなのだろうと、額に滴る汗を拭いながら、

落ち着きを取り戻した。


魔人は、直立不動の姿勢を崩さずに無言で、

そして、生気の感じられない目で、

九之池たちを見つめていた。


幸か不幸か、また、会えた!

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