その二
第二話出来たので更新。
マイクラ楽しい。
―――人生という物は『どうしてこうなった?』と思う事の連続だ。
それを今までの人生で最も強く感じたのは爆速神様チート転生をさせられた瞬間だろう。
そうして往々にして『どうしてこうなった?』何て思ったその時には、既に手遅れである事の方が多い。
人間は経験に学ぶ生き物であり、その中でも失敗の経験にこそ多く強くを学ぶ物だ。
然るに、『どうしてこうなった?』と思った時こそが失敗の瞬間であり、そう思った時にこそ同じ轍を踏まないようにと心に深く刻む必要があるのだ。
だが同時に覚悟しておかなければならない事がある、『どうしてこうなった?』と思った時にはもう手遅れであり、失敗を反省する事は出来ても無かったことには出来ないという事を。
……まぁ、つまり俺が何を言いたいのかと言うとだ。
「――どうしてこうなった?」
「あ、オキナー! 今日は西拠点の方でブランチマイニングして来るからスーちゃん借りてくねー!」
「ヒヒーン!」
「ああはい、いってらっしゃいカグヤちゃん……って、だから何故俺の愛馬で走り出す!?」
「アハハハハ! いってきまーす!!」
「ヒヒーン!!」
「あああああああ! 俺のスーちゃんがぁぁぁああああああああっ!!!???」
いやもうホント、どうしてこうなった?
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竹から出て来た女の子を連れ帰り、『カグヤ』と名付けて育て始めてから凡そ一年が経った。
本来かぐや姫の名前である『なよ竹のかぐや姫』という名は『御室戸斎部の秋田』という人物が名付けるのだが、俺自身が転生者で老人ですらない時点で原作との違いなんぞ考えるだけ無駄なので無視した。
そもそも呼び名が無いと不便だしな。
連れ帰ったカグヤちゃんだが、二か月ほどで受け答えには問題無い程度に成長したのでその時俺が転生者で神様からチートを貰った事や未来の時代に生きていた事などをぶっちゃけた。
~以下、当時の会話のダイジェスト~
「私は未来からの転生者だ。神から特別な力を与えられ(押し付けられ)、お前の事情もある程度知っている」(荒ぶる鷹のポーズを決めながら)
「ええー、ホントにー?」(何言ってんだこいつ? と言わんばかりの目)
「ぶっちゃけ君、罪を犯して地上に流刑にされた月の住人だろ?」(指を指しながらのジョ●ョ立ち)
「何故バレたし!?」(ぱっちりお目目を見開いての驚愕)
「私は未来を知っているのだ!(ドヤ顔) で、事情はこっちもある程度知ってるから、月に帰るまでの間バカンスにでも来たと思って気兼ねなく過ごしてって話、おk?」(もう喋んのめんどくさくなった)
「おっけー!」(超気軽)
~以上、当時の会話のダイジェスト終了~
とまぁこんな具合(実際にはもうちょっと真面目な会話だった)にお互いの事情を暴露した上で、俺たちの奇妙な共同生活が始まった訳だ。
何故ぶっちゃけたのかって?
……正直な所、情けない話だが寂しかったとか俺の事情を知る話し相手が欲しかったと言うのが大きな理由だ。
俺の事情なんて、正直に話したところで狂人扱いされるだけだし、チート能力を見せた所でこの時代では妖怪だの妖術使いだのと呼ばれて迫害されるのが関の山だ。
だからこそ、それまでは余り他人と関わり過ぎない様に孤独に生きて来た訳だが……俺とは違う、けれど俺同様特殊な事情を持つカグヤちゃんという存在前にして、気兼ねしない話し相手が欲しいという欲求を抑えられなかったのだ。
チート能力何て持ってて、大抵の事は一人で何でも出来る俺だが……結局、孤独だけは一人ではどうしようもなかった。
―――そんな、当たり前の話でしか無かったのだ。
さて、話は変わるが俺の持つチート能力について少し説明しておきたい。
俺の持つチート能力は前世でプレイしていたサンドボックスゲームのクラフト能力な訳だが、この能力は大まかに二つに分類出来る。
一つは『ゲームシステム』。
これはゲームアイテムのクラフトやアイテムを収納するインベントリなど、ゲーム内でプレイヤーが出来た事を現実でも出来るようにする能力だ。
そしてもう一つは『ゲームマップ』。
実はこちらが一番のぶっ壊れ性能を持っていた。
ゲームマップは文字通りゲーム内のマップそのものであり、現実世界とゲームの世界を行き来出来る能力であり、当初俺はこの能力を現実には存在しないゲーム内限定のアイテムや素材を入手する為の物だと思っていた。
だが違った、全く違ったのだ。この能力の真価は。
それを知ったのは、俺のチートを説明する為にゲームマップ内へカグヤちゃんを連れて行った際に発覚した。
なんと、カグヤちゃんも俺と同じクラフト能力、『ゲームシステム』を使えるようになったのだ。
ゲーム内において、自由意志を持って行動する存在とはすなわちプレイヤーであり、俺がプレイしていたサンドボックスゲームはマルチプレイが可能であった。
つまりゲームマップへと足を踏み入れた時点で、カグヤちゃんはマルチプレイに参加したプレイヤーとして扱われ、自動的にクラフト能力を付与されてしまったようなのだ。
これに当初俺はもちろん驚いたが、同時に内心喜びもした。
何せお互いの事情を知るだけでなく同じ力を身に着けた事で共通の話題、しかも先達である分俺がいろいろと教えられるものが出来たのだ。
当時の俺は内心の興奮を抑えつつ先輩としてクラフターの何たるかをカグヤちゃんに一生懸命教えた訳だが……結果、カグヤちゃんは弾けた。
前世でも大人気だったサンドボックスゲーム、その魅力に目覚めたカグヤちゃんは嬉々としてゲームマップ内を駆け回り、装備を整えたりアイテムを集めたり建築をしたりと、それはもうエンジョイしまくった。
そうして出会いから一年経った現在、原作の深窓の姫君などは影も形も無くアクティブかつバイタリティに溢れたおてんばクラフター、カグヤ姫が誕生した訳である。
いやもうホント、どうしてこうなった?
「……バカンス気分でとは言ったが、もう少し落ち着いてくれんもんかねぇ」
カグヤちゃんが去った方向を見つつ(ゲームマップ内には現実世界の何処からでもテレポート出来るが、テレポート先は初期位置であるマップの中心に固定されている)、俺は溜息を付いた。
彼女がクラフト能力を身に着けてからというもの、天真爛漫で暴走気味なカグヤちゃんに振り回され毎日である。
「……けどま、結局楽しいからヨシッ! になるんだよな」
だが、そんな日常を楽しいと感じている自分も確かに居る。
一人で暮らしていた時はずっと、言いようの無い孤独感や虚無感、あるいは焦燥感の様な物を感じていた。
けれどこの一年は、そんなものを感じないほどに賑やかで楽しい毎日を過ごせていた。
それが堪らなく嬉しかったのだ。
「……さて、こっちもさっさと仕事を終わらせて、カグヤちゃんが帰って来る前にご飯の用意もしなきゃな」
そう独り言ちてから、俺はカグヤちゃんと出会った竹林へと向かう。
この騒がしく賑やかな日々に、俺は幸福を感じていた。
主人公の愛馬の名前は「スーパーノヴァ」。
クラフト能力によって生み出された全能力がカンストしてるスーパーホースで、どれくらいスーパーかと言うと、最高時速500kmオーバーというマジの化け物です。
ちなみに主人公の愛馬ですがカグヤの方に懐いてます。
理由? 主人公は早過ぎて怖いから最高速度で走らせてくれないけど、カグヤは怖いもの知らずで嬉々として最高速度で走らせてくれるから。