アラサー女勇者が男魔王の台詞に胸キュンする話
私は勇者。アラサーの女勇者。
先日、魔王城に乗り込む景気付けに、パーティの女賢者と女僧侶に誘われ、王国の男騎士3人相手に3対3の合コンをした。
イケメンの王国の騎士たちを相手に、私の失った筈の乙女心は大いに揺れたが、たまたまお手洗いに行った時、帰りに見掛けた騎士達の会話を盗み聞きすると、こんなことを話していた。
「勇者が彼女って重いよなぁー。」
「うん、だから勇者様には悪いけど、無いよなぁ。」
それを聞いた時、頭に血が上り過ぎて、騎士達を皆殺しにしてやろうかと思ってしまったが、なんとか思い止まり、この苛立ちを魔王に全部ぶつけてやることにした。
もう私は女を完全に捨てたからな。ふへへ♪もう塵一つ残さんからなぁ♪
さぁ、魔王城の魔王の間。玉座にふんぞり返る魔王は、白髪の黒いスーツに鎖やらアクセサリーやらジャラジャラ付けた、ぶっちゃけビジュアル系バンドのボーカルみたいな男だった。
「来たか勇者達よ。たかが人間風情がココまでよく来れたものだ。褒めてやろう。」
チッ、戦いの前口上ってってやつか、無視して斬りかかっても良いけど、最期だから好きに言わせといてやるか。
しかし、このあと衝撃的な言葉を魔王から言われた。
「どうだ?世界の半分をやるから俺の手下にならんか?」
「えっ!?」
む、胸がキュンとした。
別に世界の半分という言葉に心が揺れたわけではない。私という存在に対して、世界の半分という対価を払うという魔王の申し出にキュンとした。ね、熱烈的アピールだわ。
「そ、そんなに私のことが欲しいの?」
「ん?何だ乗り気なのか?勇者のくせに。」
もうそっちからアプローチしてきたくせに♪
「勇者様!!どうしちゃったんですか!?」
うるせぇ、ビッチ賢者。お前合コンの時に朝帰りしたの私知ってるんだからな。
ここは世界の平和とか二の次にして、私の幸せを最優先にしないと。自分が幸せになれない世界とか要らないし。
「世界の半分は要らない。私はあなたが欲しい♪」
「はっ!?」
「お付き合いしましょう♪」
「いやいやいやいや、お前は何を言い出すんだ?」
「ゆくゆくは結婚して、一姫二太郎的な子作り計画をね♪」
「い、いや待って!!話進めないで!!大体俺はそういう意味で言ったんじゃ・・・。」
「うるせぇな!!男がグチグチ抜かしてんじゃねぇぞ!!こうなったら既成事実作ったる!!ベッドは何処だコラァ!!」
私は魔王の首根っこをガッと掴み、魔王城を練り歩き出した。
「いやいやいやいや、ちょっとちょっと!!待って!!誰か助けてぇ!!」
もう照れちゃって♪今私、幸せです♪